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2006年11月 6日 (月)

母校ベトナム人留学生の活躍:研究報告の注目点(2)

 神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程のベトナム人留学生2名の報告は興味深かった。
 Nguyen Van Thanh, Theoretical and Practical Proposals for Policyholder Protection in Vietnam Insurance Industry(グエン=ヴァン=タイン「ベトナム保険産業における保険契約者保護のための理論的・実践的提言」)。
 Masayuki Maruyama and Le Viet Trung, An Economic Model of Fresh Food Shopping Frequency(丸山雅明・レ=ヴィエット=チュン「生鮮食品購買頻度の経済モデル」)。

 タイン氏は保険論を専攻しており、ベトナム保険業に関する制度的研究。チュン氏は、指導教授の丸山教授との共同論文であり、ハノイの消費者行動の実証分析である。

 ベトナムの保険業といえば、国有企業バオベトが有名。近い将来に株式会社化すると言われているし、バオベト証券をグループ企業として所有している。保険業は1996年にバオベト1社から始まり、現在は外資系企業を含めて8社が操業している。最近では、第一生命が駐在員事務所をハノイに設置したと聞いている。

 タイン氏の報告によれば、ベトナムでは未だ保険契約者が少数であるために「保険契約者保護基金」が設置されていない。2020年までに創設が望まれると言う。これは当然であろう。

 私見では、保険契約金が、どのように運用されているかに興味がある。機関投資家としての保険会社の投資行動の実態調査が望まれる。また、その経営実態についても踏み込んだ分析が必要である。なぜならプルーデンシャルなど世界的な大手外資系生保のベトナム参入は、ベトナム経済全体に影響を与えないはずがないからである。

 チュン氏の報告は、この研究集会「VJSE KOBE 2006」の最後を飾り、午後7時過ぎから始まった。ハノイの消費者にアンケート調査を実施し、そのデータを数理モデルに当てはめた実証研究が報告された。生鮮食品の買い物頻度(1週間に買い物に行く回数)が多くなる要因は、鮮度が優先され、家から店の距離が近く、子どもの数が多く、女性であることがわかった。

 通常、冷蔵庫を所有しない人は、生鮮食品の購買頻度が上昇すると考えられるが、それは有意な結果ではなかった。私見では、身近に安価に外食でき、野菜や果物を「おしん」と呼ばれる女性が行商に来る環境があれば、冷蔵庫の用途は、食材の保存ではなく、余った料理の保存に重点があるのかもしれない。したがって冷蔵庫の有無は、食材の購入に関係ないと解釈できる。

  いずれも独創性ある内容で、さすがに博士課程の学生だ。日本に留学した成果がベトナムで現実に活用されることが期待される。タイン氏の論文は、ベトナム財務省に直ちに提言できそうだし、チュン氏の分析モデルは、これまでに紹介したベトナムのスーパーマーケットやコンビニ(G7マート)の店舗展開の市場調査に活用できる。

 研究のための研究ではなく、換言すれば、学位取得のためだけの研究ではなく、研究成果の応用と実践を志向した研究体制を考える段階にベトナムは来ている。日本での研究成果がベトナムに還元される仕組み・仕掛け・制度が必要だ。このような対策についても調査と検討が求められる。

 以上、母校でのベトナム人留学生の活躍は私にとって二重に喜ばしい。久しぶりに大いに刺激を受けた学会であった。 

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