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2006年11月24日 (金)

JICAベトナム人ビジネス研修の印象:熱心な受講生の不安

 今日は、午前9時から午後3時30分まで、大阪・茨木市にあるJICA(国際協力機構)大阪センターにおいて、VJCC(ベトナム日本協力センター)ビジネスコース受講生の中から選抜されたベトナム人研修生に対する講師を務めた。

 このVJCCは、ハノイとホーチミン市の貿易大学の敷地内に立地している。それぞれのセンターから5名・合計10名が研修生として11月12日~25日に来日し、大阪府下の中小企業を中心に視察・見学した。

 私の仕事は、11月14日(火)に各受講生の研修課題について確認・助言し、その後の本日、それぞれの成果報告に対してコメントまたは補足説明するという内容である。

 ベトナムでは、ISO(国際標準化機構)9001の取得によって、その会社の品質改善が実施されていると一般にみなされている。ただし実際には、そのISO取得を指導するためのベトナム現地のコンサルティング会社があり、その指示に従っていれば、ISOが取得できる仕組みになっている。いわば、外部からの指導による品質改善である。

 果たして、これで品質改善が持続できるのか? 品質改善の自発的な運動が発展するのか? 品質改善に対する従業員の意識を向上させるために、5S(整理・清掃・整頓・清潔・躾け)の実施が望ましいと私は強調した。5S実施は手段であり、その本来の目的は、従業員の意識改革である。それができれば、5Sは持続的な品質改善の運動の発展に貢献する。

 ISOを取得できても、5Sを実施できない多数のベトナム企業がある。それは、管理者と従業員が全社的に相互に議論していないからである。これらの相互議論に基づいた納得と合意が、継続した5S実施において不可欠である。私の強調点は、「ベトナムに帰って、すぐに5Sを実施させる」と簡単に言わないことである。「実施させる」のでは長続きしない。議論・納得・合意が5Sの基本である。

 以上の5S導入について、研修の最初でも最後でも私は強調した。また印象に残った質問は、「これからのベトナムの中小零細企業は、どのように生き残っていけばよいか?」ということであった。これは、どのようなベトナム企業にも共通した不安である。

 私は2点を指摘した。第1は、危機感を従業員と共有することである。「まあ何とかなる」という意識では、WTO加盟後の激化した競争を生き残れない。危機感をバネにして全社的に意識を変革し、コスト削減・品質改善・生産性向上に努力する。

 第2は、中小企業が一致してベトナム政府に支援・育成政策を要求することだ。日本の中小企業政策は相対的に多様で手厚いが、それは中小企業の要求運動があってこそ実現してきた。日本には大企業優先、ベトナムには国有企業優先の傾向がある。それに対して中小零細企業の育成政策の導入・充実が必要だ。このような政策を政府に実行させるためには、一定の要求運動の展開が求められる。

 このほかに様々な研修の成果が報告された。多くの研修生は、中小企業であっても日本では「企業理念」や「社是」をもっていることに感心したようである。企業理念は、その企業の将来の夢またはビジョン(=構想)である。この明確化によって、従業員の意欲や忠誠心が向上するということを私は指摘した。

 総じて、ベトナム人ビジネス人の知識と意欲は数年前に比較して飛躍的に向上している。たとえばSCM(サプライ=チェーン=マネジメント)は全員が知らないが、CRM(顧客関係管理)を既知で実践している受講生が数人いた。ベトナムのSCMは時期尚早であるが、CRMは導入の前提が整っていると考えられる。

 ベトナムの経営者・管理者に対する研修は、私にとって楽しい時間である。これまでの私の経験と思索が、少しでもベトナムの企業経営の改善に役立てば幸いである。ベトナムのおかげで私は食べさせてもらっているのだから、他方、ベトナムに貢献・協力することは当然である。

 また近い将来、今日の研修生と再会することが楽しみだ。いつものことながら、研修生に講義しながら、それと同時に研修生から私は多くのことを教えてもらっている。この意味で、このような研修における講師の機会を提供していただいた主催者のJICAおよび実施機関のIBO(大阪府外郭団体・(財)大阪ビジネス振興協会)に改めて感謝を申し上げたい。

 最後に、この研修における熱心なベトナム人の努力と健闘の成果を大いに祈念・期待したいと思う。それにしても、最近のベトナム人はお金をもっている。かつては、たとえば研修での食事代を節約するというようなベトナム人が多数であった。WTO加盟国・APEC開催国としてのベトナムの着実な発展が、こんなことからも実感できる。

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