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2006年5月25日 (木)

ベトナム情報(8):所得格差と物価上昇

 第7表(「ADB7.rtf」をダウンロード )の指標10~13は、各国の所得格差を示している。まず1人あたりGDPを2002年について見れば、中国の所得(960ドル)はベトナム(430ドル)の2.23倍である。他方、タイの所得(2,000ドル)は中国の2.08倍である。中国では、北京や上海など都市部の経済発展が「経済大国」のイメージを先行させているが、1人当たりのGDPから見れば、タイの下位に位置する発展途上国である。このことは、都市部以外の貧困度が大きいことを意味している。

 貧困の撲滅所得格差の是正は、人間社会に共通した課題である。第7表によれば、中国がベトナムよりも所得不均衡は大きい。ベトナムは、中国のような「先富論」を正式に採用せずに、所得格差の拡大に十分に注意を払った政策を遂行してきた。このことが、性急な改革優先を求める一部の外国企業には不評であったが、それが所得格差の拡大抑制の効果をもったことは、第7表において中国と比較すれば明らかである。

 所得格差の拡大は貧困層の不満を増大させ、政治的な不安定要素となる。これはカントリーリスクとも言える。このような観点から、中国よりもベトナムの方がカントリーリスクは小さいと判断できる。

 ジニ係数で注目すべきは、カンボジアが中国よりも所得不均衡が大きいことである。カンボジアは多党制を採用した民主国家であるが、それだけに政争も頻繁である。それに加えて、大きな所得格差が存在することは政治的不安定の温床となる。カンボジアは。その経済成長の前提として政治的安定性の維持に留意しなければならない。

 GDP成長率については、ベトナムが中国に次いで高水準である。特に農業分野において中国よりもベトナムの成長が大きい世界第2位のコメの輸出国であるベトナムは、一般に農産物の国際競争力は高い。WTO加盟に伴って、さらなる農産物の輸出拡大が期待され、それは経済成長に貢献するであろう。

 インフレ率は中国よりもベトナムが近年では高くなっている。2003年末のアセアン・オリンピックゲーム(SEA GAME)開催に伴う都市整備事業のために、ハノイ周辺における地価が高騰し、それがホーチミン市にまで波及した。このような土地投機は、2004年改正「土地法」によって沈静化された。今後は輸入に依存するガソリンを含む石油精製品の値上がりが懸念される。こういった一般の国民生活に直接影響を及ぼす価格は政府によって統制されており、急激な価格上昇は制限されている。

 もちろん価格補填は政府財政を圧迫することになるのだが、中部ズンクワットの石油精製プロジェクトが完成すれば、原油輸出国であるベトナムが自前で石油精製もできることになる。これは、ベトナムの石油供給や貿易収支の改善に大いに貢献する。当然、国際的な石油価格の上昇に起因するインフレに対して、ベトナムは強い抵抗力をもつことになる。  

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