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2007年2月 9日 (金)

ベトナム株式投資のリスク:社会主義と政府規制

 先日、ベトナム株式投資に関する為替リスクについて議論した。ここで次に、政府規制のリスクについて検討しておく。

 周知のようにベトナムは社会主義を志向する国である。しかし当面、市場経済は社会主義制度と矛盾しないと考えられている。社会主義に向かう過程で必要な経済発展にとって市場経済が適当とみなされているのである。

 しかし、社会主義体制下においても市場の役割を積極的に評価する見解もありうる。神戸大学経済学部の故・置塩信雄教授は以前に、本来の市場メカニズムは、国民全体で最適な商品の数量と価格を決定する仕組みであって、それは民主主義的な投票制度に類似しているという意味のことを指摘された。

 確かに、売れないものは国民から支持されていないのだから、市場から退出せざるをえない。あらゆる生産活動から生まれた商品やサービスが、市場という国民投票の洗礼を受けて取捨選択される。企業活動も同様であり、国民から支持されない企業は人も集まらないし、取引も減少する。その結果、廃業しかない。消費者としての国民が経済活動に大きな影響を及ぼしている。

 このような観点から市場メカニズムを把握すれば、経済活動全体が国民全体によって市場を通して決定されていることを意味する。経済活動を国民全体が決定するということは、経済活動を国民が支配=所有していると言うことである。経済を国民全体が所有するということは、あるべき社会主義の理想の姿ではないのか。

 これは単純化しすぎる議論である。次の問題は、そういった「市場」をより詳細に規定しなければならない。少なくとも経済学でいう「完全競争市場」の条件とは同じでない。国民が経済活動を決定できるための市場は、新しい概念である。

 社会主義といえば、中央集権的な官僚主義の共産党独裁体制を連想するのだが、そのような体制の失敗はソ連・東欧の崩壊によって明らかである。それでは現代の社会主義をどう考えるか。ベトナムや中国の共産党は政権党であるし、日本にも共産党は現存している。今さら失敗が明白になったソ連・東欧型社会主義を復活させるというような復古主義・時代錯誤の方針を彼らが保持しているようには思われない。そのような方針や政策は国民や世界から支持されないからである。それでは、その社会主義像はどのようなものなのか。

 以上、ベトナム株式投資のリスクを検討する場合、社会主義を志向する共産党政権下での株式市場であるということが、最大のリスクであると指摘できる。どのような社会主義を目標にするのか前例がないからである。たとえばタイやカンボジアなら、少なくともこれまでの資本主義国の経済発展が想起できるのであるが、ベトナムは必ずしもそうではない。

 ただし、そのリスクは予想可能である。少なくとも私の知る限り、ベトナムについて言えば、政府は、国民生活の改善や保護を優先している。この観点から、ベトナム株式市場について何らかの規制の発動があっても不思議でない。それは日本でも同様であって、大きな規制緩和の潮流がありながら、国民生活を保護する法律まで緩和することには強い抵抗がある。ベトナムも同様である。

 常に、ベトナム国民に与える影響に注意しながら、株式市場の動向を観察する。これが、ベトナム株式市場における「リスク管理」の要点であると思う。

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