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2007年4月21日 (土)

SPAがアパレル業界成功の決め手:「実学」講義「21世紀の業界展望」が始まる

 4月14日(土)、私が担当する「21世紀の業界展望(A)」の講義が始まった。流通科学大学の「建学理念」を象徴する「実学」講義の一つである。

 最近では、多数の大学が実施している「インターンシップ」や「実務家の招聘講義」は、流通科学大学によって日本で最初に1990年に体系的に導入・実施された。当時、インターンシップ(流通科学大学では「OCP=オフキャンパスプログラム」と呼んでいる)実施のために学生の受入を依頼するために何度も企業訪問したことがある。その当時、医学部のインターン制度や、教育学部の教育実習を例にして、インターンシップの意義を企業担当者に話したことを思い出す。それが今では当然のようになっている。時代の変化を実感する。

 さて、今年度第1回目は、(株)MORIパーソナル・クリエイツ代表取締役・森貞雄氏を講師に迎えて、「いま、21世紀での生き残りを賭けビジネスプロセスの変革へ――SPA業態の開発はFB産業のキーワード――」というご講義を賜った。

 森さんは、『繊研新聞社』の記者・編集者として40年間勤められた後に、繊維・ファッション業界の人材育成や就職セミナーの会社を創業された。講義では、FB(ファンション=ビジネス)の現状と将来が具体的に紹介された。

 本日は、初Dsc09255回の講義のために開講日程が学生に徹底されておらず、写真のように、やや出席者が少数で残念であった。受講登録者数は70名を超えている。受講学生は、机の上に「名札」を置くように指示されており、講師との対話が活発になるように工夫されている。ほとんどの学生に森さんは気さくに語りかけられ、学生からも積極的に質問があった。

 FBにおいて、日本は世界で最先端の国になっている。第1は、日本の「ファッション係数」がイタリアに次いで世界第2位(5%)である。この係数は、家計費に占めるファッション支出の比率を示している。ここでのファッションとは、アパレル・靴・ベルト・バッグ・アクセサリー・化粧品を含んでいる。ただし宝石などの装飾品はFBから除かれる。この中でアパレルが約13兆円(約70~80%)の最大市場である。

 第2は、「東京コレクション」の存在感が増している。FBの商品企画者が注目する世界5大コレクションは、ミラノ・パリ・ロンドン・ニューヨーク・東京。「パリコレ」の関係者が東京の街を歩いて見て勉強している。インディーズ系と中心とした日本の若者の感性が世界を引っ張っている。

Dsc07542  日本がFBの先導役という理由は、日本人の消費体験にある。バブル経済期を挟んで日本人は多様な消費経験があって、価格と価値を見分けることができる人が増加した。価格は安くても価値がないものは売れない。逆に、価値があれば、高くても売れる。日本の消費者は専門家の眼をもっているという意味で、プロフェショナル=コンシューマー(=「プロシューマー」)と呼ばれることがある。

 写真は、原宿・表参道。流通科学大学では夏休みに毎年「東京キャリア探検隊」を組織している。小売・運輸・食品・情報・金融などの中からファンション業界を選択した学生は、企業訪問のほかに原宿を視察する。

 現代の日本は、大変動の時期を迎えている。上述のように生活者のファッション感覚は向上し、生産のグローバル化は当然となっている。海外のファッション状況、さらに一般にグローバル=スタンダードを理解しておかないと、日本の消費者にも対応できない。また、外資流通企業の参入も本格化し、大規模な流通業界の再編成の時期を迎えている。単純に言って、阪急・阪神の2百貨店が統合されれば、アパレルの2店舗が1店舗になることを意味する。

 このようにFBの経営環境は激変している。その中でFBが生き残るためには、生産システムの統合が求められている。アパレルの生産過程は次のようである。川上(素材メーカー)⇒川中(アパレルメーカー)⇒(卸売)⇒川下(小売:百貨店・量販店・専門店)⇒消費者。この中で「川中」と「川下」の統合が「企画・生産・販売の一貫システム」であり、SPAと呼ばれる。SPAは、日本人の造語であり、peciality store retailer of rivate label pparel の略語だ。

 SPAの定義は、森さんによれば、次の通りである。
(1)ボリューム市場の中で、
(2)製造者利潤と小売利潤の両方を確保し、
(3)顧客満足を第一義に考えた、
(4)企画生産販売の一貫システム。

 私見では、SPAを一般に言えば、製造小売業もしくは小売製造業ということだ。製造から小売り(ワールド・ファイブ=フォックス・サンエーインターナショナルなど)、そして小売りから製造(ユニクロなど)の統合である。これは「製販統合」と考えても良い。たとえば製造会社と販売会社が別会社であった企業が、両社を統合する。製造と販売を別会社にして、それぞれに責任と権限をもたせることは、これまで相互に緊張感を生んで企業グループ全体に好影響を与えてきたと思われる。ただし、これは市場成長期には適合しても、市場が成熟し、しかも「少子高齢化」・「人口減少」の日本では、より顧客に接近しなければならない。

 顧客に接近する目的は、消費者=顧客の個々の嗜好・志向・ニーズ・クレームなどの諸情報を的確に抽出して、それを製品・商品に反映させることだ。それによって、不良在庫コストを削減し、顧客満足を高めることができる。要するに現代の日本は、販売力・営業力によって何でも売れた時代から、売れるモノを作らなければ売れない時代になったのだ。このような時代に対応する生産体制が、ファッション業界で言えば、SPAとみなされる。

 アパレル業界のトップである(株)ワールドは、1991年にSPAに成功している。ユニクロやファイブ=フォックスもSPA型の成功企業である。共通する成功要因は、優秀な企画、低いコストの海外での生産、顧客満足を追求する販売が、今後の成功要因である。

 このSPA実現のためには、販売コストの増加が伴う。契約社員では、顧客情報が的確に抽出できない。顧客満足を徹底して追求できない。契約社員では優秀な人材が募集できない。このような意味で、契約社員の正社員化が、たとえばワールドでは進められている。

 初回講義のために学生が慣れていない状態の中で、森さんの講義は活気があり、興味深い情報を提供していただいた。貴重な時間を頂戴したことに感謝を申し上げると共に、森さんのますますのご発展とご健康をお祈りしたいと思う。

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