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2007年3月19日 (月)

さすがに野村證券はすごい:ベトナム投資戦略

 本ブログ(2月13日)でも紹介したように、SCIC(The State Capital Investment Corporation:国家資本投資会社)は、ベトナム国営企業の株式を管理する会社である。

 このベトナム会社と野村ホールディングスが、3月13日に業務提携の覚書を締結したと発表された(『日本経済新聞』2007年3月14日)。この記事の意味は重い。「さすがに野村はすごい」。これが私の印象だ。

 業務提携の目的は、「SCIC傘下のベトナム国営企業の株式新規公開(IPO)などを野村が支援する」(同紙)ことである。つまりベトナム株式市場における株式売買ではなく、ベトナム政府と提携して、国営企業の未公開株式に野村が投資するのである。国営企業の未公開株式を取得することが、現在の「バブル」状態のベトナム株式市場では、最もリスクが小さい投資戦略である。それを野村は見逃さない。さすがだ。

 ベトナム政府は一般に、、企業や資金の規模の大小を評価基準にする。「大きいことは良いことだ」という発想がある。経済的に小国であるベトナムが、大国を羨望することは理解できる。日本の証券業界をリードしてきた野村に対して、さらに「野村ハイフォン工業団地」を先駆的に建設した野村に対して、ベトナム政府が絶大の信頼を寄せないはずがない。上記の業務提携については、このような背景があると思われる。

 現在のベトナム株式市場は「バブル」状態である。株価収益率が平均70倍。個別銘柄では200倍もある。これは異常だ。近い将来の調整局面が不可欠だ。それを経過してから、さらなる成長が見込める。これは一般に容認される将来展望であると思われる。

 そうであるとすれば、当面の投資戦略は株式売却による利益の確定。そして現金保有。たとえ現金保有しても、ドン建てで8%、ドル建てで5%の利回りがある。現金保有しながら合理的な次の投資機会を待つ。このような投資戦略が最善だ。

 しかし、より最善の投資戦略がある。それは未公開株式に投資することだ。企業と直接交渉して未公開株式を譲渡してもらって、安定株主として経営陣を支持する。または、従業員持株会と交渉して、その株式を買い取る。これは、調整局面もしくは「バブル崩壊」の株価下落の影響を受けない最善の投資戦略だ。これに野村は目をつけたのだ。

 私はベトナム政府に望みたい。株式市場が本来の機能を果たすように証券行政を指導することを。この「株式市場の本来の機能」とは、株式の発行市場と流動市場の均衡ある成長によって、企業に対する直接金融を拡大することである。それが結果として企業成長そして経済成長に貢献する。このことには、次のような当面の課題になる。バブル化した株式の流通市場の成長に実物経済の成長が追いつくことである。

 実物経済=モノ作り=生産活動は手間暇かけた営みだ。品質管理・コスト削減・人材育成など面倒な仕事が山積する。これに比べてマネーゲームを通しての「濡れ手に粟」の利益獲得は、簡単で効率的なように思われる。しかし、生産活動=実物経済の成長がなければ、マネーゲームの基盤を浸食する。マネーゲーム自身がマネーゲームの存在基盤を脅かす。この矛盾を、社会主義を目標とするベトナム政府が認識していないはずがない。

 ベトナム株式市場の今後の動向は、上記のマネーゲームに対するベトナム政府の具体的な施策に影響を受けざるをえない。 

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