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2007年9月15日 (土)

アジア経営学会第14回全国大会:同志社大学で開催

 アジア経営学会第14回全国大会同志社大学今出川)で開催されている。9月14日(金):理事会、9月15日(土):研究報告、9月16日(日):研究報告の予定である。

 私は、柄にもなく理事に選出されており、14日から連日出席している。以下では、9月15日(土)における印象深かった報告が紹介される。なお、アジア経営学会の詳細は、次のHPを参照していただきたい。http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsaam/index.html

なお、同志社大学商学部で私は非常勤講師として20年ほど前に「企業集団論」という070916_13480001_4 科目を講義していた。その当時、ダイエー会長兼社長の故・中内功氏を講義に招聘した。受講生が500名近く集まり、次から次に質問の手が挙がった。ダイエーも中内氏も元気であったし、私も若かった。昔と変わらぬ今出川の煉瓦作りの校舎の間を歩きながら、そんなことを思い出した。

 今回の学会報告の中にはベトナムに関するテーマはなかったが、いくつかの報告の中でベトナムについて触れられている。たとえば鈴木康二先生(立命館アジア太平洋大学)は、「インドネシアの新投資法で外国投資は増えるのか」という論題で報告された。その中で、インドネシアよりもベトナムの方が日本企業の製造拠点として人気が高いと指摘されている。ベトナム最大の魅力は、良質な労働力と評価されている。

 鈴木先生は、ベトナムのビジネス研究の先駆者であるが、最近はベトナムについて本格的に言及されないのは残念である。たまたま会員総会で席が隣であり、「最近はカンボジアが面白いですよ」といった会話を交わした。

 藤本隆宏先生(東京大学大学院経済学研究科・東京大学21世紀CEOものづくり経営研究センター長)は、「アジア諸国における設計思想と比較優位に関する試論」という記念講演をされた。藤本先生は、設計思想に関係する人のすべては「もの作りの人」という考え方で、生産のみならず、サービスや販売なども「もの作り」の発想が必要だし、それが重要だと指摘された。つまり生産工学的な発想があれば、それはすべて「もの作り」ということである。

 藤本先生は、経済学におけるリカードの「比較優位説」の観点に基づいて、製品設計者の発想(=製品アーキテクチャ)をインテグラル(擦り合わせ)型モジュラー型(組み合わせ)型に区分して、各国の生産の優位性を分析された。そこでは、米国と中国は、モジュラー型の製品生産に優位性を持った国であり、日本はインテグラル型、台湾は、その両方の要素を持った国であると指摘された。

 そしてベトナムは、インテグラル型の製品アーキテクチャをもつ国として比較優位性を発揮する可能性の高い国と言明された。日本人はベトナム人に中国人よりも一般に親近感もしくは親和性をもつ。それは、インテグラル型の生産技術を日本からベトナムに移転する前提もしくは背景となる要素である。このインテグラル型のアーキテクチャが成立する具体的な条件は、多能工の存在と長期雇用制度である。これらの条件が維持される限り、日本のもの作りも健在と言いうる。

 私見では、多能工と長期雇用という自国の比較優位性・競争優位性について、ベトナム人自身が自覚・納得することが求められる。中国に勝てるベトナム的な要素は、これである。低コストで多能工が養成できる国がベトナムである。この認識をもって日本企業はベトナム進出を検討することが必要である。ベトナムでモジュラー型の製品生産を志向しても、それは良策ではない。

 ベトナムは、けっして「中国+ワン」の国ではない。藤本先生によれば、中国はモジュラー型、ベトナムはインテグラル型に分類される国である。それぞれの国に特性に適応した製品生産が直接投資先を検討する要点である。それが成功の要因とも言える。ブームに流されず、自社の製品特性を考慮し、経営者が進出国を決定する。このような意味で、経営者の役割は重要である。

 以上、藤本先生の指摘である。そういったベトナムが、ベトナムらしさを発揮することが求められる。それが、WTO加盟を果たしたベトナムの国際競争力の源泉とみなされる。

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