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2007年10月17日 (水)

タックスヘイブンについて(3):その10の特徴

 タックスヘイブンについて唯一の客観的な定義は存在しないと指摘されている(p.24)。しかし「現在およそ80あるとされているタックスヘイブンの国と地域に見合った10の指標を掲げておきたい」(pp.24~27)。

 (1)非居住者に対してだけ、わずかな課税か、無税。
 (2)銀行の秘密保持が強化されている。
 (3)職業上の守秘義務の範囲が広い。
 (4)登記手続きが、いい加減ですむ。
 (5)国際資本の移動が、全面的に自由にできる。
 (6)執行が敏速である。
 (7)大金融センターの支柱になる。
 (8)経済的・政治的に安定している。
 (9)ブランドイメージが良好である。
 (10)双方向的な合意網をもっている。

 それぞれについて説明が必要であるが、それは原著を参照していただきたい。タックスヘイブンの特徴は、ただ無税であるとか、金融自由度が大きいだけでなく、(7)の役割を果たせるような情報技術のインフラ水準が高いことが必要である。また(8)も本質的に重要であると指摘されている。政治が安定しなければ、安心して資金を預けられないのは一般に通用する理屈である。

 さらに(9)は逆説的である。あまりにも贈収賄や犯罪といったダーティなイメージが強くなると、タックスヘイブンとみなされない。それは「犯罪国家」と同じ意味になる。租税回避のための「洗練さ」が必要とされる。(10)の「双方向」とは、「一般に諸大国と協定を結んでいて、企業の子会社に二重課税しないように配慮している」ことを意味している。そのためにも、明確な「犯罪国家」ではタックスヘイブンになりえない。

 このようなタックスヘイブンを利用した具体的な事例が紹介されている(p.93)。2005年末にアメリカの税務当局は、マイクロソフトのアイルランドにある子会社が、マイクロソフトの知的所有権を所有し、その資産が160億ドルに達することを摘発した。この子会社は、アイルランドに2001年~2004年に10億ドルの税金(12.5%)を支払っている。しかし本来、こういった知的所有権はアメリカの親会社に属すると考えられる。もしそうであれば、アメリカでは35%の課税がなされていたのである。

 いわゆる多国籍企業の上記のような節税手法は、日本企業でも多々ありうると考えられる。国税当局からの指摘に対して、「国税当局と見解が相違している。税理士に任せている」と企業が答えるのが一般的である。

 企業の社会的責任(CSR)という場合、その最大の要素は「黒字を出して納税する」ということであろう。これが、あらゆるステークホルダー(利害関係者)に対して満足をもたらすことでもある。この意味で、タックスヘイブンにおける日本企業の実態がさらに解明・精査されてもよい。それが、日本企業が積極的にCSRを果たすための前提であるとも考えられる。

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