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2006年10月14日 (土)

ベトナム政府は本気だ!!:WTO加盟直前に知的所有権保護に取り組む

 インターネット経由で簡単にベトナム情報を日本語で読みたい。このサービスを最初に提供したのは、私の知る限り、ベトナム人が経営しているFUJINET社の『ベトナムニュース』だ。数年前にホーチミン市の同社を訪問した。10台ほどのパソコンを前にして、ベトナム人がベトナム語のニュース記事を日本語に翻訳していた。フォン社長は30歳代。流暢な日本語が印象深かった。

 さて、この『ベトナムニュース』でも紹介されたベトナムの有力紙『TUOI TRE』(2006年10月9日、p.2)の報道によれば、ハノイ郊外の大宇ハネル社が、10億ドン(約700万円)相当額の違法ソフトウェアを自社のパソコンにインストールしていて摘発された。これらは、マイクロソフト社ウィンドウズなどのソフトが中心であり、公安省「ハイテク犯罪防止機関」と協力して情報文化省が強制捜査した。

 以下では、このニュースについて解説してみよう。私にとっては、個人的に感慨深いニュースである。

 日本でも最近まで、こういった著作権違反の摘発がニュースになっていた。WTO加盟(予定)国として、ベトナムでも同様に違反が摘発されている実績を国内外にアピールする。これは重要だ。

 しかし、ハノイやホーチミン市の多数のコピー(PHOTO COPY)店を訪れれば、多数の書籍がコピー製本されている。DVD映画のコピー店もある。WTO加盟国というなら、こういう著作権違反を取り締まる必要がある。それは政府も理解しているが、それをやってしまうと、国民の反発を受けることが必至だ。広く普及した違法コピーの禁止を即座に強化すれば、国民の金銭的な負担増を強いる。貧しい学生が参考書をコピーして熱心に勉強する。それを強制的に止めさせることはできない。こういう論理や心情がベトナムでは機能している。国民の所得上昇にともなって、やむにやまれぬ違法行為が減少する。これに期待したい。

 次に注目されることは、摘発された企業が「大宇ハネル」であり、その対象となったソフトが「マイクロソフト」社製ということだ。

 「大宇ハネル」と言えば、第1次ベトナム投資ブーム(1995年前後)時代の「寵児」であった。この時期は、韓国の大宇財閥がベトナム投資を多角的に展開しており、ハノイ市傘下の電機製造会社ハネル社と合弁で「大宇ハネル」社が設立された。この当時の大宇財閥のベトナムにおける積極投資の実績は、今でも名前が残されているハノイの「大宇ホテル」を見ればよい。大宇財閥の総帥・金宇中は、その後の粉飾決算や不正蓄財で訴追され海外逃亡を続けていた。その潜伏先はベトナムであった。

 個人的な想い出として、ハノイからの深夜便で2005年6月13日に彼が韓国に帰国した時、同じ時間帯に同じ空港で私は関空までの帰国の途につくところであった。確かテレビで帰国が報道され、空港で彼がいないか見渡した。

 大宇財閥とハノイ市は親密な関係であったが、大宇財閥の解体に伴って、ハノイ市において住友商事の存在感が増した。ベトナムにおける大宇系企業は、大宇電子・大宇GMとして存続している。しかし「タンロン工業団地」の開発と成功は、ハノイ市の協力パートナーが大宇から住友に移行したことを実感させた。今回の事件は、まさに大宇の凋落を決定的に示している。

 他方、本年4月にマイクロソフト社の創業者ビル=ゲイツは、政府首脳を始めハノイ工科大学やFPT社(同社はソフト開発会社。日本語とITを教育する大学を最近開設)を訪問・会談した。ベトナムと米国の通商関係の発展、さらにベトナムIT産業の発展を考えれば、マイクロソフト社との関係を最重視することは、ベトナム政府の中では一致した見解であろう。同社の著作権違反を摘発するのは当然だ。

 もっとも、ベトナムで違法ソフトを使用している企業は多数ある。かつてベトナムでは「ウィンドウズ2001」が販売されていたというような「笑い話」があった。「ウィンドウズ2000」のコピー製品である。そういった企業を摘発しないで、「大宇ハネル」が対象となる。これは、前述のように大宇の存在感が軽くなったと同時に、政治的な意図があるようにも考えられる。つまり、ハノイ市に対する摘発という意味もあるからだ。

 さらに、今まで以上に知的所有権の保護が問題にされるようになると、情報文化省が外国企業に対して眼を光らせ始めることも予想される。計画投資省・工業省・商業省・財務省に比べて、日本企業と関係が薄かった同省の動向にも注意しなければならないだろう。今回の事件は、そういった予告・警告を意味しているのかもしれない。

 以上の解説は私見である。どのような経緯で実際には摘発が行われたのか。その検証は今後の課題である。

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