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2006年5月16日 (火)

ベトナム株式投資の教訓(4)

 ブログのある読者(=知人)から、次のような質問を受けた。取り急ぎ、ベトナム情報の連載を中断して、それに回答しておこうと思う。

 質問:「先生に質問ですが、ベトナム市場に上場している会社の経営成績や製品の国内における評価がまったく把握できないため、日本の投資家も爆発的に増加しないのではありませんか?」

 回答:ご質問は、もっともです。同じ意見をベトナム人も言っています。「ベトナムで公表される業績や利益が信用できません。そう考えると、株式投資はできない。先生、株式投資して大丈夫ですか?」。ベトナム在住のベトナム人ですら、このように言っていますから、ご質問の趣旨は納得できます。しかし、それでもベトナム株式投資は魅力的です。その理由は次のようです。

 ベトナム株式投資のための心構えは、個別銘柄を買うというのではなく、「ベトナムを買う」という発想の転換が必要です。ベトナムの経済成長それ自体を買うのです。そうなると長期的な視点が必要です。また以前にブログで紹介したように、ベトナム企業を見る場合には「蟻の眼」でなく「鳥の眼」が必要です。「蟻の眼」で見れば、ベトナム企業は問題が山積していますが、「鳥の眼」で見れば、着実に改善・成長しています。そこで以下の教訓です。

 8.ベトナム株式投資は長期的に考える。個別銘柄の株価変動に一喜一憂しない。近い将来、中国株のような感覚で株式売買できることが期待される。そう考えれば、今の株価は割安である。

 「ベトナムを買う」ためには、ベトナム株価指数に連動した投資ファンドの商品化が望まれる。ベトナム上場株式30数銘柄。そのすべてをポートフォリオに組み込んで、株価指数と同じ動きをする投資信託商品を購入する。このようなことが実現するのも時間の問題である。こういう商品があれば、お勧めである。 

 個別企業の財務諸表や営業活動を検討して投資決定しないと気が済まない投資家には、ベトナム投資は現状ではお勧めできない。もちろんベトナムの証券会社の窓口に行けば、パソコンで株価チャートを見せてくれて、それぞれの企業の特徴を英語で説明してくれる。でも、本当かな?と思うのが一般的であろう。

 他方、日本の場合はどうか。デイトレードなどで個別銘柄の検討を丹念にする人は少数であろうし、ライブドアや中央青山監査法人の事件を考えれば、日本企業の財務諸表や営業報告書も全面的に信用できないということになる。企業情報の信頼性を確認するために情報武装の必要性があることは、日本もベトナムも同様である。

 9.財務諸表・会計報告書・新聞・雑誌を全面的に信用しない。ベトナム企業の評価は「現場主義」に基づく。多方面から情報武装して風評被害を防御する。

 この教訓9の「現場主義」とは、直接に商品を見て、サービスを受けて、その企業を判断するということである。できれば、その企業経営者にインタビューする。それができないなら、現地の複数のベトナム人に評判を聞く。それが無理なら日本のベトナム人留学生に評判を聞く。それもできないなら、ベトナム人を知っている日本人に聞く。いろいろな人からの直接の情報を収集し、それで企業を評価する。ただし、その中には風評もあるので、事実の是非を吟味しなければならない。こういった風評例は、上場予定のサコムバンク(サイゴン商業銀行)である。

 「証券市場ではこのところ、サイゴン商信銀行(サコムバンク)がホーチミン証券取引所への株式上場申請を取りやめたとの噂が流れている。こうした風説は、投資家の心理やサコムバンク株の価格、株主の正当な権利に影響を及ぼしている。
  サコムバンクは同社ホームページで、ホーチミン証券取引所への株式上場申請を取りやめたとする情報が、誤りであるとした声明を発表した。サコムバンクは株式上場及び新株発行の申請書類を国家証券委員会に正式に提出し、現在同委員会が審査中である。」

 この真相は、次のような内容である。「サコムバンクは申請書類の中に欠落事項があったために国家証券委員会の承認を受けられなかった。これから書類を修正してもう一回申請する」。このようなことがあっても、この上場予定株式の現在価格は下落していない。現在のサコムバンクの投資家は、もともと未上場株式を買っているのだから、少しばかり上場が遅れたからと言って「狼狽売り」しないと考えられる。したがって株価は下落しない。

 ともかくベトナムは、うわさ=口コミの社会である。株式投資において風評被害を受ける可能性は大きいと思われる。前述の教訓9のように情報武装が求められる。また同時に教訓8のように長期視点で考える。「蟻の眼」でなく「鳥の眼」で見ることである。

 さて、最初の質問に戻って、果たして「日本の投資家が増えない」かということである。私見では、ベトナム株式投資の初期段階(=現状)は、成功もあれば、失敗もある。なぜなら現在は、その後に控える有力国営企業の本格的な上場の準備段階だからである。準備段階だから、信頼できる優良株式が見つからない。したがって思ったほどに利益も出ない。法整備も未完了である。ここでベトナムを見限った投資家は、その後に後悔することになるかもしれない。主演男優・主演女優・メインディッシュが出てくる前に退席するようなものである。

 以上の私見を納得していただけるかどうか。日本の投資家が増えるかどうかは、それに依存している。

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