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2007年9月16日 (日)

中国企業における「誠信経営」:作新学院大学大学院・宝虎氏の研究報告から

 アジア経営学会第14回全国大会(主催校:同志社大学)で私は、9月16日(日)に作新学院大学大学院・宝虎氏の「現代中国企業における「誠信経営」」という研究報告の司会をした。

 企業不祥事の多発は中国のみならず、日本でも同様である。これは「企業倫理」の欠如を意味する。その倫理感を象徴する基本的な理念として、宝氏は「誠信経営」を指摘する。英語で「誠信」は、integrityである。まさに時宜にかなった論題である。

 誠信経営とは広義には、企業がその各種利害関係者に対し誠実と信用を理念として行動する意味であり、いわゆる関係領域への対処に際して求められる価値理念である。狭義には、企業が自主的に倫理規範を策定し、その倫理・行動規範を順守することである。

 たとえば中国では、胡錦涛・国家主席が2006年3月4日に全国政治協商委員会第10期全国委員会第4回会議において、八栄八恥という道徳観を提唱したそうである。

 ① 祖国を熱愛することは栄光/祖国に危害を与えることは恥辱
 ② 人民に奉仕することは栄光/人民に背くことは恥辱
 ③ 科学を尊重することは栄光/無知蒙昧は恥辱
 ④ 労働にいそしむことは栄光/労働を嫌悪することは恥辱
 ⑤ 団結と互助は栄光/個人を傷つける利己主義は恥辱
 ⑥ 誠実さを信義を守ることは栄光/利により義を忘れることは恥辱
 ⑦ ルール遵守は栄光/法と紀律の違反は恥辱
 ⑧ 苦労をしのび奮闘することは栄光/奢侈と安逸に溺れることは恥辱

 宝虎氏によれば、以上は「内容として特に目新しいものはないが、中国では依然として「政治家や官僚の腐敗」「拝金主義」「企業の不正行為」等が大きな社会問題となっており、国家主席が改めて道徳観を説いたことが注目された。」

070916_13480002  あえて上記8項目を指摘しなければならないということは、それだけ中国の「恥辱」が蔓延しているとみなすことができる。儒教主義に基づいた中国人の生活慣行は、かつての文化大革命と最近の市場経済化によって崩壊してしまったのであろうか。こういった儒教精神は、今日では韓国やベトナムで継承されていると私は思う。年長者・先輩・先生を尊重し、家族・親族を大切にする。信義を重視する。こういった精神は、かつての日本にも継承されていたが、最近では希薄になってきたと私には思われる。(写真:同志社大学・今出川の正門)

 宝虎氏の報告は、大学院生として水準以上の優れた研究発表であり、大いに私は勉強させていただいた。会場からは、前大阪市立大学・稲村先生、前慶応義塾大学・植竹先生、前立命館大学・仲田先生といった「企業論」分野の権威の方々の手が次々に挙がり、内容の濃い質疑応答の機会をもつことができた。宝虎氏は、前明治大学の中村瑞穂先生の指導を受けられている。さすがに企業支配・企業統治・企業倫理で最先端の議論を先導されてきた中村先生のお弟子さんだと思われた。

 私見では、企業不祥事を防止するための具体的な方法として、たとえば「内部告発」といった制度の導入は効果的と思われるが、その効果は中国と日本で相違はあるのだろうか。もっとも、この制度は「告げ口」や「チクリ」の奨励である。あまり気持ちのよいものではないが、不祥事の防止を優先させるなら、こういうことも考慮されなければならないであろう。いやな時代になったものである。

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