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2007年9月18日 (火)

大阪市「海遊館」株式を近鉄に売却:カンボジアとベトナムに対する含意

 表題のニュースは2007年9月16日(日)に新聞各紙で報道された。第3セクターとは言うものの、大阪市民の資産である水族館「海遊館の株式9億円を民間企業・近鉄に売却して、大阪市の財政再建に役立てるという趣旨である。

 このような手法は、国鉄からJR各社に民営化されて、旧国鉄資産を民間に売却するといったことも同様である。おそらく10月1日から民営化される郵政公社(持ち株会社:日本郵政株式会社)においても、郵便局の資産売却があっても不思議でない。たとえば東京や大阪の中央郵便局は好立地であるから、それを不動産ファンドを利用して超高層ビルに建て替えて、テナントや住居として賃貸・販売することも考えられる。

 ここで考えなければならないことは、海遊館も国鉄も郵便局も国民の税金で設立・運営されてきた国民の財産ということだ。その財産処分について、もっと議論があって当然だと思う。このようなことを考える契機は、カンボジア訪問である。

 なぜカンボジアが関係するのか? 2009年に予定されているカンボジア証券取引所のDsc09969 開設である。その時に果たして上場に値するような会社が存在するのかということである。そこで、たとえば日本のODAで建設中のシハヌークビル港と経済特別区などの管理会社を上場させるというアイデアがある。また、アンコールワット遺跡の管理会社が上場するというアイデアもある。

 (写真は、カンボジアの「アンコール」ビール。なかなかイケル味だ。暑い国では苦みの少ない淡泊なビールが飲みやすい。ラオスの「ラオスビール」も同様だが、地元ビールが、その気候に適合していて最も美味しいと感じるように思われる。)

 これらはカンボジアの国家財産であるが、その会社が上場して外国投資家を含む民間に売却される。この売却益から得た資金がカンボジアの経済社会の発展に使用されるというなら、それも有意義であるとみなされるが、貴重で希少な資源である国有財産の処分には慎重な対応が求められる。

 カンボジア証券取引所では、当初から100%の外国人所有が容認される見込みである。ベトナムでは当初が外国人株主の所有上限が30%、その後に49%となって株式投資ブームになった。これに対してカンボジアは、いきなり開設当初から100%取得できる。国有資産が即座に外国人所有になってしまう可能性がある。

 私見では、ベトナムでは、国有企業の株式会社化やIPOの迅速な遂行が株式市場関係者からは期待されているが、それは国有財産を外国人に売却することを意味する。その「安売り」を政府は避けようとする傾向が見られる。株式市場の発展という観点からの促進派と、国有資産の売却という観点からの慎重派の意見が併存しているのがベトナムであろう。この両者の力学が、今後の国有企業の株式会社化の動向に影響を及ぼすとみなされる。

 なお、これは意見対立というものではなく、考え方が2つあるという意味である。日本のマスコミは「保守派」と「改革派」といった色分け=レッテル貼りが好きだが、ベトナムの政策決定者は、それほど単純ではない。

 財政赤字を補填するために国有財産を売却する日本。経済発展のために国有財産を売却するカンボジア、そしてベトナム。そのカンボジアとベトナムでは、その対応も相違している。

 日本とカンボジアおよびベトナムにおいて経済発展の水準には大きな相違があるが、以上のような国有資産の売却という観点からの論点では共通の議論ができそうである。日本もベトナムから学ぶことがあるかもしれない。

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