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2006年5月14日 (日)

ベトナム情報(3ー1):直接投資

 ベトナムに対する日本の直接投資(FDI)が好調である。ベトナム計画投資省と国際機関アセアンセンターが主催した2006年2月の「ベトナム投資セミナー」において講演した市川匡四郎・JICA専門家によれば、日本の対ベトナム投資は2005年に件数と投資実行額の双方で過去最高を記録した。まさに「第2次ベトナム投資ブーム」の到来である。

 「第1次ベトナム投資ブーム」は、米国の対ベトナム経済制裁が撤廃された1994年の前後と考えられる。当時は、トヨタ・ホンダ・ソニー・松下電器・三洋電機などの大手企業が進出した。大手企業の投資が一巡した後、中小企業の進出が期待されたが、それが大きな動きにはならなかった。今日、大手企業の工場増設が続き、それに伴って部品製造の中小企業の進出が顕著になってきた。

 このような背景には、国際環境に適応しようとするベトナムの努力がある。ベトナムはアセアン加盟を果たし、本年11月にはAPECサミットをハノイで開催するまでになったのである。またWTO加盟は時間の問題とみなされている。

私見では、第1次と第2次の投資ブームの相違は、次のような点である。

 (1)今日では、外国企業や市場経済についてベトナム政府の理解が深まった。当時の政府は「進出させてやる」という態度であったが、今日では「進出していただく」という意識に徐々に変わってきている。より具体的には、外国資本100%の投資も可能となった。英語を理解する人材が豊富になった。投資認可も簡易化・短期化された。これらの投資環境の改善には、ホーチミン市の日系企業と市当局者との間で始まった「日越投資・貿易ワーキンググループ」が大きな役割を果たしてきた。その成果が「日越共同イニシアティブ」や「日越投資協定」の締結となって今日に至っている。

 (2)当時進出した富士通コンピュータ・松下電器・マブチモーター・トヨタ・ホンダ・キャノンなどが、今日では成功企業となっている。これらの企業が蓄積してきた経営ノウハウが今日では広く活用できる。それに伴って、これらの大企業に部品供給する企業がベトナム進出をするようになってきている

 (3)日本料理店がホーチミン市のみならずハノイでも急増し、日本人学校も整備・改装されている。JICAによるODA支援は道路・橋梁・港湾のみならず、ビジネス・日本語・ITの教育にまで及んでいる。さらに多数の各層のベトナム人を日本研修のために招聘してきた。ベトナムと日本の関係は経済的・人的に発展・深化している。

 (4)ベトナム国内市場の発展は、ホテル・タクシー・レストラン・アパートなどを増加させた。現地の生活環境は驚異的に改善された。これまで輸出加工型企業が成功すると言われてきたが、即席麺の製造販売をするエースコックの成功事例は、国内市場志向企業でもベトナム市場で十分に健闘できることを証明した。

 (5)第1次ブームが大手企業の先行進出であったが、第2次ブームは中小・中堅企業が投資している。このことは、1件当たりの投資金額が第1次に比べて第2次が小さいことが示している。さらにトヨタ・ホンダ・キャノン・三洋電機・JUKI・日本酸素など第1次ブームで進出した大手企業の追加投資も含まれている。

 これらの大手企業の中には松下電器のように南北統一以前からベトナム進出していた企業も含まれており、純粋に初めてのベトナム進出というわけではなかった。南北統一前の南部ベトナムでの活動経験をもっていたのである。これらの大手企業は資金的・人材的にも体力があるために、ベトナム側の政策不備・政策矛盾や1998年「アジア通貨危機」後の成長低迷期にも耐えることができた。

 この「忍耐の時期」に進出日本企業の経営者は、在ベトナム日本大使館の協力を得て、ベトナム政府との交渉を粘り強く進めて政策の改善・改革を着実に達成してきた。この時期に、ベトナムは「暴力バー」にも似ているといった批評をするマスコミ(古森義久「「投資の楽園」ベトナムの惨状」『諸君』1998年12月号、文藝春秋、pp.176-183.)もあった。確かに当時のベトナム政府は市場経済における政策運用に慣れておらず、問題点は多々存在した。それを批判して終わるのか、その改善・改革に取り組むのか。今日の第2次投資ブームについて、これらの批判者は何とコメントするのであろうか。自らの不明を恥じ入るか、在ベトナム日本企業やベトナム政府の努力に敬意を払うかのいずれかであろう。

 これからベトナム進出する日本企業は、これら先人の改革の努力を忘れてはならない。

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