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2007年4月24日 (火)

前方から後方から?:競争社会を考える

 大阪で開催された昨日の「ベトナム投資セミナー」では、約70名の方々が参加された。座席は前の方から埋まっていった。これに対して大学の講義では、前方の座席はいつも空いている。

 たかが着席の位置であっても、それは個々人の意識の表明だ。観劇や公演では、長い行列ができるほどに前列から埋まる。高い料金を払っても、できるだけ「スター」に近づきたい。前方に着席することが、積極性・執着性・熱中性を示している。

 これに対して、後方に着席する場合が私にもある。少し遠慮して、公演(講演)者を見守るという意識が働く。または、やや客観的に会場全体を眺めるという気持ちを示している。

 大学生を対象にした就職企業セミナーでは、当然、応募者の着席は前方からが望ましい。私が採用担当者なら、後方の着席者の「やる気」を疑うだろう。

 それでは、大学の講義はどうなのだろうか。前方の学生もいれば、後方の学生もいる。さまざまな講義を受ける姿勢があってよい。それぞれの学生に個性がある。古き良き時代の大学の雰囲気だ。

 しかし今年度から、あえて私の講義では、最後方の座席の3~4列を空けるようにして、前方に詰めて着席するように指示している。就職企業セミナーを想定して、積極性をもってほしいという学生教育の一環だ。古き良き時代の大学は郷愁となり、現在の大学は競争の時代となった。その意識を高めるために着席の位置も指示することにしたのだ。

 大学が競争の時代となった背景には、日本全体が競争社会に変貌をとげている状況がある。受験生の減少だけが理由ではない。たとえば奨学金を増やすなどの受験生を増加させる施策が採用されれば、定員割れの大学の出現は回避できるだろう。それが施行されないのは、大学だけが競争に対して「聖域」とは認められない社会風潮があるからだ。

 現在、競争に伴う「格差社会」の出現が社会問題となっている。競争を前提にして、その結果の格差を是正するのか、競争そのものを緩和して格差を是正するのか。この2つの考え方が存在するように思う。

 この選択について結論をだすことは難しい。私見では、競争を前提にした社会の場合、競争という緊張感の中で、かえって今まで以上に人間の絆もしくは親愛・友情、そして家族の結束が強まるのではないか? そのように「プラス志向」で考えることが望ましいだろう。他方、「競争」を前提としない新しい「共創」の社会が望ましいと思うこともある。競争の中で「WIN-WIN」関係を追求するという発想も、一種の「共創」の活動とみなされる。

 古き良き時代を回顧するのではなく、新しい時代を切り拓く。このような意志を持ち続けたい。 

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