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2008年2月16日 (土)

ベトナムの違法ストライキ問題:「為す術なしの日系メーカー」に反論する

 『週刊ダイヤモンド』2008年2月16日号(p.22)は、「ベトナムで”違法”ストが多発:為す術なしの日系メーカー」という見出しの記事を掲載した。同誌は、このようなストライキは、ベトナム進出を考えていた企業の中国回帰をもたらし、ベトナム直接投資に悪影響を及ぼすと指摘している。

 この記事の掲載のみならず、大阪の朝日放送テレビの夕方の人気番組「ムーブ」では、この記事の内容そのままが放映された。たとえば私の妻から「ベトナムあかんて言うてた」と聞かされた。この記事に起因するベトナム悪宣伝の効果は大きい。

 「違法スト」が多発しているという事実はあるが、しかし「為す術なしの日系メーカー」という記述には反論せざるをえない。第1に、この「為す術なし」は事実に反する。第2に、こういったストライキに真剣に対峙して、その解決に努力したり、エースコック=ベトナムのようにストライキ自体が発生しない日系企業の経営者に対して失礼ではないか?

 すでに2006年10月にホーチミン市日本商工会では、このような違法ストライキの対応策についてセミナーを開催している。その時の講師であった富士通コンピュータプロダクツ初代社長・川嶋修三氏の資料と講演録は、その後に加筆されて、私が副理事長を勤めている日越経済交流センターhttp://j-veec.jp/)発行の『日越経済交流ニュース』(2006年12月・第155号、2007年1月・第156号)で公表されている。

 (注:この記事は、同センターから実費で入手できるほか、近日中に国立国会図書館で閲覧が可能である。)

 ベトナムにおける日系企業のストライキは今に始まったことではなく、2006年春に発生している。すでに日系企業は、この教訓を生かして、それぞれの対応をしている。より詳細で具体的な対応策は、上記の川嶋氏の指摘を参照されたい。

 川嶋氏の特に注目すべき指摘は、自社の労働組合を経営者が育成して、違法ストに対峙するようにするいうことである。この場合、日本人経営者が、労働組合について理解を深めなければならない。

 このような現在までの経緯を無視して、「為す術なしの日系メーカー」とは、いったいどういう趣旨で書かれた記事なのであろうか。ベトナム投資の問題点が多々あることは私も承知しているが、この記事は、あまりにも事実の背景を知らなさ過ぎる。これは署名記事であるから、その執筆者から明確な返答を頂戴したいと思う。日本でストライキは死語になっているから、そういった経営者がいても不思議でない。そこで当然、ベトナムの労働法や労働総同盟の組織について関心をもたなければならない。またベトナム人労働者の気質やハノイとホーチミン市など地域間の労働意識の異同にも注目しなければならない。「為す術なし」ではなく、「為す術」を提示することが、この記事には必要であった。  

 ジャーナリストに批判精神があって当然である。それは学者・研究者も同様である。現状に満足しないという意味からいえば、企業経営者にも批判精神は必要である。批判することは推奨されこそすれ、禁止されるべきではない。しかしながら、そういった批判には根拠が必要である。また批判のための批判ではなく、生産的でなければならないと私は思う。「ベトナムブーム」という時に、それに対する批判は歓迎されるべきである。問題点の指摘は投資環境の改善を促進する。ただし、それらは事実に基づかなければならない。また日本とベトナムの双方の利益にとって建設的な批判でなければならない。

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