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2006年6月13日 (火)

ベトナム株式市場の疑問に答える:証券経済学会の質疑から

 6月10日(土)・11日(日)に証券経済学会・第65回全国大会が、埼玉県草加市の獨協大学で開催された。私は「ベトナム株式市場の現状と発展方向」という論題で報告し、丸淳子教授(武蔵大学)が司会、原田喜美枝助教授(中央大学)が討論者を担当して下さった。

 ここでは、その質疑応答を紹介する。当日に時間がなかったり、思いつかなかった回答もあるので、ここでそれを付加しておく。多数の方々からのご質問に感謝を申し上げたい。また討論者の原田先生は、かつてベトナム語を勉強されており、ベトナム滞在経験もお持ちである。年代的に言えば、私よりもベトナムでは先輩である。貴重なコメントを賜り、ここに改めて御礼を申し上げたいと思う。

 1.日本の直接投資が第2次ブームになっていると言うが、そのことと株式投資が魅力的ということとは別問題ではないか? 実物投資と金融投資の関係はどうなっているか?

 回答:当然、株式市場の発展のためには、その制度・規則の整備が必要であり、ベトナムの証券取引法は現在開会中の第9回国会で審議中である。したがって直接投資の増大が間接投資(金融投資)の増加に直接結びつかない。しかしベトナムの経済発展にとって、外国資金が有効で大きな役割を果たすことは間違いない。輸出・観光・ODA・越僑送金そして直接投資が外貨獲得の経路であったが、それに加えて証券投資(間接投資)の経路が昨年から拡大された。つまり外国人の株式所有が30%から49%に拡大されたのである。このような外貨の国内流入は、ベトナム経済発展に貢献しないはずはない。

 2.ベトナム株式市場について情報は極めて不足していると思われるが、それで安心して投資できるのか?

 回答:公表の財務データが完全に信用できないことはベトナム人のビジネスパーソンも述べている。しかし上場企業については、その信憑性はともかくとして、国際的に見て遜色ない情報公開はなされている。したがって直接の会社訪問や工場見学によって、より具体的な情報を収集することが望まれる。わずか上場銘柄は35社である。投資対象企業を訪問してみることは無理なことではない。さらに日本の『会社四季報』や『会社情報』に相当する直接取材に基づく株式情報誌がベトナムで発行されることが望ましい。

 3.国営企業の改革は本当に進んでいるのか。国営企業に対する株式投資は本当に安全なのか? 国営企業が株式を徐々に売却することで既存株主の利益は損なわれるのではないか?

 回答:国営企業の経営改革の進展度合いの評価は難しい。たとえば、日本の「ユニクロ」の委託加工の縫製を担当しているのはホーチミン市の国営企業である。この国営企業の経営者は英語も達者であり、経営感覚も優れているように思われた。またハノイの国営の機械部品製造会社は、コスト削減を怠っているように思われるし、その製品価格は市場競争的ではなかった。国営企業の経営状況や国際競争力は、一概に議論できない。ただし株式公開を進める国営企業は、ベトナム石油や輸出入銀行などの有力な大企業である。ベトナム政府は株式市場の健全育成を政策としているから、優良国営企業の上場を意図していると考えても間違いではない。

 4.中小企業の育成と株式市場の関係はどうなっているか?

 回答:ハノイの証券取引センターを中小企業向けの株式取引所にするという計画はあるが、それは未だ実現していない。中小企業向けの株式市場と言うと、株式上場基準を緩和したベンチャー企業向けの市場という印象があるが、ハノイでは国営企業のIPO株式(未上場株式)の店頭市場(OTC市場)を育成するという意図もあると聞いている。いずれにせよ、それらの発展は今後の課題である。中小企業の育成と言えば、ベンチャーファンドもしくはベンチャーキャピタルという方法も検討されてよい。

 5.ベトナムの株式を買う人と売る人はどんな人か?

 回答:ベトナム人富裕層の個人投資家、外国人個人投資家、外国投資ファンドが現在のプレーヤーと考えられる。保険会社などの機関投資家や国内外国企業の株式投資は寡聞である。討論者の原田先生から指摘があったように、2000年から株式取引所が開設され、その当初に株価が急上昇し、2001年~2003年は株価下落となった。これは、この時期に不動産価格の騰貴があったからである。株式投資か不動産投資かという選択が、ベトナム人の富裕層によってなされた。2005年に土地法が改正され、不動産価格の騰貴が収まったが、それに応じて余裕資金が株式市場に再流入し、最近の株価上昇となっている。

 6.ベトナム株式は本当に魅力的と言えるのか? そのように私は思わないが---。

 回答:株式投資にリスクは常に伴う。このリスクに対する感受性(敏感か鈍感か)によって株式投資の評価は定まる。私見では、ベトナムと日本における株式投資のリスクを比較すれば、ベトナムが低いとみなされる。わずか35銘柄の上場株式であるから、そのすべてを把握できる。すべての企業訪問も可能である。未上場株(IPO株)が上場しないというリスクも、日本よりもベトナムが低い。ベトナムは国営企業の上場を政府が後押しするからである。少なくとも私にとって、日本よりもベトナムにおいて株式投資は魅力的である。

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