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2006年9月28日 (木)

ベトナム農民の座り込み抗議:フンイエン省の土地収用

 ハノイ在住のジャーナリスト鈴木勝比古氏によれば、8月29日にハノイ中心部の国会事務局前でフンイエン省の農民数百人が座り込みをしたという。新都市計画のために省当局が土地収用することに農民が抗議したのである。

 3村4千家族が生計を立てる農地・約5百㌶の土地収用について、今年1月から交渉が始まり、そのうち約千家族が補償金額に合意し、残りの3千家族が立ち退きを拒否し、補償金額の引き上げを要求している。

 「農民の1人(女性)は「省当局は6つの法律違反を犯している。私たちはこれまで通り、自分の家に暮らし、自分の農地で生計を立てたいだけだ」と語」ったそうである。

 数百人規模の抗議運動は、ベトナムでは異例である。この出来事をどのように解釈すればよいのだろうか。ベトナム政治・社会の今後を見通すことができるかもしれない。

 なおフンイエン省は、ハノイからハイフォンに向かう国道5号線が通過している。ハノイ・ハイフォン・中国国境に近い好立地の工場建設候補地として注目されており、事実、工業団地の建設で農地が減少していることが、今年8月にドーソンに向かう途中で確認できた。

 1.公安(=警察)が弾圧するというような強硬策を当局はとっていない。民主化が進展しているとみなすことができる。
 たとえば次のような意見は先入観・偏見に基づく誤謬だ。「ベトナムは社会主義国だから強権的な政府が国民を支配している」。そもそもベトナムは社会主義国ではない。最初から間違っている。独自の「社会主義を目指す国」なのである。

 2.補償金額の引き上げを要求している背景には、最近の工業団地の建設などによる「土地成金」の発生がある。
 土地収用を機会に少しでも多額の補償金を受け取り、これからの生活を豊かにしたい。これからの生計手段を農民は失うのだから、この気持ちは当然である。
 たとえば次のような論理が働く。外国企業が開発する隣の工業団地では、池の魚について××ドン、樹木1本について××ドン、ブタ1匹について××ドンを補償した。どうして省当局は、それと同じ金額を出さないのか。金額が少なすぎる。

  3.農民の純粋な気持ちは世界に共通している。
 前述の女性農民の談話のように、農民は農業を続けたい。多額のお金をもらっても、それがなくなれば終わりだ。農業以外に仕事をしたくないし、それ以外の仕事もできない。
 これは、かつての日本の成田空港の土地収用と同じ論理だ。このように考えれば、農地収用に伴う農民の抗議運動は、工業化を進める中で世界に共通して発生するとみなされる。

 以上、この農民の抗議運動は、政府や体制を批判する表現ではない。あくまでも経済闘争と考えられる。だからこそ政府も暴力的な弾圧をしなかった。事実上の容認である。
 また、外国企業が土地収用の期間を短縮するために、補償金を高値につり上げる傾向があることも想像できる。外国企業と省当局との補償価格の相違が、抗議行動の契機になったのではないか。

 ただし、このような抗議運動が経済闘争として政府から容認されるようになれば、次第に工場におけるストライキの増加が心配される。WTO加盟によって、「ストライキは労働者の国際的な権利だ」とベトナム政府が主張すれば、進出外国企業は政府に文句を言えない。それぞれの企業の自己責任・自己解決の問題となる。

 これまでのベトナムにおけるストライキは、韓国企業や台湾企業における賃金不払いや経営者の暴力・暴言といった特種な事件が契機であった。それが今年になって、賃金上昇を要求するストライキがホーチミン市で発生した。これが全国規模で発展する可能性もある。進出外国企業は良好な労使関係に、いまから注意しておかなければならない。

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