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2007年12月 9日 (日)

ベトナム共産党について私論(2)

 いくつかの政策の選択肢の中からどれを選択するか。これは、どの国の政府においても難しい問題である。日本の場合も同様である。そして選択の最終決定は国民に依存する。そのために選挙があり、その選択を容易にするために政党がある。

 これまでのベトナムでは、この選択の余地が十分になかった。また今後も、それほど選択の幅は大きくないと思われる。そうであるなら、その間はベトナム共産党の一党独裁は安泰ということになる。

 これまでのベトナムは国家の独立と統一を最優先にした歴史をたどってきた。少なくともホーチミンは、そのように考えていたし、「そのことで私が共産主義者と呼ばれるなら、私は共産主義者なのでしょう」といった意味のことを述べている。国家の独立や統一を目標とする思想は社会主義しかなかったし、それを支援する国は旧ソ連や中国しかなかった。

 好むと好まざるにかかわらず、ベトナム支援国が「冷戦」時代は旧ソ連しかなかったのだから、ベトナムに対する旧ソ連の影響力が強かったのは当然である。こういった時代にベトナム共産党(=労働党)は政権党として存在感を示した。旧ソ連が崩壊後、ベトナムが全方位外交に転換したのも納得できる。旧ソ連だけに支援を頼る必要がなくなったからである。

 今後のベトナムは、経済成長による所得増大と所得格差の是正という2つの課題を同時に追求していくことになる。これについて大きな異論はなく、その意味で反対政党は必要ないとも極論できる。民主化の課題を追求して多党制を容認してしまうと、政治的な安定が維持できなくなり、それは経済成長を阻害する。

 これは、ちょうど日本の高度成長時代に自民党が長期政権を担当してきた状況と同じである。大多数の日本国民は経済成長の恩恵を受け、それだからこそ自民党は大きな支持を受けてきた。この時代に所得格差は拡大し、社会的弱者は存在したが、すべての国民は経済成長の恩恵を受けた。たとえば貧困層であっても所得が増え続けた

 ベトナム共産党は、このような時代を迎えようとしている。経済成長という大きな政策課題の中で、所得格差の是正を最大限に考慮しながら、その進度の拙速と遅延に留意すればよい。なお、この「所得格差の是正に考慮」するからこそ共産党なのであって、この中には社会福祉・労働者福祉の拡充といった問題も含まれている。日本では、社会党や共産党の存在が、こういった問題の解決を自民党の政策に反映させる役割を果たしてきたと言えるだろう。

 ベトナム共産党は当面、以上のような経済成長の進度調整に集中すればよい。この場合、国民の意思を最大限に吸収する。国民の不満の増大は避けなければならない。国民の不満は、共産党の支持が失われることを意味し、それは国民も望んでいないように思われる。このような政治状況が、ベトナム共産党の一党独裁の下での民主主義であると考えられる。

 政策や意見の相違があるから、複数の政党が必要であるとするなら、当面のベトナムでは共産党一党で十分ということになる。ただし批判勢力が存在しなければ、どのような政党も腐敗する。ベトナムの場合、この批判勢力は国民それ自身であり、マスコミであり、外国政府・外国企業であるとみなされる。この批判勢力が健在であれば、そして、その批判にベトナム共産党が真摯に対応している限り、ベトナム共産党の一党独裁は継続するであろう。「一党独裁は非民主的であり、それを改めるべきである」という単純明解な意見はありうるが、それはベトナムの現状を理解していないと私は思う。

 

 

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