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2006年9月25日 (月)

ベトナムの仕事:多様な側面から人間が見えてくる!

 ベトナムで仕事をする場合、いくつかの側面を私はもっている。大学教員として学生を引率する。この場合は教育者だ。ベトナム企業を訪問してWTO加盟の影響を調査する。これは研究者。日越経済交流センターの副理事長として投資相談の企業と一緒にベトナム企業を訪問する。これはセンター会員向けのサービスの一環でボランティア活動。さらに弊社・合同会社TETの仕事として、ベトナム投資・貿易に直接関係する。これは企業経営者の立場だ。

 最近のNHKラジオ「新聞を読んで」に出演したとき、その後に大学宛に手紙をいただいた。大学の先生は大学だけで教えていればよいという趣旨だ。不愉快な手紙で、もうラジオ出演はやめることにした。この番組に出演して5年以上になる。もう十分と思っていたタイミングでの不愉快な手紙だ。反論や意見を言おうにも、匿名だから連絡先も不明。ともかく失礼な手紙である。この卑劣な投稿者の見解に従えば、最初で述べたボランティア活動やビジネス活動なんて、とんでもない仕事を大学の先生がしているということになる。

 大学で仕事をしている限り、教育と研究は当然だ。その本業を忘れた仕事をしていて、大学から報酬を得るということは詐欺もしくは詐取のような話だ。標準的な本業の責務を果たした後に、それ以外は何をしてもよいという意見もあるだろう。しかし私は本業以外の仕事は、その本業をより以上に進化・深化させ、さらに拡張するという意味がなければならないと思っている。

 たとえば私の本業が理工学なら、ベトナム人に教えに行くことはあっても、ベトナムで仕事するということはないだろう。ベトナムにおいて理工系分野で学ぶことはないとは言わないが、やはりそれは先進工業国に行って勉強するのが自然だろう。

 しかし私の専門は経営学である。現実の企業経営を研究対象としている。日本企業に限っても、たとえばトヨタ・キャノン・松下・エースコック・三洋電機がベトナムで生産・販売している。これらの企業を含めてベトナムで何が問題になっていて、これから何に注意すればよいか。これらの情報は日本企業にとって貴重であるし、経営学の研究課題になりうる。

 企業経営は人間の学問とみなされる。企業組織は「人間の組織」だからである。ベトナムにおける企業経営の諸問題は、欧米の経営理論だけで分析できない。それらは基礎知識であって、「実学」として実際の経営に応用する場合は、ベトナム人という人間に対する深い認識が必要だ。

 たとえば「どうして工具を片付けないのか」。「片付けないからベトナム人はダメだ」と怒る日本人管理者がいる。「片付ける」ということは、日本の生産管理・品質管理の基礎となる5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の一つである。普通の日本人なら「片付けなさい」と指示されれば、それを説明なしに理解する。しかしベトナム人には、その重要性を教えなければならない。ちゃんと教えれば、ベトナム人はちゃんと理解して行動する。教えてもいないことを知らないからといって怒る。それはベトナム人に責任はない。そういうことを教えなかった日本人が悪いのである。

 これはベトナム人に限らず、外国人に対する対応能力が未熟な日本人の例である。相手に対する理解がないと、実際の経営現場で支障がでる。広い意味で人間を理解するためには、様々な人々との様々な側面での交流・親交が必要だ。大学で企業経営を教育研究する人間が、そういうことに関心をもつのは自然の成り行きだろう。そうでない大学教員がいるから、「学者バカ」とか「専門バカ」とか一般に呼ばれる。

 かつて経営学は、「経営学」学と呼ばれてバカにされた。それを少なくとも私は自覚・納得した。実際の企業経営を直接に学ぶ(=研究する)のではなく、アメリカやドイツの学者が作った体系や理論が含まれた「経営学」を学ぶ。学問の欧米崇拝・欧米信仰である。しかし日本の企業経営は日本で、ベトナムの企業経営はベトナムで直接に研究するのが当然だ。普遍的な理論は重要だが、万能ではない。

 以上のような意味で、ベトナムのビジネスを研究し、ビジネスで成功するためには、ベトナム人を理解することが前提だ。だから、これまでのブログでも「100%ベトナム人」とか、「60%ベトナム人」と書いてきた。この意味は、自分が100%「ベトナム人化」するという意味もあるが、相手のベトナム人を100%理解するということでもある。この理解度は、長くベトナムに住んでいるから高まるというものでもない。本人の意識=心構えに依存する。

 経営理論は本を読めばよい。しかし人間理解は直接の面会を経験しなければならない。このように私は考えて、海外に出張している。だからこそ、貪欲なまでにも人に会うのかもしれない。もっともっと時間を取って、もっともっと多くの人々に会いたい。早くベトナムに帰りたい。最近は、こんな気持ちにもなる。

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