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2007年10月 1日 (月)

「ウォッチ・ミー」:ベトナム国立交響楽団の教訓

 ハノイ在住の小松さん(日本ベトナム友好協会理事)から頂戴したDVDを見た。フジTVの番組『感動エクスプレス』の「ウォッチ・ミー」である。

 ベトナム国立交響楽団が、日本人指揮者・福村芳一氏と「チャイコフスキー交響曲第5番」の演奏に挑戦する物語である。この交響楽団は故ホーチミンによって結成されたそうだ。楽しそうに彼自身が指揮棒を振っている姿が放映されている。これは、フランス留学中に西欧文化に触れたホーチミンの教養や思想を象徴している。おそらく西欧の文化や政治を体感したホーチミンは、帰国後の「国づくり」にそれを生かしたのだと想像される。

 番組によれば、チャイコフスキー交響曲第5番が選ばれた理由は、それがベトナムの歴史に重なるからである。沈痛な哀しみから始まって、最後には希望の明かりが見えてくる展開である。また、チャイコフスキーが、ベトナムと交流のあるロシア人だからである。

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 この番組の物語は、1992年の出来事である。当時のハノイやホーチミンの様子が映し出されるが、今日の様子とは別世界である。15年間の歳月は、着実にベトナムを発展させた。おそらく今日のベトナム人は、それに自信をもっているはずだと確信した。当時の一人当たり国民所得は200ドル代の時代だ。今日は、その3倍以上の600~700ドル代になっている。

 オーケストラは個々の楽団員の演奏力が基礎となるが、さらに全体の調和が必要となる。指揮者の福村氏は、楽譜を見てばかりの楽団員に対して「ウオッチ・ミー」と何度も叫ぶ。指揮に従わないのだ。それは無理もない。ある楽団員は、サーカスの音楽演奏のアルバイトで生計を立てていたりする。全体の調和に慣れていない。ひとりひとりの力量を向上させることと当時に、楽団員全員の心を一つにしなければならない

 練習に遅刻する人が多い。自分で練習してこない。こういう時に福村は本当に怒る。指示をするが、その通りにできない。経験が十分にないからだ。教え込むには何年もかかると思われるが、練習の期間は1ヶ月少ししかない。

 福村氏は、それぞれの楽団員の苦しい生活事情を理解しながらも、交響楽団として演奏の水準に妥協しない。その指導に、楽団員は真剣に応えようとする。教える人間も習う人間も必死である。公演の成功に向けてがある。音楽に対する情熱がある。それだからこそ必死になれる。そして何よりも、福村氏の熱心さが楽団員に伝播したのではないか。楽団員の心に火を付けたのは、やはり福村氏だったように思われる。

 ハノイのオペラ座での公演は大成功であった。その後、ハノイから列車でフエ・ダナンそしてホーチミン市まで演奏旅行に出発する。移動中にも夜遅くまで練習は続く。楽団員は、自分の技量に最初は自信をもっていたが、外国人演奏者の指摘によって、自らの技量の未熟を自覚する。「上手くなりたい」と本気で練習する。

 厳しい指導を通じて、その指導の意味すら何のことか最初は理解できなかった楽団員が、次第に自らの成果に気づき、そして自信をもってくる。そうなれば上達は早い

 これらの物語は、ベトナム人の気質の一端を示しているように思われる。さらに今日のベトナム人従業員に対する指導のあり方に教訓を与えてくれるように思われる。

 その最大の教訓は、福村氏のような強い指揮=リーダシップを発揮する人物の存在ではないかと思われる。それも偉そうなだけではダメだ。本当に偉くなければ意味がない。本当に熱心でないとベトナム人も反応しない。このように考えれば、日系企業の労働問題の多くは、日本人管理者の力量の問題として、自らに跳ね返ってくる。このような自戒・自省を日本人はする必要があると私は思う。それだからこそ日本人はベトナムで尊敬される。 

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