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2006年8月16日 (水)

カンボジアの悲劇から日本が学ぶこと:トゥール=スレン集団虐殺博物館を訪問

 午前中は予定がなかったので、プノンペン市内のトゥール=スレン=ジェノサイド(集団虐殺)博物館を訪問した。この博物館は、ポルポト政権(1975年4月~1979年1月)下で拷問・虐殺が行われた場所である。それ以前は高等学校であり、その教室が収容・拷問に使用された。本来は活気あふれる教育の場所が、人間性を無視した虐殺に使用されるというのだから、それだけで気が重くなる。ここに2万人が収容され、生存者は6人というのである。

 こDsc07982れは写真展示場(フォト=ギャラリー)である。ポルポト時代の生存者の証言が、その写真とともに語られている。それぞれの人生がだれもにあり、その人生は子ども達に引き継がれていく。この自然な人間の営みが、突然の集団殺害によって断ち切られる。突発的な予期せぬ事故ではなく、かけがえのないそれぞれの人生を人間が意図的に終わらせる。これらの展示を見ていると、ポルポト政権の非道さが痛切に伝わる。次は私の家族を連れてきたいし、さらに私の学生も連れて来たい。人間と人間の関係は、本来は協力・協調・友愛のはずである。それだからこそ人類は今日まで生存・発展してきた。これに反対の出来事や事件に断固反対である。

 この博物館で最も印象深かったことは、来館の記帳書(ゲスト=ブック)に記載された次のような意味の文章である。ある韓国人の英文である。

 「これは人間のすることではない。----それにしても、ここに日本人が来ていない。日本人は戦争を後悔しているのか?」

 これは、昨日の終戦記念日に書かれた新しいコメントである。この韓国人は、ここでの拷問や虐殺の展示を見て、おそらくソウル郊外チョナンにある独立記念館を想起したのであろう。この記念館には、日本軍の韓国での残虐行為が写真やマネキン人形で紹介されおり、韓国人なら一度は訪問するという場所である。この両者が連想されると、日本人に対する嫌悪感が増幅されるも無理はない。また確かに最近の日本人観光客は、シェムリアップのアンコール寺院の遺跡を見学するが、2003年のタイ大使館襲撃事件以来、プノンペン訪問は激減していると言われている。 

 他方、別のゲスト=ブックには、日本人が「終戦記念日に訪問し、平和の重要性を痛感した」という趣旨のメッセージを記載していた。しかし残念ながら、この文章が日本語で書かれていたために、この善意の気持ちが上記の韓国人に伝わっていない。

 そこで私は、この韓国人のメッセージの下に、I am a Japanese! と書いて署名した。このことを運転手トーチさんに話したが、彼から「それは良い」と評価してもらえた。ともかくカンボジア訪問最多の観光客は韓国人である。韓国からカンボジアに直行便が飛んでいるからである。

 以上のようなことを考えれば、今こそ、政府レベルではなく国民レベルでの「草の根」の国際コミュニケーションが必要である。なぜなら日本政府が自ら靖国参拝という政治問題を発生させている時期だからである。昨日のNHK衛星放送の終戦特集番組では、中国政府が「侵略戦争を推進した一部の軍国主義勢力と日本の一般国民を区別しなければならない」と指摘して、戦後賠償を要求しなかったと放映されていた。これと同様に、政府と国民の意思が違うこともあるというメッセージを日本から世界に伝えることが重要であると思う。これが民主主義である。

 なお、上記の韓国人のメッセージの返答として、さらに、By the way, how do you think about the Vietnam war? What did the Korean Army do in Vietnam? と書くこともできた。ベトナム戦争における韓国軍の蛮行は、米国軍よりも激しかったとも言われている。しかし、あえてそれを書かなかった。日本人と韓国人がケンカしているようなことを、それ以外の外国人に知らせる必要もないだろう。そして何よりも韓国とベトナムの問題は、韓国人自身が考えるべき問題だからである。

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