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2006年6月 2日 (金)

企業の採用担当者は大学生の何を見ているか?:国分株式会社の場合

 食品卸売業界における日本のリーディングカンパニー国分株式会社小木曽泰治氏(人事総務部副部長・経営企画室副部長)から、新卒大学生の採用ポイントを伺った。それは、アビリティコンピテンスの両者をバランスよく兼ね備えた自主自立型の人材」ということである。アビリティとコンピテンスは、いずれも「能力」という意味であるが、それぞれを以下のように定義する。

 1.アビリティ(ability)とは、知識や技能のことである。通常に勉強して身につける。それは自分ひとりでも発揮できる能力である。また一般に大学で講義を受けて習得することができる。たとえばパソコンができる、英語ができる、資格を取る、経営戦略論やマーケティングを勉強したといった内容である。

 2.コンピテンス(competence)とは、社会的能力と呼ぶことができる。さまざまな経験・体験を通して身につける能力である。それは他人との関わりの中で習得され発揮される。たとえばコミュニケーション能力、リーダーシップ、協調性、向上心、積極性などと言われてきたことである。また、人に迷惑をかけないというような社会常識も含まれている。

 3.以上2つの能力が採用段階で必要であるが、アビリティは入社後の会社でも取得・向上させることができる能力である。これに対してコンピテンスを高めるのは容易でない。長期間に積み重ねた経験に基づいて体得される能力だからである。したがって採用では、コンピテンスの低い人は採用しないようにしている。それとは逆に、たとえば面接で言葉は詰まっても、学生生活が充実している学生は評価できる。大学時代にしかできない経験をしているからである。

 4.自主自立型の反対語は、他律依存型である。自主自立型の人間とは、周辺環境の変化に敏感であり、自分で判断・行動できる。自分の力不足を自覚している。給与以上の仕事をして満足感があるといったことである。

 5.以上、アビリティは勉強すること、コンピテンスは経験することである。かつてはアビリティよりもコンピテンスの高い学生が多かったが、最近はアビリティが向上しているが、コンピテンスが低下している。この両方について各学生がもっている具体的な事例が、就職活動における面接の「素材集」となりうる。私見では、自主自立性といった観点から、こういった素材を料理・味付けして、自分流のストーリーを作ることが面接の有力な対応策であると思われる。

 たとえば典型的な最近の学生は、大学で真面目に講義を受けて、その後は家の近くでバイトする。私見では、こういう学生が夏休みに、そのバイト資金を使って海外旅行やボランティア活動に自発的に参加するなどしてくれれば、自分だけの貴重な体験ができる。しかし多数の学生は、より以上にアルバイトに精を出す。やや意欲的な学生であっても親しい友人との安全で楽しい団体旅行の体験がせいぜいであるように思われる。自分だけのストーリーを作る努力を学生に期待したい。

 小木曽さんのお話を伺って、大学がなすべきビジネス教育の骨格が明示化されたようである。アビリティとコンピテンスの向上、そのために教員は直裁的な指示・指導ではなく、あくまでも学生の自発性・自立性を内面から引き出すように忍耐強く時間をかける。

 学問の道に誘うことが主要な目的であった伝統的な大学教育は、もはや過去の遺物になったのかもしれない。いや、そうではなく、その目的の達成は大学院大学に役割が委譲され、大学における学部教育の環境が変化したと考えるべきであろう。こういった環境変化に適応して進化する大学教員と、そうできなくて「化石化」する大学教員が生まれているような気がする。しかし化石であっても、それ自体は貴重な存在である。それが容認・受容されない場合、その組織は大学と呼ぶに値しないと私は思う。多様な教員から多様に学ぶことも、学生にとっては大学時代にしかできない体験だからである。

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