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2007年4月10日 (火)

前途多難なベトナムと日本のEPA締結:今年中に可能か?

 韓国と米国がFTA(自由貿易協定)に4月2日に合意した。FTAは2国間協定であるが、その内容の大枠はWTO(世界貿易機関)の規定に従っている。他方、日本が推進するEPA(経済協力協定)は、FTAよりも広範な内容を含んでおり、アジア諸国に対する日本の重要な経済戦略とみなされている。たとえばFTAが貿易関係に限定されているのに対して、EPAは人材派遣などの人的交流も含まれる。

 日本は、すべてのアセアン諸国とEPA交渉を開始しており、すでにシンガポール・マレーシア・フィリピンとは協定が締結されており、インドネシアとの交渉は最終段階となっている。これに対してベトナムは、2007年1月半ばに東京で第1回目の交渉があり、第2回目は3月末にハノイで開催された(より正確には「開催されたはずである」)。

 この第1回目の会談は不調に終わったようだ。ベトナムの交渉担当者は、「最初の交渉テーブルでは、両国の立場に大きな違いが残された」と指摘している。さらに日本の服部ベトナム特命全権大使は、ベトナムの狙いを日本は完全に理解していないし、その反対にベトナムもそうだと述べている。「われわれは、ベトナムの意図は不明だが、水産物・農産物の輸入関税の削減と、日本市場に対する労働輸出にベトナムは非常に関心があるのだろうと推察している」と服部大使は続ける。

 日本の交渉担当者は、ベトナムに輸出される工業製品の関税撤廃に非常に関心がある。「しかし両国は、交渉テーブルの上に置く議題について、お互いに理解していないし、合意にも達していない」と大使は強調する。

 ベトナムの多国間貿易政策部門の商業省高官は、日本の特殊な交渉スタイルのために会談が困難だと吐露している。「われわれは、それぞれの個別問題を日本の全体の交渉チームと議論できない。言い換えれば、財務問題は経済産業省、人間の問題は法務省、農業問題は農林水産省と交渉するのである」。

 いずれにせよ両国は、ベトナムと日本の発展水準に大きなギャップがあることを認めた。さらにWTO規制に従って建設的な方法で交渉することでも合意したと言われている。私見では、これらの合意は交渉の大前提であって、実質的な内容は何ら進展していないと言える。

 これまで日本とベトナムは、ベトナムの投資環境の改善のために、建設的な議論を「日越共同イニシアティブ」や「日越投資・貿易ワーキンググループ」で行ってきた実績がある。そしてベトナム側は、日本側の提案や要望に対して誠実に対応してきたといわれている。しかしながら、上記のようなEPAといった大きな国家間の交渉になれば、WTO加盟後のベトナムは、強固な交渉相手に変身しているのかもしれない。WTO加盟後は、ベトナムは日本とも米国とも対等の関係だからである。

 ベトナム側の何人かの交渉担当者は、日本とのEPA協議がタフなものとなり、年内の交渉締結のためには、両国の忍耐と柔軟性が求められると指摘している。このような発言がベトナム側から出ること自体が、ベトナムが日本と同じ土俵で堂々と渡り合うことを宣言しているように私には思われる。

 さらに前述の「日本の特殊な交渉スタイル」というのは、私見では、ベトナムでも同様の「建て割り行政」が存在するから、そっくりベトナムにも妥当する。そうであるにもかかわらず、このような発言があるということは、ベトナム側のEPA交渉担当者には、かなりの権限委譲がなされており、すべての領域での応対が即座にできると想像される。

 WTO加盟のために、米国との通商条約の締結を粘り強く行ってきたベトナムの外交交渉力は、ある意味では日本を上回っていると言えるかもしれない。当初の私見では、日本とベトナムのEPAは簡単に締結するように思えたが、実際にはそうではない。WTO加盟を果たしたベトナムは、交渉相手として「手ごわい」ということを再認識する必要があるようだ。これはビジネスでも同様だ。ベトナムを甘く見ると失敗する。今後のEPA交渉の進展が注目される。

 以上は、Vietnam Investment Review, No.803, March 5-11,2007,p.5, "Vietnam, Japan need to find common voice"を引用・参考にして私見を述べた。

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