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2006年5月15日 (月)

ベトナム情報(3ー2):直接投資(続)

 JETROのハノイ所長・石渡健二郎氏によれば、日本企業がベトナムに投資する理由は次の5点である。出所:Saigon Times, YOUR FDI GUIDE, No.2, 6, February 2006, p.6.

 ①地理的な優位性がある。2つの巨大市場である中国とアセアン諸国をベトナムは結びつける。②政治的に安定している。③ほかの周辺諸国に比較して労働者の賃金は低い。④しかもベトナムの労働者は勤勉である。⑤ベトナム人の対日感情は良好である。

 以上に加えて、多数の日本企業は中国進出の代替もしくはリスクヘッジとしてベトナムをみなすようになっている。これらはJETRO調査に基づいた結果である。さらに私の知人の中小企業経営者は、ベトナム人が日本人に似ていることをベトナムの魅力として説明した。

 「宿泊ホテルでの従業員の仕事ぶりを見ていると、フロントで清掃している従業員の仕事を、その側にいた警備員が手伝っていた。自分の職務しかしない従業員が外国で多い中で、このように従業員がお互いに助け合うことができる国は珍しい。これがベトナムの魅力だ。」

 この事例は、ベトナム国民の気質の一例を示している。私の調査によれば、ベトナム人従業員の勤労意欲の源泉は、金銭的報酬よりも「働きがい」などの精神的満足であるという結果がある。参考:Comparative Characteristics of Vietnamese Workers among State-owned, Japanese and Korean Companies in Vietnam: Part I Part II1,『流通科学大学論集』第12巻第3号(20043月)、第13巻第3号(20053月)。これは、少なくともベトナム人の精神文化が、個人主義・利己主義だけではないことを示している。私は、儒教精神が日本以上に色濃くベトナムに残っていると考えているが、その儒教精神の内容の明確化は議論の余地がある。しかし他の東南アジア諸国と違って儒教文化がベトナムの特異性であるという指摘は間違いない。

 第3表は、昨年の国別の直接投資を示している。投資金額が多い順に、シンガポール・台湾・日本・韓国・香港となっている。ここで注目すべきは、投資プロジェクトの資本総額と実施資本額との相違である。前者を後者で除した割合は、①シンガポール:47.6%、②台湾:37.1%、③日本:72.9%、④韓国:46.7%、⑤香港:53.9%である。この投資実施率が低いということは、プロジェクトを申請だけしたが、実際には未着工であることを意味している。この場合、認可済みのプロジェクトを後に転売するという投機的な目的も含まれている。

 投資プロジェクトの実施総額で日本は最大であり、その実施率も高い。さらに日本のODA供与も最大である。これらのことは、ベトナムにおける日本に対する存在感・信頼感を醸成している。参照:「blog34.doc」をダウンロード

 第3表によれば、いわゆるタックスヘブンの国(地域)が含まれている。英領バージン諸島、ケイマン諸島、バーミューダである。これらの国からの投資主体は、主に投資運用会社など現地ペーパーカンパニーと思われる。たとえば日本から直接ベトナムに投資して利益が出れば、それを正規に日本に送金できる。その後、日本で最初に法人課税され、さらに利益配分の段階で各投資家に個人課税もされる。このような二重課税を回避して節税するために、法人税のかからないタックスヘブンの国(地域)を経由させて外国投資する場合が多い。ベトナム政府もこれが国内の不正取引に利用されないか注目している。

 以上、直接投資の現状を概観した。その経年的・産業別の資料によって、さらなる分析が可能であるが、それは別の機会に譲る。 

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