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2006年9月24日 (日)

『投資の楽園ベトナム』を信じてよいか:将来のリスクを検討する

 これまで私はベトナムの投資や貿易について、その推進を基本的な立場として議論してきた。

 弊社・合同会社TETの定款の目的の中にも「直接投資・株式投資そして貿易の促進」が含まれている。しかし客観的に見て、ベトナムの将来に不安がないかと言えば、必ずしも全面的に否定できない。ベトナムで発生が予想されるリスクを想定しておくことは、ベトナムビジネスの展開において重要である。

 この夏の訪越でいくつか気がついたことがあった。それは次のような点である。

 1.政府の改革が遅いとベトナム人自身が不安と不満を高めている。

 これまでベトナム政府の経済改革のスピードは、ステップ=バイ=ステップ。この漸進的な改革は、日本企業から見れば、もどかしさも感じさせたが、ベトナム社会の安定を維持するという点からは納得できた。しかしWTO加盟を前にして、政府の改革スピードの遅延が、日本など外国企業からではなくベトナム国内企業から聞かされることがある。
 WTO加盟を前にして、民間企業は期待と緊張が高まっている。米国資本が参入してくる。ベトナムの銀行は、すべて外資系銀行になるのではないか。小売業でウォルマートが進出してくれば、国内小売市場はどうなるのか。民間企業のみならず一般国民にも不安が高まっている。
 これに対して、ベトナム政府は十分に対応できているのか。外国資本に対して一定の歯止めをかけるような規制が考慮されるべきである。たとえば小売業で言えば、日本の「大規模小売店舗立地法」といった法律があってもよい。これは、日本ではジャスコ・イトーヨーカ堂など流通大手企業からは評判が悪い法律であるが、ベトナムでは、こういった法律は外資企業を結果的に規制することになる。
 こういった法律を用意しておかないと、いわゆるベトナムの小売業からの反発を政府は受けることになるかもしれない。

 2.政府の汚職・贈収賄に対して国民の不満は、かつてないほどに急増している。

 ある日本人が公安(=警察)に少しばかりの「心付け」を渡そうとすると、その日本人の知り合いのベトナム人が「そんなもの必要ない」と言う。円滑なつきあいのために日本人が払うお金に対して、ベトナム人が不要というようなことは、あまり以前は聞かなかった。
 これを防止するためには、賄賂を贈る側も厳罰にする必要があるだろう。ちょうど売春を防止するためには買春も同時に取り締まることと同じである。
 いずれにせよ、汚職防止に政府が本気にならないと、国民の不満が増大することは確実である。

 3.所得格差の是正に真剣に取り組まないと、政府批判の声は高まるだろう。

 不動産投資・株式投資などベトナム国内市場は活況である。さらに、すでに指摘したように越僑からの送金は40億ドルに達し、それらが消費を刺激している。高税率であるにもかかわらず、乗用車の購入も活発である。高税率は個人所有の場合であり、社用車であるなら税率は高くないという抜け道もあるが、自動車市場は好調と言える。
 このような大都市部に比べて農村部・山岳部の経済発展は遅延していると言われている。事実、ベトナム政府は地方都市の経済成長を重点的に推進する政策を提起している。このような政策の実施が有効に機能しないと、国民の不安は高まる。
 さらに都市部の中でも、農村部や山岳部から出稼ぎに出てきている青年層の不満が高まっている。都市部において毎年派手になる生活の中で、働いても働いても生活が向上しない不満は政府に向けられる場合がある。

 すべての国で、高度経済成長とともに民主化運動の高揚があった。日本の場合、「安保反対」という政治運動の後に「高度経済成長」の時代を迎え、その後に「公害反対」運動が発生した。それにもかかわらず、自民党は政権を維持してきた。

 韓国の高度経済成長は「漢江の奇跡」とまで言われたが、1988年のソウルオリンピック以降の民主化運動の進展は、高賃金をもたらし、それは「民主化のコスト」とまで言われた。その10年後の「IMF危機」を経て、さらに韓国の民主化は進展し盧武鉉政権を誕生させた。

 このように通常、経済成長に伴って政治運動が高揚し、民主化も進展する。果たしてベトナムは、どのような発展経路を取るのであろうか。社会主義を志向するベトナムであるからこそ、また中国の教訓を学ぶことができるベトナムであるからこそ、ベトナム流の新しい独自の発展を見せてくれるのであろうか。

 以上、政治的な不安定要因を3点指摘した。これらの動向を今後も観察するとともに、それらが杞憂であることを望みたい。また、ベトナム政府の的確な対応を期待したい。

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