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2007年7月 9日 (月)

「IPOの延期」報道とベトナム政府の混乱

 ズン首相が、国営企業のIPO計画の延期を指示したという報道があった。7月7日付けの『日本経済新聞』の記事に対応した内容だ。私は「計画通りにIPOを進める」という国家証券委員会の見解を支持したのだが、それが早くも「ハズレ」た格好だ。

 筆者の情報によれば、今回の株価下落によって、外国投資ファンドも被害を受けている。かなり高値で株式取得したようだ。さらなる株価下落は運用成績に影響する。そこで、より以上の株価下落を回避するために、新規株式の供給を少なくすることが望ましい。ズン首相の指示は、このような論理が機能したのかもしれない。

 また私見では、国家証券委員会はベトナム証券市場の監督官庁として、証券市場と証券業界の健全な発展戦略を十分に検討・理解している。この観点から言えば、ベトナムの株価は、個人投資家の売買によって攪乱され、その結果、割高になっている。その是正こそが、当面の必要とされる施策である。

 このためには、ズン首相が言うような株式公開の延期ではなく、たとえばIPO入札時の適正な基準値が開示されたり、抽選などの方式が検討されるべきなのだ。このような規則がないために、個人投資家が高値の入札を繰り返してきた。そして個人投資家からの株価下落の苦情や不満が噴出しているのだ。

 国民の「声」に押されて、首相が指揮権を発する。これは、政府の政権維持のための重要な「民意吸収」の手段であり、これまでベトナムで何度も実施されてきた。問題解決の「奥の手」は、首相が主導権をもって国民のために動く。ベトナム共産党が一党独裁の長期政権を維持できている秘訣の一つだ。

 しかし、株式市場の問題は、たとえば交通事故の増加といった社会問題とは性格が異なる。市場参加者は、一般国民ではなく、富裕層を中心とした個人投資家である。また、株式売買の専門家である投資ファンドを含む機関投資家である。これらの投資家は、当然であるが、自己責任で株式投資をしている。

 このような観点から言えば、首相の指示は異例とも考えられる。ベトナム株式市場の健全な発展を考えるなら、すでに指摘したように、バブル化した株価の下落は好ましいからだ。

 株式市場は、企業の資金調達のための「発行市場」と、それを円滑に促進する「流通市場」の双方がバランスよく発展しなければならない。このような観点から、証券当局は、いくつかの指導や規制を「ブレーキ」と「アクセル」の手段として使用している。さらに私見では、以前から主張しているように、かつて日本で実施された「株式民主化運動」といった証券知識の普及活動が求められる。

 次回の訪越で、国家証券委員会と意見を交換してみようと思う。何事も現場での調査。これが「実学」の基本だ。

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