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2006年5月23日 (火)

ベトナム情報(6):人口統計の比較

 第7表は、中国・ベトナム・ラオス・カンボジア・タイにおける社会経済統計を示している。以下では、この表に基づいて、ベトナムと中国を中心にして比較対照する。

 なお、この資料および記述の一部については、すでに拙稿「第14回・第15回ベトナム・中国:統計比較(上・下)」日本ベトナム経済交流センター『日越経済交流ニュース』第139・140号、2005年8月・9月において掲載している。なお、第7表は、「ADB7.rtf」をダウンロード

 第7表の人口統計を見れば、中国の人口(2003年:12億9,230万人)は他を圧倒している。ベトナムの15.97倍、ラオスの226.72倍、カンボジアの93.64倍、タイの20.19倍である。なお5年毎に実施されるラオスの国勢調査(2005年3月)によれば、その人口は560万9997人である(『産経新聞』2005年7月13日)。したがってADB(アジア開発銀行)による第7表のラオスの人口推計は、やや過大となっている。

 次に2002~2003年の人口成長率を見れば、「一人っ子政策」の中国(0.6%)「二人っ子政策」のベトナム(1.5%)では、約2倍の相違がある。中国の人口成長率は次第に低下傾向にある。この低下傾向はタイにも同様に見られる。これに対してベトナムは横ばいである。またカンボジアは、1990~2000年は4%台の成長であったが、 2002年からは2%台に半減している。

 カンボジアの人口成長率の低下は、子どもをもつことの効用が、生活水準の向上に伴って減少したことが原因のひとつとみなされる。ILO(国際労働機関)の勧告に従って児童労働が禁止されたり、社会保険制度が充実してきたために、子どもをもつことの必要性が減少し、他方、子どもの養育費が上昇するために出産が抑制されるのである(廣畑伸雄『カンボジア経済入門』日本評論社、2004年、p.140)。この指摘は一般に妥当すると思われる。 

 第7表における「総人口に対する都市人口の比率」は、中国・タイ・ベトナム・ラオス・カンボジアの順序で高い数字を示している。これは、経済発展と人口都市集中に正の相関関係があることを示唆する。

 ベトナムも工業化の進展に伴って、人口の都市集中が進行すると予想される。すでにハノイやホーチミン市周辺の工業団地では、労働力不足が指摘されている。たとえばハノイのタンロン工業団地の労働力の供給地域は、ホン川を越えたハノイ市内と近隣のドンアイン地区であるが、次第に労働力不足が指摘され始めている。当然、それに応じた賃金の上昇も予想される。そこで工業団地の周辺に公共住宅の建設が計画されている。

 中国のように工業団地内に各社で従業員寮を建設するのではなく、公共住宅の建設で労働力を確保するというのがベトナムの特徴とも考えられる。しかしは、各企業のコスト増加となる反面、共同生活を通して従業員の協調性・団結力を高めたり、社風・企業文化を従業員に浸透させたり、愛社精神を醸成したりするためには効果的である。今日の日本では死語となった中学生・高校生の「集団就職」を想起すれば、それによって支持された日本型経営に基づく企業成長の歴史が、その有効性を証明しているように思われる。このような日本の「社員寮」の効用が、果たしてベトナムでも通用するかどうか。今後の検証を要する課題である。

 なお、人口の都市集中が経済発展にとって不可避であるかどうかは疑問である。たとえば人口520万人の北欧フィンランドの首都ヘルシンキの人口は50万人である。ラオスの首都ビエンチャンの人口が60万人であるから、フィンランドとラオスの人口分布は近似しているとも言える。このフィンランドは基本的に農業国であるが、携帯電話のノキア社は世界的に著名な大企業である(:もともとノキア社は長靴の会社であり、現在は別会社となっているが、その生産を継続している。http://en.wikipedia.org/wiki/Nokia)。もちろんフィンランドとラオスを単純に比較できないが、フィンランドが先進国の中でも様々な分野で高い評価を受けていることを考えれば、ラオスを含めた途上国における国家および経済の発展のために特定モデルが存在しないことが確認される。

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