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2006年5月18日 (木)

ベトナム情報(4-2):貿易の現状

 ここで、ベトナムにおける日系輸出企業の現状を紹介してみよう。ここでの輸出企業とは、製品を輸出するための目的で海外生産する企業である。なお、自社工場を所有しない輸出目的の海外生産は、委託加工生産または委託加工輸出と呼ぶ。

 第6表は、2006年1月のベトナム日系企業を輸出金額の上位から示している。輸出があって、輸入がない企業は、マブチモーター・日東電工・スミハネルである。これらは、たまたま1月に原材料の在庫があり、輸入がなかったと解釈できる。この意味で、この表だけから一般的な指摘はできないが、いくつかの仮説を提示できる。

 2004年(?)までベトナム最大の輸出企業は、富士通ベトナムであった。ハードディスクや携帯電話の基盤を生産・輸出している。創業期の川嶋修三元社長は、ベトナム投資貿易環境の改善のために、ベトナム政府との交渉で決定的に重要な役割を果たした。同氏は富士通ベトナムを離職されたが、現在もドンナイ省政府から依頼されて投資顧問をされている。

 ベトナム輸出トップ企業の地位が、この富士通ベトナムからキャノンベトナムに取って代わられた。キャノンベトナムは、インクジェットプリンターをハノイのタンロン工業団地で生産している。さらに第2工場をバクニン省に建設中である。ハノイからハイフォンに向かう国道5号線を左折し、ランソン方面に国道1号線を進み、バクニンで右折して国道18号線をファイライ方面にしばらく行けば、その右手に新工場が見える。建設・施工は大林組である。このような本格的な生産設備投資は、キャノンが、インクジェットプリンターの国際的な生産拠点としてベトナムを選択したとみなされる。

 第6表「Blog6.doc」をダウンロード

 これらの輸出上位企業の2社が、偶然にもストライキに遭遇している。いずれも違法な山猫ストであるが、その背景は相違している。キャノンの場合(2004年?)、労働者の雇用を維持する方針のために、生産量が減少すれば、それに応じて労働時間と賃金の削減が労働組合と交渉され、労使の合意があった。それにも関わらず、一部の労働者が、その合意を知らずに抗議のストライキをしたという事情がある。

 これに対して富士通の場合(2006年)、物価上昇に伴って賃金上昇を要求した一部労働者のストライキであった。これはホーチミン市周辺の韓国・台湾企業のストライキに誘発されたものである。同様のストがハノイで発生しなかったのは、ハノイ周辺に韓国・台湾企業が少ないからだという指摘もある。

 このようなストライキに対するベトナム政府の対応は迅速であった。2006年2月に最低月額賃金を626,000ドン(約39ドル)から870,000ドン(約54ドル)に39%上昇させた。これによって労働者の不満は抑制された。物価上昇に対応した最低賃金の上昇は妥当な政策である。もちろん外資系企業にとって賃金上昇は回避したいが、為替レートは傾向的なドン安であるから、ドル建てにすれば、賃金上昇の割合はそれほど大きくならない。

 たとえばカンボジアの最低賃金はドル建て45ドルである。一般にGDP水準から考えてカンボジアの賃金はベトナムより安いと認識されているが、これまで実はそうではなかった。上述のように39ドル程度であった。今回の最低賃金の改訂は、経済水準と賃金水準の格差を是正するという意味もある。(以下続く)

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