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2007年7月 4日 (水)

ベトナムにおける法律・規則変更の論理:リスクを予想する

 ベトナムの法律・規則は「猫の目」のように変わる。だからベトナムは信用できない。突然の政府の政策変更があり、現在のビジネスにとって大きな被害が生じた。ベトナムの投資環境の問題点だ。これまでの私の見聞では、このような苦情・不満が多数あった。

 たとえば自動車産業の「マスタープラン」の変更で多数の自動車企業が進出し、過当競争に陥ったことや、オートバイの部品輸入規制が性急に導入されたことだ。そのほか突然の増税や課税、規則変更に日系企業は悩まされてきた。

 私は、こういった日系企業の苦情・不満に納得しながらも、ベトナム政府の立場も理解してきた。しかし自分自身が、ベトナムの投資ファンドの仕事に関係するようになって、より深い部分でのベトナムの政策立案の論理が見えてきたように思う。

 たとえば株式投資における一任勘定の個別口座管理の仕事は、弊社・ロータス社がベトナムで最初に始めた。すでに外国投資ファンドや個人株式投資の業務は活発であるが、個人の株式投資をベトナムの運用管理会社に委託する業務は、本年6月に日本人顧客とロータス社が締結した契約が最初である。

 この場合、預託銀行が投資資金を管理するのだが、その銀行業務はベトナムで前例がないので、監督官庁である財務省や国家証券委員会と預託銀行が連絡を取りながら、必要書類を作成している状態だ。未開拓の業務を最初に始めるときは、こうした慎重な手順を踏むことになる。このようなことが起こるのは、法律は成立したものの、具体的な施行細則は決定されていないからだ。

 ビジネスはスピードが肝心。そこで法律の解釈の範囲内でビジネスを進める。具体的な規則がないから、実際のビジネスを進めながら、政府当局と相談しながら規則が決まってくる。このような政策決定の過程を私は実感することができた。

 ここで注意を要するのは、法律の範囲内なら合法とみなされるが、規則が決定後には、それが違法になるかもしれない仕事やビジネスモデルだ。施行細則が決定されていない段階で政府当局に問い合わせると、ビジネスが可能という返事がある。合法的と判断される。しかし、その後に施行細則が決まると、最初に合法と判断されたビジネスが不可能になることもありうる。同様のことが、施行細則の代わりに、首相令によって起こる場合もありうる。これが、冒頭の日系企業の苦情・不満の本質だ。

 以上のような「法律的・制度的なリスク」が、ベトナムビジネスに存在することを銘記しなければならない。このリスクを証券業に敷衍すれば、たとえば次のような場合が想定できる。

 ベトナムの株式市場を発展させるために外国投資ファンドを呼び込みたい。そこで政府は、正式の投資運用管理の認可を取得していない会社にも「株式取引コード」を付与する。書類の形式さえ整っていれば問題ない。そこで外国投資ファンドの会社は、ベトナムで株式運用できる。

 このような会社のリスクは、ベトナムで本来は取得すべき正規の認可を取得していないことである。たとえば現在、ベトナムに関するニュース配信会社が複数存在し、ベトナム語のニュースを日本語に翻訳してインターネットで販売している。この業務には、本来は情報文化省の認可が必要だ。ベトナム国内報道は同省が監督官庁だ。しかし、外国人向けに限定されたインターネットの報道であるから、認可は不要と判断されている。それはよいとしても次に、今日的な留意点として、翻訳ニュースに関する知的所有権の問題が残されている。

 さて上記は、株式市場の発展のために政府が「アクセル」を踏み込んで加速した状況である。これに対して、株式市場が加熱して「バブル化」=「マネーゲーム化」した場合、政府は「ブレーキ」をかけようとする。この場合の手段として、さまざまな政策手段が考えられる。

 実際に提案されている政策は、株式投資に対する銀行融資の規制であるが、そのほかに、株式売買の課税を強化したり、外国人の個人投資家の参入を抑制したり、正規の認可を受けていない外国ファンドの運用会社の活動を規制することも考えられる。この最後の運用会社に対する規制の場合、いわば「梯子を外された」ことになるが、そういうリスクが生じるのは、その会社が国家証券委員会から認可を受けていないことから生じる。この場合、当然、この会社は政府の政策変更を恨み、苦情を公言するだろう。しかし、それは「しょうがない」のではないか。

 経済発展を優先課題とする政府は、法律上の解釈の範囲内で最初に「アクセル」を踏む場合が一般的である。しかし、それが加速してくると「ブレーキ」を踏むこともある。この「ブレーキ」の段階で、具体的には「突然の政策変更」というような苦情や不満が日系企業から出てくる。この「ブレーキ」の効果が十分にあれば、政府は再び「アクセル」を踏むこともある。

 社会主義を目標とするベトナムは、「経済発展」という「アクセル」と「所得格差の是正」という「ブレーキ」の双方を巧妙に踏み分けるような政策調整をしていると私は考えている。これまで一般の人々は、前者を「改革派」、後者を「保守派」と呼んできた。しかし、このような「二分法」=「二者択一」は正しくない。アクセルとブレーキは、どんな自動車にも併設が必要だからだ。つまり、どのような国にも、経済発展にとってこの両者の役割が不可欠である。事実、現在の日本でも「格差是正」という政策課題に関心が高まっている。

 「法律的・制度的なリスク」を以上のように認識すれば、その予想も容易であろう。予想できることであれば、それを政策の「突然の変更」と言うことはできない。これまでのベトナムビジネスの教訓として、このようなリスクに対する観察と警戒そして対応に十分に留意しなければならない。

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