林和人『香港大富豪のお金儲け:7つの鉄則』幻冬舎、2006年10月を読む
この著書は、おそらくベストセラー書籍の上位に入るだろう。そう思う理由を以下で述べる。
本書は、簡単に言えば、「こうして私は金持ちになった」という話である。この種の本は通常、自慢話や説教が多く、綺麗ごとで嫌みな印象を受けることがある。しかし、そう感じさせないところが本書の最大の魅力だ。
香港の大富豪を先生とすれば、著者の林氏と同様に読者も生徒になれる。このような気分にさせる率直な語り口だ。ちょうど先輩が新入生に大学生活を指導・助言する感じがする。
この場合の「大学」とは、「高校」と違って自由だが、自主性と自己責任が必要とされる環境のことだ。高校の勉強が、就労所得を獲得する目的であるとすれば、大学は、大富豪になるために不労所得の獲得を勉強する場所である。著者は、このガイダンス役を親切に果たしてくれている。
私は、著者の林和人・ユナイテッドワールド証券会長とベトナムのハノイでお目にかかったことがある。それ以前に大阪でお会いしているので、2回目だ。本書の中でも紹介されているベトナム株式投資について、私と共通の接点があったからだ。さらに林氏の出身が大阪府豊中市。私が隣の箕面市。同じ関西のご近所ということもあり、初対面から話は弾んだ。
特に、香港のトップ証券マンだった林氏から、「営業マンとして十分やっていけますよ」と指摘されて、私は正直に言って嬉しかった。お世辞もあるのだろうが、自分自身のビジネス姿勢に自信がもてた気がした。ベトナム人の要人に対して、確かに私はやや押しの強い交渉を笑顔でやっちゃった!!のだ。
少なくともベトナムに関して私は林氏よりも詳しいだろうが、ビジネスに関しては林氏が大先輩だ。この時の私の気分は、大学教授ではなく、新人の商社マンのようであった。
ここでは、本書の「お金儲け:7つの鉄則」を個々に紹介しないが、それに付け加えるとすれば、お金の使い方に注意するということだろう。
日本では就労所得を尊び、不労所得を卑しく考える傾向が残っている。それは不労所得の使途が、これまで一般に好ましく思われなかったからだと考えられる。このブログでも「ホリエモン事件」に関連して述べたが、しばしば不労所得は「あぶく銭」として遊興三昧に使用され、それが世間のねたみや嫉妬や不快感を高める。
林氏は、就労所得も不労所得も同じお金と言われている。お金に貴賎はない。これは当然だ。ただし林氏は、お兄様のご不幸を契機にして、お金の使途について強く反省をされた。この体験が、ホリエモン的な「成金趣味」を感じさせない林氏の謙虚さの秘密なのであろう。こういった具体的な逸話の紹介も、林氏を身近な先輩のように感じさせてくれるし、本書の魅力となっている。
数億円のお金儲けをしたい人に必読の書であるが、ただそれだけではなく、人間的に成長したい人にも本書を勧めたい。林氏は、けっして楽してお金を儲けることを教えていない。「人生にはハードワークの時期が必要」と明言している。お金は楽して儲からない。お金があって、人間的にも立派だ。こういう目標や夢をもつ人にぜひ読んでほしい。
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