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2007年2月24日 (土)

「証券民主化運動」の経緯と理念(2):日本からベトナムへの教訓

 「証券の民主化」という言葉は、GHQの言う「経済の民主化」の応用であるが、大蔵省も自ら使用していた。そのほかに新聞では「株式の民衆化」という言葉も登場した(小林和子、前掲書、p.69)。

 「証券協会全国連合会は、昭和22年10月半ばに委員会を開催し、「証券民主化運動実施要項」を決議した。---(略)---運動の趣旨は、次のように書かれている」(p.69)。

 「日本再建の目標は経済の民主化であり、経済の民主化は証券の民主化によって初めて達成される
 今後放出される株式は莫大な数量に上り、経済復興のため新規証券の発行に待たねばならぬ資金も亦巨額に上ることが予想される。この要請に応える為には「国民一人一人が株主に」なることが理想であり、これを合言葉として株式に関する全国的一大啓蒙運動を展開し、日本経済の速かなる安定に寄与することを期するものである」(pp.69~70)。

 この証券民主化運動に、「とりわけ経済団体連合会は協力的であった」(p.70)が、労働者側の代表が、全国の統一団体である証券民主化委員会に加わることはなかった。全国7地区に設置された委員会の活動は、次の通りであった。①大都市で証券民主化促進大会の開催、②ラジオ放送、③新聞雑誌広告、④ポスターや宣伝パンフによる広告、⑤講演会・座談会の開催。このほかに各地区では、⑥立て看板、⑦アナウンス広告等の街頭宣伝、⑧移動展覧会、⑨株式祭(一種の演芸大会)、⑩投資相談所の設置、⑪株式民主化の論文・標語等の懸賞募集(p.71)。

 昭和22年当時にテレビはなかったが、以上のように考えられるすべての宣伝媒体が活用された。「証券民主化促進全国大会の折には「産業の民主化」という映画が上映され、後に株式民主化の映画も作られた。政府のお声がかりであるから、NHKでも証券民主化の宣伝を流した。後にも先にもNHKの行った宣伝放送はこれだけだといわれる」(p.71)。

 昭和23年11月には、「知識の普及から一歩進めて直接に証券投資を推進する、証券投資普及運動が実施された。この時には証券を買った人に「株式くじ」が発行され、株式祭で抽選が行われたりもした。有名株券そのものが賞品となるラッキー・カードもあった」(p.72)。

 証券民主化運動の標語には、「国民の一人一人が株主に」があるが、そのほかに次のようなものがあった(pp.72j~73。一部省略)。
 ① 明るい再建、正しい投資
 ② 挙って株主、揃って再建
 ③ 我等の産業、我等が株主
 ④ みんなが株主、栄える日本
 ⑤ 証券で貯蓄だ、利殖だ、再建だ
 ⑥ 今日からは僕も株主、明るい職場
 ⑦ 行きわたる証券、晴れわたる日本
 ⑧ 手に手に証券、日に日に再建
 ⑨ ピース一つで東京電力の株一つ
 ⑩ これだけ買へば充分、優秀投資株数種一組の格安提供――五万円で買へる宝船
 ⑪ 株式は春風に乗って
 ⑫ 先は明るい――此の低迷期こそ株式の買入時です
 ⑬ 爽やかな夏きたる!新しい証券投資は新しい店で
 ⑭ 金か物か株か?
 ⑮ 秋の収穫を株式で
 ⑯ 株式は利潤証券として買えます
 ⑰ 『タンス』株券時代。タンス預金追放
 ⑱ 越年は株式を手に

 以上の赤字は、ベトナムでも即座に利用できそうな標語である。⑨については、ピースはベトナムにはないが、次のように改訂すれば、ベトナムでも使用できる。ビール1本で、株主になれる。これは、ロータス証券投資ファンド運用管理会社のソン会長が述べた言葉である。これは昨年の今頃の話だ。ベトナムでも日本でも、株式市場の高揚期には同じ発想が生まれる。

 以上のような証券民主化運動は昭和25年頃まで続いたが、その後は株式市場は沈滞した。戦後インフレーションなどで苦しめられた一般国民が、本格的に株式市場に参入する余裕はなかったと考えられる。「証券民主化が投資家のためになったかどうかは疑問だといえるが、とにもかくにも株式所有構造を根底から変化させ、証券業者の営業姿勢を変えさせたことは確かであろう。戦前は玄人と半玄人が大半であった株式市場に、素人で資力の小さい、多数の投資家がどっと参加するようになったのである」(pp.74~75)。

 当時の日本では考慮されなかったが、ベトナムでは労働組合が株式普及運動に積極的に関与して当然である。さらに従業員持株会の発展が積極的に宣伝されてもよい。また先に紹介した国家持株会社とでも言うべきSCIC(The State Capital Investment Corporation:国家資本投資会社)が、こういった運動を展開する役割を担ってもよい。日本で全国的に展開された株式民主化運動は、ベトナムに導入される価値があると私は考えている。

 一般ベトナムの大衆株主が増大しなければ、外国投資ファンドの売却時の「受け皿」がなくなる。また、外国人投資家と外国投資ファンドのマネーゲーム化した株式市場をベトナム政府は、けっして望んでいないだろう。このように考えれば、株式民主化運動は、ベトナム政府と連携して外国投資ファンド会社が推進するべきなのである。このようにして、外国投資ファンド会社はベトナムに対して利益還元しなければならない。それが、ベトナムで利益を獲得した外国投資ファンド企業の「社会的責任」であると言っても過言ではない。

 私は、ロータス証券投資ファンド運用管理会社の顧問として、このような提案をベトナム政府に対して指摘したい。さらに、3月27日に開催予定のハノイ・VJCCにおける株式投資の講演で、このことを広くベトナムの人々に直接に訴えたい。

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