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2007年7月11日 (水)

安定株主と株式持ち合い

 ベトナム投資ファンドが、未公開株式を取得する。その場合に2年~3年間は安定株主として株式を継続保有する契約を結ぶ。この取得価格は、安定株主であることの代価として通常の評価価格よりも割引される。このような安定株主のことを「戦略的パートナー」とベトナムでは呼ぶ。

 この「安定株主工作」が行われるのは、株式公開するための準備として行われる。敵対的・非協力的な投資家が株式を取得すると、その後の経営に混乱をもたらすからだ。企業成長のためには、株主と経営者の協力体制が望ましいことは世界に共通している.。ベトナムでは従業員持株が奨励されているが、それだけでは安定株主として不十分である。

 通常、安定株主は取引先の企業や金融機関が一般的だ。長期的な取引関係を維持するために安定株主の地位を占めるという論理である。しかし、ベトナムでは一般の企業や金融機関に資金余裕はない。そこで、安定株主の役割を果たすのが外国投資ファンドというのがベトナム的である。より正確には、ベトナム的と言うよりも、資金不足の新興市場で一般に見られる現象であると想像される。

 ここで、日本企業独特の「株式持ち合い」を検討する企業があっても不思議でない。株式持ち合いは株券を交換するだけだから、「紙のやり取り」(京都大学・故大隅健一郎)と指摘され、実質的な資金調達にならない。しかし安定株主工作の低コストの有力な手段になる。

 このような株式持ち合いによる安定株主工作は、国際的な観点からは好ましくない。経営者の自己保身が目的であり、一般株主そして個人株主の利益を希薄化するからである。株主と経営者の協力体制は望ましいと指摘したが、株式持ち合いでは、両社の緊張関係が失われる。経営者間の「なれ合い」が発生する。

 ベトナムにおいて「株式持ち合い」が普及して、企業グループが形成される。各省傘下の総会社のグループ企業が、株式持ち合いによって支配権を維持しながら、株式公開を進める。このようなシナリオも考えられないこともない。

 私は、大学時代(約30年前)から「株式持ち合い」を研究してきた。当時、株式持ち合いは欧米では日本固有の奇妙な驚きの現象であった。日本企業システムの「閉鎖性」の象徴とみなされた。今、ベトナムと係わっていて、株式持ち合い問題に再会するとは予想もできない出来事だ。

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