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2006年6月11日 (日)

ベトナム情報(14-2):国民性の魅力

 どのような仕事をベトナムでするにしても、ベトナム人と無関係というわけにはいかない。ベトナム人の従業員や幹部職員の気持ちを把握することは、日本人経営者が最初に直面する課題であろう。

 また、取引相手が信用できるか、その発言や行動は何を意味しているか、その真意は何かといった問題は、相手が日本人の場合でも難問である。ましてやベトナム人となると、判断不能になることがある。もちろん日本人であろうが、ベトナム人であろうが、徐々に相手との関係を手探りで深めながら、その信用度や認識を微調整することは共通した最善の対応であると思われる。

 そのようにベトナム人に接するとしても、最初にベトナム人に関する予備知識が必要である。それを基準にして臨機応変・柔軟に対応する。この予備知識として、樋口健夫『ベトナムの微笑み:ハノイ暮らしはこんなに面白い』平凡社新書、1999年を参考にする。以下では、それを引用・参照して列挙する。樋口氏は、三井物産ハノイ事務所に1995年から2年間滞在された。その経験に基づいて同書が執筆された。

 (1)ベトナム人の賢さ、真面目さ、粘り、器用さ、人なつっこさ、愛想のよさ。これらによってベトナムを訪問する日本人は、誰もがベトナムを好きになってしまう。ベトナム人の性格には日本人に似た点が多い。イエス・ノーを明確に言わない性格、周囲への気配りなどもベトナム人と日本人は非常に似ている(10頁)。

 (2)ベトナム人の日本人に対する信頼は非常に高い(13頁)。

 (3)国民所得が低い低いと言われているベトナムで、濃厚な気遣いは、まったくの驚天動地であったが、「なるほど、これがベトナム式の考え方なんだ。外国人たちを心からもてなすのが、ベトナム人には当然となっている」。日本で言えば、どこか関西風のもてなしに近い(56ー57頁)。

 (4)ベトナムでの人間関係を考える上でのキーポイントは、人一人ひとりが持つ運不運、精神力、よいもの悪いものなどの影響因子を、真剣に考えることだ。明らかな迷信に関しても、知的なベトナム人の一般的な考え方を聞くと、「これらは確かに迷信です。私は信じてはいません。しかし、他人への配慮から、わざわざその逆を行う必要はありませんからね」(64ー65頁)。

 (5)どこの公団でも、同じ家族のメンバーが同じ職場にたくさんいて、驚くことがある。この国の最大の特徴ネポティズム(縁故主義)がここにあるように思った(75頁)。どこの事務所でも、新規の雇用を募集すると、既雇用者の遠い親戚筋の者が応募してくる。当然ながら、募集の情報も早く伝わるのだろうが、この辺りに情実が起こってしまう(75ー76頁)。

 (6)実質的には、ハノイでも大金持ちの部類に入るだろう。しかしそんなことは絶対に言わないし、そぶりも見せない。他人のねたみを恐れている(79頁)。

 (7)ベトナム人の第一の印象は優しさと微笑みだね。この人なら一生涯つきあっていこうかという程度の友達が何人かできたね、たった一年で(80ー81頁)。

 (8)店の奥には、おばあさんが座っていたが、何が起こったのかとゆっくりと顔を出した。おばあさんの目つきも非常にシャープで、驚くほど知的な顔つきをしている(84頁)。

 (9)物を売らないで、お金だけを受け取ることは、できないという。この商人魂に、私と同僚たちは、ひどく感心してしまった(89頁)。

 (10)本当の支援は、人生を踏み出すための最小限の支援に留めることだ(99頁)。

 (11)おかしくない時に、ニコニコ、ニヤニヤしてしまう。これがネガティブ笑いだ。アジア人全般に見られる現象だと思う。ベトナム人だけでなく、日本人も同じだ。日本人もはにかみ笑いとか苦笑いとか、苦境や悲しさの中でも笑ってしまったり、叱られている最中に笑顔を見せてしまう(101頁)。

 (12)間違いを犯してしまった時、ベトナム女性は素直な謝り方に慣れていない。謝ることによって相手からの責任の追及を停止するような方法に長けていない。社会主義国では謝ってしまうことは、責任を認め、実質的な罰を受けることに合意したと理解するのだろうか。必死になって自己弁護する(106頁)。

 (13)ベトナムでは、家の格とか身分とかがきわめて厳格だから、家族の反対に遭うと、結婚もできなくなる。ちょっと美人という程度では、結婚に絶対的に有利ということでもないらしい(107頁)。

 (14)ベトナムの伝統で、外国人と年寄りに対して優遇してくれる。だからベトナムが好きになっていく(129頁)。

 (15)ベトナムの女性は、京都の女性に似ている。愛想がよいようで、えらくしっかりしている。ベトナムの男性は京都の男性に似ている。ベトナムの女性に比べると、男性は線が細い。ベトナムの女性は強烈に強いのだ。ほとんどの男が尻に敷かれていると言えるのではないだろうか(131頁)。

 (16)ベトナムに住んで、ベトナム人の性格の中に、きわめて関西風の気性を見る事がある。気配り、商売感覚、げんかつぎ、粘りなど、ひょっとすると、日本人が持っている性格の多くは、太古の昔にベトナム辺りからたどり着いた人から受け継いだものではあるまいか(162頁)。

 (17)ベトナムは補修王国なのだ。何だって修理してしまう。長い封鎖された経済の中で、捨てられたものでも直して使えるものは何だって使ってきた。それがベトナムだ(182頁)。さて、絶対の名案。ベトナムをASEAN、いやアジアの修理センター化するというのはどうだろう。まさにリサイクルの時代。ベトナム的な生活の信条が再度必要とされているのではないだろうか。

 (18)「確かに器用なんだが、どうしてか、どこかに手を抜くんだね」。もっと正確に言えば、何とかなると、「これでいいや」とあきらめて、納得してしまうことである(188頁)。

 (19)ベトナムで何かを作ってもらう場合、最も重要なことは、タイミングを見計らって、造っているところに検査に行くことだ。手遅れにならない前に、できあがってしまわない前に、ほんの微妙な「直前」のタイミングに、検査に行く。これがコツなのだ。最後の手遅れになる前で、「ここのところは、こうしてね。これはだめだよ」と指摘しておくと、見事にその部分を上手く乗り越えて、処理して、こちらの希望に一応そってちゃんと完成させてくれる(190ー191頁)。

 以上、私見については後日に述べたいと思うが、おおむね樋口氏の指摘に賛成である。

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