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2006年5月24日 (水)

ベトナム情報(7):労働人口と就学率

 第7表(「ADB7.rtf」をダウンロード )年齢別の人口において、2003年の0~14歳人口を見れば、ベトナム(31%)は中国(23%)よりも8ポイント高く、労働力の供給が今後も継続して期待できる。これに対して中国はタイと同じ水準である。中国において若年労働者が不足するという事態が、近い将来に予想される。これは賃金上昇をもたらす。

 さらに労働人口とみなされる15~64歳の人口について、1990年から2003年の変化は、ベトナムで9ポイント上昇(56%から64%)であるが、中国は3ポイント上昇(67%から70%)にすぎない。中国よりも大きなベトナムの上昇は、今後も継続するとみなされる。このような労働人口の推移は、ベトナムを生産拠点とすることの長期的な優位性を明示している。

 第7表によれば、中等教育就学率では男子・女子ともに、高等教育就学率では女子について、ベトナムが中国よりも高い数値になっている。この数値は基礎学力の習得者の比率という意味であり、その高低が国民の優秀性を示すものではない。また教育内容の水準を考慮していない。ただし政府および国民の教育に対する意欲や尊重の程度、大学以上の高等教育を支持する「すそ野」の広がりを示す数値としての意義をもっている。

 なお、「ベトナムでは特に女性労働者が勤勉で優秀である」と一般に指摘されている。この「勤勉で優秀」という評価には、忍耐力・誠実性・判断力など多様な要素が含まれていると思われる。このような指摘の背景には、ベトナムの長い戦争時代に男性が従軍している間、女性が家族と生活を守り、さらに女性も男性に混じって軍務に服した歴史が存在している。これらの世代の女性を母親として育った女性は、やはり「しっかりしている」と想像することができる。

 第7表で注目されることは、ラオスやカンボジアにおける低い就学率である。単純に言って、日本の義務教育に相当する中等教育を過半数の子どもが受けていない。これらの国々に対する教育面での国際的な支援強化の必要性が指摘できる。

 ラオスやカンボジアの小学校の建設費用は日本円で200~500万円と言われている。それほど費用は巨額でないので、日本の民間団体やNGO・NPOが建設費用を負担する事例も多い。これらの善意は高く評価されなければならない。しかし校舎竣工後の教材の提供や教師の待遇改善までの持続的な支援は不十分であるし、実際に不可能とみなされる。それらは、政府の教育政策に含まれる問題だからである。ここからは、政府間レベルのODA資金などに基づく公的支援が求められる。

 中国とベトナムのリテラシー(読み書き能力)を比較すれば、男女ともに15~24歳の若年層では中国がベトナムよりも高く、15歳以上の壮年・高齢者を含めた数値はベトナムが中国よりも高い。特にベトナム女性のリテラシーが91%であるのに対して、中国は78%である。戦時下にもかかわらず長期に渡って性別に相違なくベトナムの教育制度が健在であったことが、このような数値に表出しているとみなされる。

 なお、これまでベトナム人のリテラシーが高いと指摘されてきたが、 すべての項目においてタイはベトナムよりも高い数値を示している。この点で、ベトナムは過大評価されてきた。また、今後の国際ビジネス環境を考えれば、自国語リテラシーよりも英語リテラシーの向上が世界に共通した課題になるであろう。この程度を示すデータを渉猟中であるが、英語リテラシーとなれば、ベトナムに対して日本は偉そうにできないように思われる。

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