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2006年5月31日 (水)

K&K国分株式会社:食品卸売業のリーディングカンパニー

 実学講義「21世紀の業界展望」の特別講師として、K&K国分株式会社小木曽(おぎそ)泰治氏(人事総務部副部長・経営企画室副部長)に5月31日に来ていただいた。同社は創業は1712年、日本における食品卸売業の老舗であり、売上高1兆3,378億円は日本のトップ、世界の業界全体でも11位を占めている。ご講義は「食品流通の現状と企業が求める人材」というテーマであった。卸売業の現状や機能の説明から始まり、採用面接のチェックポイントまで豊富な内容をお話いただいた。小木曽さんご自身は、週末にサッカーの審判員をされたり、少年サッカーのコーチをされたりしているそうである。非常にご多忙であるにもかかわらず、社会貢献の姿勢を保持されている。

 小木曽さんは、学生の採用を担当されているが、学生を選ぶという責任だけではなく、学生から企業も選ばれてP1010031いるという自覚が必要であると話された。さらに企業を選ぶということは、採用段階で企業を代表している自分が学生から選ばれる立場にあるとお考えになっているそうである。このブログでも紹介したが、現在、私は新ゼミ生の募集中である。小木曽さんの謙虚と自戒の気持ちに学ばせていただいた。 上記のスポーツを通しての社会貢献も、このようなお気持ちから生まれているのかもしれない。

注:上記の写真をクリックすると大きく鮮明になります。講義終了時の恒例の記念撮影です。)

 先日の加藤産業(株)・久保敬一氏のご講義において、1万人当たりの食品店舗数を国際比較すれば、日本の店舗数が異常に多いことが指摘され、それは5月27日のブログで紹介された。そこで私は、零細小売店の非効率性の改善が必要であると指摘した。しかしながら今回の講義では、その多数の店舗数は、日本の食文化の特徴に起因していることが説明された。それは、次の2点である。

 1.日本では、和・洋・中・旬など食品の多様性がある。したがって多品種の品揃えという消費者ニーズがある。

 2.日本では、生鮮食品を主にした食習慣がある。したがって小商圏での多頻度の購入が一般の消費者行動である。

 このような日本の特徴は、多数のメーカーと多数の小売店舗の存在基盤となっている。それであるからこそ、それら多数の両者間を結ぶ卸売業の役割が重要となる。私見では、流通システムの効率化の促進は、中間流通業の機能強化に依存する。ここでの「効率化」とは、物流における時間やコストの削減が消費者に利益還元されるという意味である。したがって零細小売店の共同仕入れ・共同配送などを通した流通効率化が当面の課題であると思う。

 ただし小木曽氏は謙虚にも、そういった中間流通効率化の役割を既存の卸売企業が必ず果たすという保証はないと指摘された。すなわち、たとえば小売業のイオングループがメーカーと直接取引し、自前の物流センターを整備すれば、上記の日本の食文化を保持しながら、流通効率化を推進するという場合が想定される。イオングループの物流システムの傘下に多数の零細小売店が入るというような可能性もありうるからである。そうなれば、食品卸売業の役割は縮小するかもしれない。だからこそ食品卸売業は合併・経営統合などによる「規模の利益」を今後も追求せざるをえないのである。

 小木曽氏のご講義は、以上のほか貴重な情報を提供していただいた。また最後に、企業が採用したい大学生は、アビリティとコンピテンスの両者をバランスよく兼ね備えた自主自立型の人材」であると指摘された。これについては日を改めて紹介する。

 講義終了後、今春に開港した神戸空港から小木曽氏は帰社された。ご多忙中のご講義であるにもかかわらず、現役のスポーツマンのような笑顔を絶やされない講義姿が印象的であった。ご来学に感謝を申し上げたい。

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2006年5月30日 (火)

阪急ホールディングスと阪神電気鉄道の経営統合:一部の誤解を解く

 阪神電気鉄道の株式を「村上ファンド」が買い占め、その株式を阪急ホールディングスが買い取り、阪急と阪神が経営統合する。そのために阪急はTOB(株式公開買い付け)によって株式を取得することを5月29日に発表した。

 この事件は現在進行形であり、今後の展開は予測できない。ただし、テレビの街頭インタビューを見ていて気になることがある。「阪神タイガースがなくなるのは困る」・「阪神タイガーズが阪急タイガースや村上タイガースになるのは嫌だ」といった意見である。

 私見では、この心配はない。こういった意見を述べる人は、今回の阪急と阪神の「経営統合」と、これまでの「企業合併」を混同していると思われる。企業合併は、それが対等の条件での対等合併であっても、存続会社と非存続会社に区別され、合併するどちらか一方の会社は法的に消滅してしまう。このように考えると、阪神電鉄は消滅するのではないかと懸念されるのはもっともである。

 しかし今回は「企業合併」ではなく「経営統合」である。阪急ホールディングスという持株会社の傘下企業として、阪急電鉄と同じ立場で阪神電鉄が参加するのである。阪神電鉄の支配権は阪急ホールディングスに移行するが、阪神電鉄の経営組織は当面は保持されると考えられる。トップは代わるが、組織は温存されるのである。

 このような経営統合は、持株会社が解禁された1997年12月以降に頻繁に行われるようになった。社風や給与体系の異なった2社が企業合併によって1社になる場合、両社が融合するまでに多数の摩擦が生じてきた。これは、1+1=2ではなく、1+1=1.5といった結果をもたらす懸念がある。ましてや1+1=3が期待できるような「シナジー(相乗)効果」は望むこともできないであろう。

 これに対して、たとえば持株会社を頂点にした2社の経営統合は、当面の経営組織は維持されながら、2社で協力が可能な事業は優先して進めることができる。商品の共同開発や共同仕入れ、物流の効率化、人材の相互活用などである。企業合併に比べて、経営統合の「シナジー効果」は即効性があると考えられる。

 このような事例には、セブン&アイ・ホールディングスによるミレニアム・リテイリング(そごう百貨店・西武百貨店の持株会社)との経営統合がある。これによって、そごう百貨店・西武百貨店・イトーヨーカ堂・セブンイレブンなどが同じ傘下企業になる。そうだからといって、そごう百貨店をイトーヨーカ堂百貨店に名称変更するなどという愚策は採用されない。それぞれの企業には伝統があり、ブランドが蓄積されている。それを尊重しながら、前述のような即効性のある「シナジー効果」の発揮が期待されている。

 阪急と阪神は経営統合である。企業合併の弊害・問題点を最小にするための企業の統合形態である。このように考えれば、今まで通りの阪神タイガーズは確実に存続する。阪神タイガーズは不滅である。

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2006年5月29日 (月)

ベトナム情報(11):ベトナム人株式投資家の現状

 The Saigon Times,Weekly,May 20, 2006, p.27は、「成長する株式市場:必要とされる経験」という表題の記事を掲載している。以下では、これを簡単に紹介し、ベトナム人の株式投資家の特徴を指摘してみよう。

 先週、ベトナム株式市場の無秩序な状況が示された。その週の最初の三売買期間に市場は劇的に下落した。なぜなら投資家が株式全部を購入価格で売却したからである。3連続の売買期間における株式全部の売却は、VNインデックス(ベトナム株価指数)を52ポイント、すなわち約10分の1下落させた。その後に市場は、パニックに襲われた投資家にとっては喜ばしいことに、その週の最後の二売買期間に急激に反転して、VNインデックスで42ポイント上昇した。

 これらの無秩序な動きは、衝動買い・狼狽売りの投資家をベトナム株式市場が抱え入れ始めたことを少なくとも示している。売買数と投資額は上昇しており、過去3ヶ月間に株式取引所は、より多数の地元ベトナム人を売買に引き込んだ。このような市場での多数の売買者は、個人預金をもった未経験の個人投資家であり、不動産市場のような中途半端な投資対象に代わって、株式市場を試しているのである。

 株式投資の初心者の参入によって、多数の証券会社は多忙を極めることになった。昨年に比べてサイゴン証券会社では、売買登録した投資家数が3倍に達した。非競争価格で株式を取得している未経験の投資家は、非常識な高水準にまで株価を即座に押し上げた。これらの人々が、最大の被害を先週に受けた投資家であった。(以下、記事紹介は続く)

 私見では、全世界的な株式下落は、BRICsの国々(ブラジル・ロシア・インド・中国)で大きく、国際的なヘッジファンドが投機資金を引き揚げる動きが原因とも指摘されている(『日本経済新聞』2006年5月21日)。この世界的な株安の動向は、本来ベトナムと連動しないはずである。国際的なヘッジファンドがベトナムに投資したことは寡聞であるし、ベトナムの基盤的条件(ファンダメンタルズ)は不変である。

 それにもかかわらず、ベトナム株価指数が下落したことは、上述のようなベトナム人投資家の「狼狽売り」が原因と思われる。おそらく、これらのベトナム人投資家は富裕層であり、数回の外国旅行も経験している。そして国際的な英語情報にも常時触れている。CNN・インターネットまたは外国在住の親戚・友人から世界的な株価下落の情報を入手し、「それなら早く売らなくては損する」と「賢明に」判断して、所有株式を早急に売却したと想像される。

 他方、1997年にタイから始まった「アジア通貨危機」に伴う経済停滞の時期でも、ベトナムは経済成長を続けた。その理由は、ベトナム通貨・ドンの変動が国際通貨に連動していないために、アジア諸国における急激な通貨下落の影響を受けなかったからである。これと同様に、ベトナム株式市場は国際的な投資・投機ファンドを受け入れていない。それほどの市場規模に成長していないからである。

 このように考えれば、ベトナム株価指数が下落する必然性はなかったとみなされる。株式投資に関する中途半端な知識をもった投資家の売買行動が、株式市場の攪乱要因になったとみなされる。前述の株価下落の局面では、少なくとも株式投資の経験をもった日本人投資家なら、「軟ピン買い」(=株式購入の平均価格を下落させる目的で、株価下落の時点で当該株式を再び買い増しすること)の場面であろう。または、一時的な株価下落と判断して静観するであろう。そもそも多くの外国人のベトナム投資の目的は、長期保有による株価上昇であって、短期的な売買ではないとみなされる。

 ベトナムにおいて株式投資の知識とノウハウを一般に普及させるためには、かつての財閥解体後の日本がそうであったように、株式民主化の全国的なキャンペーンが実施されてもよいし、株式投資のための専門学校や私塾が設立されても不思議ではない。株式売買=相場をめぐる悲喜劇は、どの国も経験してきたことである。ベトナムにおける健全な株式市場の発展を期待したい。

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2006年5月28日 (日)

ベトナム情報(10):株式市場

 ベトナムで株式市場が開設されたのは2000年7月である。その当時の上場企業は5銘柄であったが、ホーチミン証券取引センターにおいて現在は36銘柄になっている。

 株式市場の規模は小さいが、ベトナムの経済成長を考えれば、魅力的な成長を期待できる株式市場であるとみなされる。経済成長という基礎的条件に基づく株価上昇のみならず、外国人投資家の資金流入による株価上昇も期待できる。さらにベトナム人高額所得者層の株式投資も増えることはあっても、減少することはないであろう。

 ベトナム株式投資のためには、ベトナムの証券会社に口座を外国人であっても開設することができるが、その取引は上場株式に限定されている。未公開(未上場またはIPOとも呼ぶ)株式に対する入札やその売買は、口座を開設した証券会社の営業担当者に依存しており、その取引コストを考慮すれば、こういった店頭市場の売買を取り扱わない証券会社もある。

 個人で口座開設してベトナム個別銘柄に投資することは何ら問題ないが、ベトナム投資の成果が最大化できるかどうかは疑問である。個人での口座開設料口座維持費用も少なからず必要であるし、小規模な市場であるために株価の乱高下も激しい。

 その対応策として、適当な投資ファンドに参加することである。それなら多数の未上場株式も購入できるし、その上場時の値上がり益も受け取ることができる。日本のベンチャー企業の上場と事情が違って、ベトナム国営企業の上場予定株式の購入であるから、上場しないというリスクは日本に比べて低い。

 このような内容を以下の『日越経済交流ニュース』2006年6月号、日越経済交流センター(センターに対するご相談は「JVEEMAP.doc」をダウンロード )で議論している。ご関心の読者は参照してほしい。拙稿「ベトナム投資ファンドの新たな設定:分析と提案」(06-2006.rtf」をダウンロード )。

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2006年5月27日 (土)

加藤産業(株):食品卸売業として「流通革命」を担う

 加藤産業株式会社は、食品卸売業界で第5位の売上高を占める東証・大証第1部上場企業である。本社は兵庫県・西宮市。西宮市と言えば、全国的には甲子園球場の所在地として有名である。さて、その売上高上位10社は次の通りである。

 ①国分(1兆3,378億円)、②菱食(1兆2,875億円)、③日本アクセス(8,172億円)、④伊藤忠食品(5,578億円)、加藤産業(5,296億円)、⑥三井食品(5,064億円)、⑦日本酒類販売(4,306億円)、⑧明治屋商事(4,244億円)、⑨旭食品(3,445億円)、⑩西野商事(3,144億円)。

Dsc07484  本学の実学講義「21世紀の業界展望」において招聘講師としてご講義いただいた久保敬一氏(総務部・人事教育チーム採用担当統括)から、自社を含めた上記10社に関する詳細な実態分析を紹介していただいた。食品卸売業における「21世紀の業界」の将来像が、ご講義を通して文字通り「展望」された。

 注:上記の写真をクリックしていただくと、大きく鮮明に見ることができます。通常の教室と今回は異なっていますが、やはり同じ階段教室です。階段教室は、教員と学生の目線が合わせやすく対話型の講義には最適の環境です。

 食品卸売業界の今後を展望する場合、その顧客である小売業の動向分析が不可欠である。たとえばイオングループは、メーカーとの直接取引を増やそうとして、自前の物流センターも建設した。この動きが拡大すれば、中間流通業=卸売業は不要となり、卸売り業界全体の死活問題となる。

 小売業全体では、日本において競争激化が特徴である。たとえば「人口1万人当たり食品店舗数」を見れば、米国:7.3店、英国:12.9店、ドイツ:21.7店、フランス:14.3店、日本:41.9店となっている。これは私見では、日本が単に店舗間の過剰競争の状況というだけでなく、流通経路の合理化の遅延を意味している。

 消費者の利益のためには、小売業・卸売業、それら全体の流通システムにおいて「規模の利益」が確保されなければならない。他方、零細小売店の経営を守るという見解も存在する。きめ細かい親密なサービスをそれらが消費者に提供することで、大型小売店と差別化・共存できるという主張である。この場合も、共同仕入れや共同配送といった流通合理化によって、零細小売店であっても仕入れ・輸送コストは削減できる。そのコスト削減の利益は消費者に還元されるべきものである。消費者を直接相手にする小売店として、そのような経営上の努力や工夫を怠ることは、やや厳しい表現であるが、自らに対する保身的な「甘え」であると私は思う。

 このような小売業の競争激化は、卸売業に対する仕入れコストの削減要求となる。そこでメーカーは卸売業者に対して販売促進ということでリベートを支払って利益補填することになる。私見では、このような不透明な取引慣行は、日本の流通システムの合理化・近代化に逆行している。

 さらに食品卸売業界では、業界再編が必至となっている。卸売業での「規模の利益」の追求である。たとえば業界第3位・日本アクセスと第10位・西野商事は合併もしくは経営統合が予定されている。

 以上のような卸売業界の現状や課題を見れば、それはそのまま日本の流通システム全体の特徴や課題に繋がっている。ダイエー創業者の故・中内功は「流通革命」を唱えたが、それは今日までも継続し、卸売業界の再編という新たな段階を迎えているとみなされる。米国のウォルマートという世界最大の小売店の日本進出によって、そのような革命・改革が後押しされているとみなされる。

 採用担当責任者としてご多忙の中、わざわざ東京からご来学いただいた久保さんに改めて御礼を申し上げたい。

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2006年5月26日 (金)

ベトナム情報(9):最近の輸出動向

 ベトナムから米国・日本に対する最近の輸出情報を紹介する。The Saigon Times Weekly, March 25, 2006, pp.6-7を参照した。

 米国商務省は最近実施された調査後に、ベトナムからの輸入ナマズ(catfish)の切り身に対して、より高い反ダンピング関税を課すことを決定した。先週に発表された第1回調査の仮の結論によれば、ベトナムのバサやチャーという淡水魚の輸出業者において、関税が以前は36.84%~53.68%にあった11社の中から2社が除かれた。Vinh Hoan社は、以前の関税36.84%から6.81%に下落したが、他方、Catoco社の税率は、45.81%から80.88%に上昇した。ほかのナマズ輸出業者の税率63.88%に変化はなかった。

 この調査に参加しなかったほとんどの輸出業者は、商務省によって罰則関税が改訂されたので高い価格を支払うことになった。これらの業者は、より高い関税はベトナムのナマズ輸出に否定的な影響をもつだろうが、もはや主要市場として米国に依存しないので深刻な事態ではないと述べている。

 輸入ナマズに対するEUの需要は、鳥インフルエンザ発生の今年は20%上昇と予想されている。Nam Viet社(Navico)はEU向けナマズ輸出の船積みの80%を販売している。2005年に同社は2万2千トン・7,500万ドルをEU市場に輸出した。

 米国における多数の州は、禁止化学物質が魚に含まれていると主張して、ベトナム輸入ナマズを禁止している。

 注:私見では、この危険化学物質は、米軍が散布した枯葉剤(ダイオキシンに起因しているのではないか。その米国が、それを理由に輸入禁止するというのは、加害者の責任を被害者に転化する開き直りの言い分である。また、事実としてダイオキシンなどの化学物質は含まれていないと枯葉剤問題に取り組む写真家・中村梧郎氏などが指摘している。このような米国の欺瞞性をベトナム人は賢明に理解していると思われる。ベトナム人の特に若者は米国にあこがれているし、先日ハノイを訪問したマイクロソフトのビル=ゲイツは大歓迎を受けた。しかし、信頼に基づいた越米間の友好関係の構築は簡単でないと私は考えている。

 ナマズ養殖は、メコンデルタ地帯における農民多数の主要な生活手段である。水産省の数値によれば、バサやチャーという魚は、ベトナムの魚輸出すべての53%に達し、輸出金額の12.5%である。それは2005年に27億ドルに達している。

 なお、2005年におけるベトナムの対日輸出の上位10品目は、次の通りである。単位:100万ドル。

 ①縫製衣料品:721.7、②水産物:614、③原油:585、④繊維製品:466、⑤電線:450.8、⑥石炭:207.6、⑦木工品:184.3、⑧靴:135、⑨綿製衣料:122.5、⑩電子部品:119。

 これまで原油の輸入が日本の輸入品の第1位と思っていたが、アパレルが第1位となっている。ベトナム工業化の進展を反映している。

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2006年5月25日 (木)

ベトナム情報(8):所得格差と物価上昇

 第7表(「ADB7.rtf」をダウンロード )の指標10~13は、各国の所得格差を示している。まず1人あたりGDPを2002年について見れば、中国の所得(960ドル)はベトナム(430ドル)の2.23倍である。他方、タイの所得(2,000ドル)は中国の2.08倍である。中国では、北京や上海など都市部の経済発展が「経済大国」のイメージを先行させているが、1人当たりのGDPから見れば、タイの下位に位置する発展途上国である。このことは、都市部以外の貧困度が大きいことを意味している。

 貧困の撲滅所得格差の是正は、人間社会に共通した課題である。第7表によれば、中国がベトナムよりも所得不均衡は大きい。ベトナムは、中国のような「先富論」を正式に採用せずに、所得格差の拡大に十分に注意を払った政策を遂行してきた。このことが、性急な改革優先を求める一部の外国企業には不評であったが、それが所得格差の拡大抑制の効果をもったことは、第7表において中国と比較すれば明らかである。

 所得格差の拡大は貧困層の不満を増大させ、政治的な不安定要素となる。これはカントリーリスクとも言える。このような観点から、中国よりもベトナムの方がカントリーリスクは小さいと判断できる。

 ジニ係数で注目すべきは、カンボジアが中国よりも所得不均衡が大きいことである。カンボジアは多党制を採用した民主国家であるが、それだけに政争も頻繁である。それに加えて、大きな所得格差が存在することは政治的不安定の温床となる。カンボジアは。その経済成長の前提として政治的安定性の維持に留意しなければならない。

 GDP成長率については、ベトナムが中国に次いで高水準である。特に農業分野において中国よりもベトナムの成長が大きい世界第2位のコメの輸出国であるベトナムは、一般に農産物の国際競争力は高い。WTO加盟に伴って、さらなる農産物の輸出拡大が期待され、それは経済成長に貢献するであろう。

 インフレ率は中国よりもベトナムが近年では高くなっている。2003年末のアセアン・オリンピックゲーム(SEA GAME)開催に伴う都市整備事業のために、ハノイ周辺における地価が高騰し、それがホーチミン市にまで波及した。このような土地投機は、2004年改正「土地法」によって沈静化された。今後は輸入に依存するガソリンを含む石油精製品の値上がりが懸念される。こういった一般の国民生活に直接影響を及ぼす価格は政府によって統制されており、急激な価格上昇は制限されている。

 もちろん価格補填は政府財政を圧迫することになるのだが、中部ズンクワットの石油精製プロジェクトが完成すれば、原油輸出国であるベトナムが自前で石油精製もできることになる。これは、ベトナムの石油供給や貿易収支の改善に大いに貢献する。当然、国際的な石油価格の上昇に起因するインフレに対して、ベトナムは強い抵抗力をもつことになる。  

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2006年5月24日 (水)

ベトナム情報(7):労働人口と就学率

 第7表(「ADB7.rtf」をダウンロード )年齢別の人口において、2003年の0~14歳人口を見れば、ベトナム(31%)は中国(23%)よりも8ポイント高く、労働力の供給が今後も継続して期待できる。これに対して中国はタイと同じ水準である。中国において若年労働者が不足するという事態が、近い将来に予想される。これは賃金上昇をもたらす。

 さらに労働人口とみなされる15~64歳の人口について、1990年から2003年の変化は、ベトナムで9ポイント上昇(56%から64%)であるが、中国は3ポイント上昇(67%から70%)にすぎない。中国よりも大きなベトナムの上昇は、今後も継続するとみなされる。このような労働人口の推移は、ベトナムを生産拠点とすることの長期的な優位性を明示している。

 第7表によれば、中等教育就学率では男子・女子ともに、高等教育就学率では女子について、ベトナムが中国よりも高い数値になっている。この数値は基礎学力の習得者の比率という意味であり、その高低が国民の優秀性を示すものではない。また教育内容の水準を考慮していない。ただし政府および国民の教育に対する意欲や尊重の程度、大学以上の高等教育を支持する「すそ野」の広がりを示す数値としての意義をもっている。

 なお、「ベトナムでは特に女性労働者が勤勉で優秀である」と一般に指摘されている。この「勤勉で優秀」という評価には、忍耐力・誠実性・判断力など多様な要素が含まれていると思われる。このような指摘の背景には、ベトナムの長い戦争時代に男性が従軍している間、女性が家族と生活を守り、さらに女性も男性に混じって軍務に服した歴史が存在している。これらの世代の女性を母親として育った女性は、やはり「しっかりしている」と想像することができる。

 第7表で注目されることは、ラオスやカンボジアにおける低い就学率である。単純に言って、日本の義務教育に相当する中等教育を過半数の子どもが受けていない。これらの国々に対する教育面での国際的な支援強化の必要性が指摘できる。

 ラオスやカンボジアの小学校の建設費用は日本円で200~500万円と言われている。それほど費用は巨額でないので、日本の民間団体やNGO・NPOが建設費用を負担する事例も多い。これらの善意は高く評価されなければならない。しかし校舎竣工後の教材の提供や教師の待遇改善までの持続的な支援は不十分であるし、実際に不可能とみなされる。それらは、政府の教育政策に含まれる問題だからである。ここからは、政府間レベルのODA資金などに基づく公的支援が求められる。

 中国とベトナムのリテラシー(読み書き能力)を比較すれば、男女ともに15~24歳の若年層では中国がベトナムよりも高く、15歳以上の壮年・高齢者を含めた数値はベトナムが中国よりも高い。特にベトナム女性のリテラシーが91%であるのに対して、中国は78%である。戦時下にもかかわらず長期に渡って性別に相違なくベトナムの教育制度が健在であったことが、このような数値に表出しているとみなされる。

 なお、これまでベトナム人のリテラシーが高いと指摘されてきたが、 すべての項目においてタイはベトナムよりも高い数値を示している。この点で、ベトナムは過大評価されてきた。また、今後の国際ビジネス環境を考えれば、自国語リテラシーよりも英語リテラシーの向上が世界に共通した課題になるであろう。この程度を示すデータを渉猟中であるが、英語リテラシーとなれば、ベトナムに対して日本は偉そうにできないように思われる。

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2006年5月23日 (火)

ベトナム情報(6):人口統計の比較

 第7表は、中国・ベトナム・ラオス・カンボジア・タイにおける社会経済統計を示している。以下では、この表に基づいて、ベトナムと中国を中心にして比較対照する。

 なお、この資料および記述の一部については、すでに拙稿「第14回・第15回ベトナム・中国:統計比較(上・下)」日本ベトナム経済交流センター『日越経済交流ニュース』第139・140号、2005年8月・9月において掲載している。なお、第7表は、「ADB7.rtf」をダウンロード

 第7表の人口統計を見れば、中国の人口(2003年:12億9,230万人)は他を圧倒している。ベトナムの15.97倍、ラオスの226.72倍、カンボジアの93.64倍、タイの20.19倍である。なお5年毎に実施されるラオスの国勢調査(2005年3月)によれば、その人口は560万9997人である(『産経新聞』2005年7月13日)。したがってADB(アジア開発銀行)による第7表のラオスの人口推計は、やや過大となっている。

 次に2002~2003年の人口成長率を見れば、「一人っ子政策」の中国(0.6%)「二人っ子政策」のベトナム(1.5%)では、約2倍の相違がある。中国の人口成長率は次第に低下傾向にある。この低下傾向はタイにも同様に見られる。これに対してベトナムは横ばいである。またカンボジアは、1990~2000年は4%台の成長であったが、 2002年からは2%台に半減している。

 カンボジアの人口成長率の低下は、子どもをもつことの効用が、生活水準の向上に伴って減少したことが原因のひとつとみなされる。ILO(国際労働機関)の勧告に従って児童労働が禁止されたり、社会保険制度が充実してきたために、子どもをもつことの必要性が減少し、他方、子どもの養育費が上昇するために出産が抑制されるのである(廣畑伸雄『カンボジア経済入門』日本評論社、2004年、p.140)。この指摘は一般に妥当すると思われる。 

 第7表における「総人口に対する都市人口の比率」は、中国・タイ・ベトナム・ラオス・カンボジアの順序で高い数字を示している。これは、経済発展と人口都市集中に正の相関関係があることを示唆する。

 ベトナムも工業化の進展に伴って、人口の都市集中が進行すると予想される。すでにハノイやホーチミン市周辺の工業団地では、労働力不足が指摘されている。たとえばハノイのタンロン工業団地の労働力の供給地域は、ホン川を越えたハノイ市内と近隣のドンアイン地区であるが、次第に労働力不足が指摘され始めている。当然、それに応じた賃金の上昇も予想される。そこで工業団地の周辺に公共住宅の建設が計画されている。

 中国のように工業団地内に各社で従業員寮を建設するのではなく、公共住宅の建設で労働力を確保するというのがベトナムの特徴とも考えられる。しかしは、各企業のコスト増加となる反面、共同生活を通して従業員の協調性・団結力を高めたり、社風・企業文化を従業員に浸透させたり、愛社精神を醸成したりするためには効果的である。今日の日本では死語となった中学生・高校生の「集団就職」を想起すれば、それによって支持された日本型経営に基づく企業成長の歴史が、その有効性を証明しているように思われる。このような日本の「社員寮」の効用が、果たしてベトナムでも通用するかどうか。今後の検証を要する課題である。

 なお、人口の都市集中が経済発展にとって不可避であるかどうかは疑問である。たとえば人口520万人の北欧フィンランドの首都ヘルシンキの人口は50万人である。ラオスの首都ビエンチャンの人口が60万人であるから、フィンランドとラオスの人口分布は近似しているとも言える。このフィンランドは基本的に農業国であるが、携帯電話のノキア社は世界的に著名な大企業である(:もともとノキア社は長靴の会社であり、現在は別会社となっているが、その生産を継続している。http://en.wikipedia.org/wiki/Nokia)。もちろんフィンランドとラオスを単純に比較できないが、フィンランドが先進国の中でも様々な分野で高い評価を受けていることを考えれば、ラオスを含めた途上国における国家および経済の発展のために特定モデルが存在しないことが確認される。

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2006年5月22日 (月)

ベトナム情報(5);中国との比較総論

 昨年からの第2次ベトナム投資ブームは、「中国+ワン」としてベトナムが選択されたという意味がある。確かに中国は「世界の工場」であり、同時に巨大な国内市場は魅力である。さらに2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博までの経済成長が確実視されている。しかし昨年から、中国だけに依存するリスクが認識され始めた。リスク分散として中国だけでなく、中国に加えて、どこの国が適当なのか。そこで中国に代替・付加する国としてベトナムが選択され始めているのである。

 この契機は、小泉首相の靖国神社参拝に伴う中国での「反日運動」の発生である。さらにそれ以前には、SARS(重症急性呼吸器症候群)流行時における中国政府の対応の遅延があった。中国と対照的にベトナムは、日本に対する友好的な態度を保持しており、さらにSARSに対する情報公開と国際的な支援要請は迅速であった。これらのことは、中国における生産活動に支障が発生するリスクの認識を高めることになった。

 また、より重要なことは、2005年7月21日に中国の人民元の切り上げが発表され、さらに毎年3~4%の上昇が見込まれていることである(『日本経済新聞』2006年5月16日)。このような人民元の上昇に対して、ベトナムでは傾向的なドン安である。この為替レートにおける動向の相違は、(委託)加工生産する外国企業にとっては決定的である。毎年のように生産コストが上昇する中国に対して、ベトナムでは物価上昇があるにせよ、ドン安のために生産コストの上昇は緩和される。

  以上のような政治的・経済的背景が、第2次ベトナム投資ブームを発生させたとみなされる。第1次ブームの契機は、米国の経済制裁解除(1994年)と米越の国交回復(1995年)という外的要因であったと考えられる。そうであるとすれば、必ずしもベトナムそれ自体が評価されたわけではない。ベトナムの潜在力や未開拓の投資国としての魅力が当時は盛んに語られていたが、あくまでもそれは潜在力であり、未開拓の魅力にすぎなかった。これに対して第2次ブームの発生は、中国との比較でベトナムの実績が評価された結果である。

 たとえば、ある建築用プレス部品を中国に委託生産している日本の中堅企業は、その生産をベトナムに移転させることを準備中である。中国の生産は、最初は順調であったが、次第に手を抜くようになり、異なったロットの製品の混在が頻繁に発生するようになった。この是正を繰り返し要求しても改善されない。工場見学に行くと、通常の生産工場と違った工場に案内される。取引を仲介してくれた日本語のできる中国人も、あきらめ気味である。そこで中国に見切りをつけて、ベトナムで委託工場を探すことにした。ちょうどその時に人民元の切り上げが報道され、やや割高のベトナムの生産コストが中国と大差なくなった。このことも決断を後押しした。

 この事例は現在進行形である。果たしてベトナムから日本に製品が無事に荷揚げされるかどうか。それまで眼を離すことはできない。また、その後の注意も必要であろう。なお、このような委託生産先の探し方については、別途に紹介する。

 次回、いくつかの統計資料を紹介し、以上の指摘を裏付けてみよう。

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2006年5月21日 (日)

就職活動で成功するために:採用担当者が語る採用ポイントを全公開

 食品総合企業のリーディングカンパニー・(株)トーホー・人材開発室長・吉田憲司さんから大学新卒の採用ポイントを伺った。それを敷衍して列挙すると次のようになる。

 (1)企業から見た現代の若者像は、無気力&無感動&無表情そして受身人間。就職内定を獲得するためには、このようなイメージを打ち破らなければならない。イメージ通りでは面接に合格するはずがない。

 (2)より具体的な現代の若者像として、①礼儀を知らない、②漢字が書けない、③苦労を嫌がる、④自分で考えない、⑤言葉遣いがダメ、⑥応用力がないと指摘されている。自分はそんなことないと思えば、そうでないことをアピールする

 (3)以上のような若者像に自分が当たっていると思えば、2回生・3回生の今からでも間に合う対策として、①活字を読む、②人の話を聞く、③思いやりの心をもつ、④正しい倫理観を涵養、⑤歴史を知る、⑥本物を知る。そして具体的な行動として、①挨拶をする、②活字に親しむ、③本気で汗を流す、④どうでしょうか?という意識をもつ、⑤ハッキリと喋る、⑥ムダなことに挑戦する。私見の注釈では、ムダなことに挑戦することは、自分のためだけに生きる利己主義を克服することに通じる。自分のためだけに生きるとホリエモンになる。自分のために生きることは当然だが、それが世の中のために生きることに結びつけば、それは楽しい幸福な人生と言えるのではないか。

 (4)企業が求める人物は、学力・資格よりも熱意・人間性である。より詳細に言えば、企業が求める人材は、①意欲の高い人、②明朗快活な人、③協調性のある人、④よい意味で個性(=人間としてにじみ出るような個性)のある人、⑤学生時代に何かやり遂げた人。私見では、就職で最も重視されると指摘される「人間性」を磨くことは難しいように思われるが、それほど難しくない。毎日の生活を充実させることである。自分が何をすべきかを自分で考えることである。何か目標を決めて、それに挑戦することである。

 (5)企業が採用で重視するポイントは、①コミュニケーション能力:50%、②チャレンジ精神:49%、③責任感:39%、④誠実性:39%、⑤創造性:33%、⑥リーダーシップ:18%、⑦学業成績:18%、⑧一般常識:10%、⑨大学・所属ゼミ:3%、⑩クラブ活動:3%、⑪保有資格:2%。この中で上位①~⑥は眼で見えない能力・資質である。それ以下は眼に見える能力・資質であり、その筆頭は⑦学業成績ということになる。最近の学生が就職に有利と思っている資格取得は、わずか2%しか重視されていない。社会人になってからでも取得できる資格を学生時代に取得する意味は何か。早期戦力であることを企業にアピールするためであろうか。資格取得に向けた努力が、より採用時に重視される人間性そしてコミュニケーション能力を向上させることになればよいのだが---。

 (6)エントリーシートにおいて「学生時代に最も力を入れたことは何か」の回答は、90%がアルバイト。その次にクラブ活動そして大学祭の運営委員と続くと吉田さんは述べる。そして「コミュニケーション能力・リーダーシップ・協調性を身につけることができました」という結論になる。しかしながら、特にアルバイトは就活のアピール点にならない。アルバイトはマニュアル化されており、与えられた限定的な職場の人間関係と権限委譲の範囲内での自主性・自発性・リーダーシップ・コミュニケーション能力が求められているにすぎない。現実の企業活動は、こういった一定の範囲を超えた創造的な能力を必要としている。

 (7)企業に求められるのは、それぞれの個性ある人間性に裏付けられたより汎用性のある能力・資質である。たとえば「アルバイトを通してコミュニケーション能力を身につけました」と言うので、「それでは最近の新聞記事について議論してみましょうか?」と質問すれば、回答不能になる。どこにコミュニケーション能力を身につけたのかと突っ込みたくなる学生が多い。こういったバイト学生は、職場内の店員間、店員と顧客の間でのコミュニケーション能力を身につけただけである。そのアルバイト先の職場で継続して働いたらどうか。

 以上、大学生に対して吉田さんから厳しいご指摘を頂いた。ただし、それらの課題を克服すれば、その学生は人間的に大きく成長するに違いない。人間性を磨くことになる。一流企業は、一流の人間が集まるから一流企業と言う。売り上げや利益または企業価値の大きな企業が、そのまま一流企業を意味しない。企業は人である。いわゆる一流企業に入社しようと思えば、自分自身も一流にならなければならない。そしてその努力は、けっして無駄にはならない。

 付記: 間断なく続く「企業不祥事」の発生を考えれば、一流の優良企業と思われていた企業が、実はそうでないということが実感できる。人間性を見抜くことも難しいが、企業を評価することはもっと難しい。難しいのだから、すぐに答えが出ない。それなら、あまり最初から真剣に考えない方がよいのかもしれない。いろいろ会社訪問すれば、その一連の流れの中で自分に合ったように思われる企業との出会いがあるはずである。その出会いや縁を認識して、それを大切にする。就職活動とは、そんなものかもしれない。ここで重要なことは、その出会いや縁を認識する能力である。目的・目標もなく時間を浪費した生活をしていれば、それが目の前に存在しているのに、それが見えない(=認識できない)。これに学生は注意である。

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2006年5月20日 (土)

(株)トーホー:ハイブリッド型食品総合企業

 私の担当講義「21世紀の業界展望」において、(株)トーホー・人事開発室長・吉田憲司氏のご講義を賜った。(株)トーホーは、来年2007年に創業60周年を迎え、本年の売り上げは1559億円を見込んでいる。経営理念は「食を通じて社会に貢献する」。創業以来の増収を継続する東証・大証・福証の1部上場企業である。

 一般の消費者にとって「トーホー」と聞けば、食品スーパーを連想する。西日本に46店舗を展開し、その「地域の冷蔵庫」というイメージの店舗作りをしている。しかし売上高に占める割合は18.4%にすぎない。トーホーの売り上げの59.5%は食材卸売り、22.1%はAプライスである。このAプライスは、日本で最初の業務用食品現金卸売り店舗である。一般消費者も利用できるが、その主要な顧客は食堂・レストランである。同社の卸売り配送システムがカバーできない顧客に対して、Cash&Carryで食材を提供している。取扱商品は500品目から始まり、現在は5000品目に増加。このように同社は、外食産業を支える業務用食品の総合商社である。

 このほかに同社のグループでは、ホテルやレストランなどを対象とした卸売りコーヒーの製造・販売をしている。このトーホーコーヒーの歴史は古く、1950年のコーヒー豆輸入再開の翌年に生産を始めている。UCCやネスレなど消費者向けの独自ブランドをもっていないが、専門店には定評あるブランドである。なお、(株)トーホーの会社概要については、http://www.to-ho.co.jp/を参照。

Dsc07478  講義終了後の記念撮影です。写真をクリックすれば、大きく鮮明に見ることができます。土曜日(20日)は、流通科学大学で資格取得講座が開講されており、通常より受講生は少数でした。また、中国の中小規模食品スーパーを研究中の大学院修士課程の王くんも講義を聴講しました。

 トーホーは、小売りと卸売りの双方を業態にもっており、さらに顧客には一般消費者のみならず高級ホテルや一流レストランをもっている。私見では、このような現状を考慮すれば、同社は、内食・中食・外食のすべてに対応できるハイブリッド型食品総合企業である。様々に変化する気まぐれな消費者の嗜好に対して、そのすべてに同社は対応できる業態をもっているとみなされる。たとえば外食が人気なら、卸売り事業が活況になるし、景気低迷や健康志向で内食が重視されるようになれば、食品スーパー事業が対応する。中食は、卸売りの顧客である高級ホテルや一流レストランとの提携や新商品の共同開発が考えられる。このような柔軟な対応が可能な企業であることが、同社の差別化された競争優位性であると考えられる。

 ここで私が、単なる「総合」ではなく「ハイブリッド型」と命名したのは、すべての業態や事業が単に集まるだけでなく、そこから新しい業態や事業が創造されるという意味を表現したかったからである。また総合されて融合するのではなく、それぞれが自立・自律しながら協力するという企業組織を(株)トーホーにイメージしたからである。

 トーホーは「企業は人である」という経営憲章をもっており、さらに「企業は社会の一員である」という観点から、企業の社会貢献および社会的責任の活動に熱心である。このような意味で、人材開発室長として採用活動や社内教育を担当されている吉田さんの仕事は重要である。吉田さんは、大学卒業後にリクルートに長く勤務され、トーホーには昨年末に中途入社されたばかりである。吉田さんはトーホーの特徴として、生え抜き社員と中途入社社員のバランスが取れていることも指摘された。人材の適材適所の配置、人材の最大限の開発・活用を最優先にすれば、生え抜きと中途入社の区別は無意味なのかもしれない。

 吉田さんには、会社の説明をしていただいた後に、企業が求める人材についてお話をいただいた。本講義との関係で言えば、「21世紀の業界」を支えるために必要な「21世紀の人材」の展望を提示していただいた。これについては別途に紹介したいと思う。せっかくの土曜日の休日にもかかわらず、わざわざご講義を頂戴した吉田憲司氏に改めて御礼を申し上げたい。

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2006年5月19日 (金)

ベトナム情報(4-2):貿易の現状(続)

 第6表によれば、輸出から輸入を引いた数値(①-②)は、単純に言えば、個別企業における貿易収支の黒字額である。同時にこれは、ベトナム国内で生産された付加価値総額を示している。輸入原材料と国内原材料を使用して、ベトナム労働者が生産し、その製品のほとんどを輸出する。この輸出額から原材料輸入額を引けば、ベトナム国内で生産された付加価値を示す。 

 ベトナムにとって、この比率(①-②)/①が大きい企業ほど経済発展に貢献しているとみなされる。外貨獲得のために輸出増加は望ましいのだが、その増加に伴って原材料輸入も増加すれば、貿易収支の黒字には、輸出が増加するほどに貢献しない。この意味で、Nidec Tosok住友ベークライトは優良企業である。他方、キャノンや富士通は輸出も多いが、輸入も大きい典型的な企業である。

 輸入原材料・部品の国内生産比率を高めることは、国内市場を志向するトヨタ・ホンダ・ヤマハ・三洋電機なども努力していることである。しかし品質の問題もあり、簡単に比率は高まらない。しかし最近の投資ブームによって、日本の部品メーカーのベトナム進出が増加している。これによって国内生産は次第に増大すると予想される。このような「すそ野産業」の育成が、ベトナムでは重要課題である。

 なお、すでに指摘した近年の中国貿易の拡大は、今後ますます進展するように予想される。特に輸入については、これまでの日用品などから、原材料部品の輸入が増大すると予想される。たとえば中国の広州から原材料部品を陸路でハノイ周辺の工業団地に持ち込むことは、すでに住友商事が実験を試みている。

 このような傾向が進めば、ベトナム生産のための原材料部品は中国に依存するという関係ができあがるかもしれない。技術や品質の向上に時間がかかり利益率も低い部品生産企業(すそ野産業)の育成よりも、経済成長を急ぐベトナムにとっては、手っ取り早く原材料を中国から輸入して、完成品を輸出する方が生産は拡大するという考え方もありうる。

 このようなベトナムと中国の関係が形成されるとすれば、それは日本と韓国の関係と同様である。韓国の輸出が伸びれば伸びるほど、日本からの原材料部品の輸入が増え、慢性的な対日赤字が韓国では続いている。対日赤字の解消を両国の課題とする時代もあったが、最近では、貿易収支全体の黒字が重要であって、あえて対日赤字にこだわる必要もないという見解もある。このような先例を参考にした政策立案をベトナム政府に期待したい。

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2006年5月18日 (木)

ベトナム情報(4-2):貿易の現状

 ここで、ベトナムにおける日系輸出企業の現状を紹介してみよう。ここでの輸出企業とは、製品を輸出するための目的で海外生産する企業である。なお、自社工場を所有しない輸出目的の海外生産は、委託加工生産または委託加工輸出と呼ぶ。

 第6表は、2006年1月のベトナム日系企業を輸出金額の上位から示している。輸出があって、輸入がない企業は、マブチモーター・日東電工・スミハネルである。これらは、たまたま1月に原材料の在庫があり、輸入がなかったと解釈できる。この意味で、この表だけから一般的な指摘はできないが、いくつかの仮説を提示できる。

 2004年(?)までベトナム最大の輸出企業は、富士通ベトナムであった。ハードディスクや携帯電話の基盤を生産・輸出している。創業期の川嶋修三元社長は、ベトナム投資貿易環境の改善のために、ベトナム政府との交渉で決定的に重要な役割を果たした。同氏は富士通ベトナムを離職されたが、現在もドンナイ省政府から依頼されて投資顧問をされている。

 ベトナム輸出トップ企業の地位が、この富士通ベトナムからキャノンベトナムに取って代わられた。キャノンベトナムは、インクジェットプリンターをハノイのタンロン工業団地で生産している。さらに第2工場をバクニン省に建設中である。ハノイからハイフォンに向かう国道5号線を左折し、ランソン方面に国道1号線を進み、バクニンで右折して国道18号線をファイライ方面にしばらく行けば、その右手に新工場が見える。建設・施工は大林組である。このような本格的な生産設備投資は、キャノンが、インクジェットプリンターの国際的な生産拠点としてベトナムを選択したとみなされる。

 第6表「Blog6.doc」をダウンロード

 これらの輸出上位企業の2社が、偶然にもストライキに遭遇している。いずれも違法な山猫ストであるが、その背景は相違している。キャノンの場合(2004年?)、労働者の雇用を維持する方針のために、生産量が減少すれば、それに応じて労働時間と賃金の削減が労働組合と交渉され、労使の合意があった。それにも関わらず、一部の労働者が、その合意を知らずに抗議のストライキをしたという事情がある。

 これに対して富士通の場合(2006年)、物価上昇に伴って賃金上昇を要求した一部労働者のストライキであった。これはホーチミン市周辺の韓国・台湾企業のストライキに誘発されたものである。同様のストがハノイで発生しなかったのは、ハノイ周辺に韓国・台湾企業が少ないからだという指摘もある。

 このようなストライキに対するベトナム政府の対応は迅速であった。2006年2月に最低月額賃金を626,000ドン(約39ドル)から870,000ドン(約54ドル)に39%上昇させた。これによって労働者の不満は抑制された。物価上昇に対応した最低賃金の上昇は妥当な政策である。もちろん外資系企業にとって賃金上昇は回避したいが、為替レートは傾向的なドン安であるから、ドル建てにすれば、賃金上昇の割合はそれほど大きくならない。

 たとえばカンボジアの最低賃金はドル建て45ドルである。一般にGDP水準から考えてカンボジアの賃金はベトナムより安いと認識されているが、これまで実はそうではなかった。上述のように39ドル程度であった。今回の最低賃金の改訂は、経済水準と賃金水準の格差を是正するという意味もある。(以下続く)

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2006年5月17日 (水)

ベトナム情報(4-1):貿易の現状

 WTO加盟を目前にして、ベトナムの貿易は好調である。第4表によれば、特に米国は、ベトナムにとって最大の輸出相手国となっている。これに対して最大の輸入相手国中国である。かつての戦争相手国であった米国と中国が、それぞれ輸出と輸入で最大となっている。国家の独立を目指したベトナムが、今日では経済成長に邁進していることが理解できる。

 第4表と第5表を参照:「blog45.doc」をダウンロード

 さらに第4表では、シンガポールが輸出と輸入の双方の相手国となっている。これはベトナムから原油を輸出して、石油精製品・ガソリンをシンガポールから輸入していることを示している。せっかくの原油資源がありながら、それが貿易黒字に十分に貢献しない。このためにベトナム政府は中部ダナンに石油精製プラントをロシアの支援で建設中である。この完成によって貿易収支の大きな改善が期待される。

 輸出金額と輸入金額を合計した貿易総額で見れば、その順位は、1.米国(59.20億ドル)、2.日本(56.93億ドル)、3.中国(48.19億ドル)、4.シンガポール(35.81億ドル)、5.ドイツ(19.14億ドル)となっている。ここでも米国との貿易は最大である。さらに中国の貿易額に香港を加えれば、その金額は日本を超える。

 ここで改めて米国と中国の存在感がベトナムで急増していることが指摘できる。貿易相手国の経年変化を見れば、それが明示できるが、それは別の機会とする。

 第5表は、ベトナムからの輸入品の日本におけるシェアが第1位・第2位の品目を示している。「冷凍エビ(シュリンプ及びプローン)」は、最大のシェア(22.8%)であるが、第2位のインドネシア(21.3%)と伯仲している。これに対して「いか」は63.0%であり、第2位の中国(31.7%)の2倍のシェアである。さらに「はまぐり」のシェアも高く、こういった水産物の対日輸出は大きなシェアをもっている。

 健康志向食品が世界的に注目される今日、牛肉よりも魚介類が選好される傾向があると言われている。このような意味で、ベトナム水産物の輸出は今後も好調と予想される。なお、ベトナム戦争時の米軍が散布した枯葉剤の影響が心配だという意見が未だにあるが、写真家・中村梧郎氏によれば、水産物に含まれるダイオキシンはベトナムで検出されていない。それだからこそ日本企業が輸入しているのである。それよりもダイオキシンは日本で高い数値を示すそうである。ベトナムでは戦争後30年間でダイオキシンが拡散・消滅したのに対して、その間の経済活動によって日本ではダイオキシンが増え続けてきたのである。

 また「ミシン針」や「鉛筆の芯」は、ホーチミン市のタントアン輸出加工区のベトナムオルガン針(株)などのように、ベトナム進出の日系企業の対日輸出製品とみなされる。グルタミン酸ソーダ・光ファイバーケーブル・陶磁製電気絶縁用物品(碍子)も同様であると推察される。「女子用の衣類(絹製のもの)」には、日本の和服が含まれていると思われる。手作業の刺繍をほどこした絹製品は、ベトナムで優位性のある製品である。大規模な設備投資に基づく大量生産の中国に対して、高付加価値の手作業品の生産はベトナムの競争力の源泉である。

 ベトナムの貿易品目やその時系列データについては、ここでは省略する。

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2006年5月16日 (火)

ベトナム株式投資の教訓(4)

 ブログのある読者(=知人)から、次のような質問を受けた。取り急ぎ、ベトナム情報の連載を中断して、それに回答しておこうと思う。

 質問:「先生に質問ですが、ベトナム市場に上場している会社の経営成績や製品の国内における評価がまったく把握できないため、日本の投資家も爆発的に増加しないのではありませんか?」

 回答:ご質問は、もっともです。同じ意見をベトナム人も言っています。「ベトナムで公表される業績や利益が信用できません。そう考えると、株式投資はできない。先生、株式投資して大丈夫ですか?」。ベトナム在住のベトナム人ですら、このように言っていますから、ご質問の趣旨は納得できます。しかし、それでもベトナム株式投資は魅力的です。その理由は次のようです。

 ベトナム株式投資のための心構えは、個別銘柄を買うというのではなく、「ベトナムを買う」という発想の転換が必要です。ベトナムの経済成長それ自体を買うのです。そうなると長期的な視点が必要です。また以前にブログで紹介したように、ベトナム企業を見る場合には「蟻の眼」でなく「鳥の眼」が必要です。「蟻の眼」で見れば、ベトナム企業は問題が山積していますが、「鳥の眼」で見れば、着実に改善・成長しています。そこで以下の教訓です。

 8.ベトナム株式投資は長期的に考える。個別銘柄の株価変動に一喜一憂しない。近い将来、中国株のような感覚で株式売買できることが期待される。そう考えれば、今の株価は割安である。

 「ベトナムを買う」ためには、ベトナム株価指数に連動した投資ファンドの商品化が望まれる。ベトナム上場株式30数銘柄。そのすべてをポートフォリオに組み込んで、株価指数と同じ動きをする投資信託商品を購入する。このようなことが実現するのも時間の問題である。こういう商品があれば、お勧めである。 

 個別企業の財務諸表や営業活動を検討して投資決定しないと気が済まない投資家には、ベトナム投資は現状ではお勧めできない。もちろんベトナムの証券会社の窓口に行けば、パソコンで株価チャートを見せてくれて、それぞれの企業の特徴を英語で説明してくれる。でも、本当かな?と思うのが一般的であろう。

 他方、日本の場合はどうか。デイトレードなどで個別銘柄の検討を丹念にする人は少数であろうし、ライブドアや中央青山監査法人の事件を考えれば、日本企業の財務諸表や営業報告書も全面的に信用できないということになる。企業情報の信頼性を確認するために情報武装の必要性があることは、日本もベトナムも同様である。

 9.財務諸表・会計報告書・新聞・雑誌を全面的に信用しない。ベトナム企業の評価は「現場主義」に基づく。多方面から情報武装して風評被害を防御する。

 この教訓9の「現場主義」とは、直接に商品を見て、サービスを受けて、その企業を判断するということである。できれば、その企業経営者にインタビューする。それができないなら、現地の複数のベトナム人に評判を聞く。それが無理なら日本のベトナム人留学生に評判を聞く。それもできないなら、ベトナム人を知っている日本人に聞く。いろいろな人からの直接の情報を収集し、それで企業を評価する。ただし、その中には風評もあるので、事実の是非を吟味しなければならない。こういった風評例は、上場予定のサコムバンク(サイゴン商業銀行)である。

 「証券市場ではこのところ、サイゴン商信銀行(サコムバンク)がホーチミン証券取引所への株式上場申請を取りやめたとの噂が流れている。こうした風説は、投資家の心理やサコムバンク株の価格、株主の正当な権利に影響を及ぼしている。
  サコムバンクは同社ホームページで、ホーチミン証券取引所への株式上場申請を取りやめたとする情報が、誤りであるとした声明を発表した。サコムバンクは株式上場及び新株発行の申請書類を国家証券委員会に正式に提出し、現在同委員会が審査中である。」

 この真相は、次のような内容である。「サコムバンクは申請書類の中に欠落事項があったために国家証券委員会の承認を受けられなかった。これから書類を修正してもう一回申請する」。このようなことがあっても、この上場予定株式の現在価格は下落していない。現在のサコムバンクの投資家は、もともと未上場株式を買っているのだから、少しばかり上場が遅れたからと言って「狼狽売り」しないと考えられる。したがって株価は下落しない。

 ともかくベトナムは、うわさ=口コミの社会である。株式投資において風評被害を受ける可能性は大きいと思われる。前述の教訓9のように情報武装が求められる。また同時に教訓8のように長期視点で考える。「蟻の眼」でなく「鳥の眼」で見ることである。

 さて、最初の質問に戻って、果たして「日本の投資家が増えない」かということである。私見では、ベトナム株式投資の初期段階(=現状)は、成功もあれば、失敗もある。なぜなら現在は、その後に控える有力国営企業の本格的な上場の準備段階だからである。準備段階だから、信頼できる優良株式が見つからない。したがって思ったほどに利益も出ない。法整備も未完了である。ここでベトナムを見限った投資家は、その後に後悔することになるかもしれない。主演男優・主演女優・メインディッシュが出てくる前に退席するようなものである。

 以上の私見を納得していただけるかどうか。日本の投資家が増えるかどうかは、それに依存している。

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2006年5月15日 (月)

ベトナム情報(3ー2):直接投資(続)

 JETROのハノイ所長・石渡健二郎氏によれば、日本企業がベトナムに投資する理由は次の5点である。出所:Saigon Times, YOUR FDI GUIDE, No.2, 6, February 2006, p.6.

 ①地理的な優位性がある。2つの巨大市場である中国とアセアン諸国をベトナムは結びつける。②政治的に安定している。③ほかの周辺諸国に比較して労働者の賃金は低い。④しかもベトナムの労働者は勤勉である。⑤ベトナム人の対日感情は良好である。

 以上に加えて、多数の日本企業は中国進出の代替もしくはリスクヘッジとしてベトナムをみなすようになっている。これらはJETRO調査に基づいた結果である。さらに私の知人の中小企業経営者は、ベトナム人が日本人に似ていることをベトナムの魅力として説明した。

 「宿泊ホテルでの従業員の仕事ぶりを見ていると、フロントで清掃している従業員の仕事を、その側にいた警備員が手伝っていた。自分の職務しかしない従業員が外国で多い中で、このように従業員がお互いに助け合うことができる国は珍しい。これがベトナムの魅力だ。」

 この事例は、ベトナム国民の気質の一例を示している。私の調査によれば、ベトナム人従業員の勤労意欲の源泉は、金銭的報酬よりも「働きがい」などの精神的満足であるという結果がある。参考:Comparative Characteristics of Vietnamese Workers among State-owned, Japanese and Korean Companies in Vietnam: Part I Part II1,『流通科学大学論集』第12巻第3号(20043月)、第13巻第3号(20053月)。これは、少なくともベトナム人の精神文化が、個人主義・利己主義だけではないことを示している。私は、儒教精神が日本以上に色濃くベトナムに残っていると考えているが、その儒教精神の内容の明確化は議論の余地がある。しかし他の東南アジア諸国と違って儒教文化がベトナムの特異性であるという指摘は間違いない。

 第3表は、昨年の国別の直接投資を示している。投資金額が多い順に、シンガポール・台湾・日本・韓国・香港となっている。ここで注目すべきは、投資プロジェクトの資本総額と実施資本額との相違である。前者を後者で除した割合は、①シンガポール:47.6%、②台湾:37.1%、③日本:72.9%、④韓国:46.7%、⑤香港:53.9%である。この投資実施率が低いということは、プロジェクトを申請だけしたが、実際には未着工であることを意味している。この場合、認可済みのプロジェクトを後に転売するという投機的な目的も含まれている。

 投資プロジェクトの実施総額で日本は最大であり、その実施率も高い。さらに日本のODA供与も最大である。これらのことは、ベトナムにおける日本に対する存在感・信頼感を醸成している。参照:「blog34.doc」をダウンロード

 第3表によれば、いわゆるタックスヘブンの国(地域)が含まれている。英領バージン諸島、ケイマン諸島、バーミューダである。これらの国からの投資主体は、主に投資運用会社など現地ペーパーカンパニーと思われる。たとえば日本から直接ベトナムに投資して利益が出れば、それを正規に日本に送金できる。その後、日本で最初に法人課税され、さらに利益配分の段階で各投資家に個人課税もされる。このような二重課税を回避して節税するために、法人税のかからないタックスヘブンの国(地域)を経由させて外国投資する場合が多い。ベトナム政府もこれが国内の不正取引に利用されないか注目している。

 以上、直接投資の現状を概観した。その経年的・産業別の資料によって、さらなる分析が可能であるが、それは別の機会に譲る。 

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2006年5月14日 (日)

ベトナム情報(3ー1):直接投資

 ベトナムに対する日本の直接投資(FDI)が好調である。ベトナム計画投資省と国際機関アセアンセンターが主催した2006年2月の「ベトナム投資セミナー」において講演した市川匡四郎・JICA専門家によれば、日本の対ベトナム投資は2005年に件数と投資実行額の双方で過去最高を記録した。まさに「第2次ベトナム投資ブーム」の到来である。

 「第1次ベトナム投資ブーム」は、米国の対ベトナム経済制裁が撤廃された1994年の前後と考えられる。当時は、トヨタ・ホンダ・ソニー・松下電器・三洋電機などの大手企業が進出した。大手企業の投資が一巡した後、中小企業の進出が期待されたが、それが大きな動きにはならなかった。今日、大手企業の工場増設が続き、それに伴って部品製造の中小企業の進出が顕著になってきた。

 このような背景には、国際環境に適応しようとするベトナムの努力がある。ベトナムはアセアン加盟を果たし、本年11月にはAPECサミットをハノイで開催するまでになったのである。またWTO加盟は時間の問題とみなされている。

私見では、第1次と第2次の投資ブームの相違は、次のような点である。

 (1)今日では、外国企業や市場経済についてベトナム政府の理解が深まった。当時の政府は「進出させてやる」という態度であったが、今日では「進出していただく」という意識に徐々に変わってきている。より具体的には、外国資本100%の投資も可能となった。英語を理解する人材が豊富になった。投資認可も簡易化・短期化された。これらの投資環境の改善には、ホーチミン市の日系企業と市当局者との間で始まった「日越投資・貿易ワーキンググループ」が大きな役割を果たしてきた。その成果が「日越共同イニシアティブ」や「日越投資協定」の締結となって今日に至っている。

 (2)当時進出した富士通コンピュータ・松下電器・マブチモーター・トヨタ・ホンダ・キャノンなどが、今日では成功企業となっている。これらの企業が蓄積してきた経営ノウハウが今日では広く活用できる。それに伴って、これらの大企業に部品供給する企業がベトナム進出をするようになってきている

 (3)日本料理店がホーチミン市のみならずハノイでも急増し、日本人学校も整備・改装されている。JICAによるODA支援は道路・橋梁・港湾のみならず、ビジネス・日本語・ITの教育にまで及んでいる。さらに多数の各層のベトナム人を日本研修のために招聘してきた。ベトナムと日本の関係は経済的・人的に発展・深化している。

 (4)ベトナム国内市場の発展は、ホテル・タクシー・レストラン・アパートなどを増加させた。現地の生活環境は驚異的に改善された。これまで輸出加工型企業が成功すると言われてきたが、即席麺の製造販売をするエースコックの成功事例は、国内市場志向企業でもベトナム市場で十分に健闘できることを証明した。

 (5)第1次ブームが大手企業の先行進出であったが、第2次ブームは中小・中堅企業が投資している。このことは、1件当たりの投資金額が第1次に比べて第2次が小さいことが示している。さらにトヨタ・ホンダ・キャノン・三洋電機・JUKI・日本酸素など第1次ブームで進出した大手企業の追加投資も含まれている。

 これらの大手企業の中には松下電器のように南北統一以前からベトナム進出していた企業も含まれており、純粋に初めてのベトナム進出というわけではなかった。南北統一前の南部ベトナムでの活動経験をもっていたのである。これらの大手企業は資金的・人材的にも体力があるために、ベトナム側の政策不備・政策矛盾や1998年「アジア通貨危機」後の成長低迷期にも耐えることができた。

 この「忍耐の時期」に進出日本企業の経営者は、在ベトナム日本大使館の協力を得て、ベトナム政府との交渉を粘り強く進めて政策の改善・改革を着実に達成してきた。この時期に、ベトナムは「暴力バー」にも似ているといった批評をするマスコミ(古森義久「「投資の楽園」ベトナムの惨状」『諸君』1998年12月号、文藝春秋、pp.176-183.)もあった。確かに当時のベトナム政府は市場経済における政策運用に慣れておらず、問題点は多々存在した。それを批判して終わるのか、その改善・改革に取り組むのか。今日の第2次投資ブームについて、これらの批判者は何とコメントするのであろうか。自らの不明を恥じ入るか、在ベトナム日本企業やベトナム政府の努力に敬意を払うかのいずれかであろう。

 これからベトナム進出する日本企業は、これら先人の改革の努力を忘れてはならない。

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2006年5月13日 (土)

ベトナム株式投資:「ベトナム・ドラゴン・ファンド」第2次募集説明会の開催

 5月13日(土)午前10時から12時まで、大阪ヒルトンホテルで「ベトナム・ドラゴン・ファンド(VDF)」第2次公募の説明会があった。主幹事であるキャピタル・パートナーズ証券株式会社が主催し、同社の筒井豊春社長と、運用会社であるドラゴン・キャピタル・マネジメント・リミティッド社の運用者であるジョン・シュリンプトン氏が講演した。

 筒井社長の話で印象に残ったのは、元金保証の金融商品は安全Dsc07472ではないと言うことである。つまりインフレになった場合、元金保証の安全商品と思っていても、それでは購買力が維持できないリスクが発生する。インフレの時代ではハイリスク=ハイリターンの商品を資産配分の中に加えて、リスクを取ることが安全ということである。

 :上図は説明会の様子です。クリックすると大きく見えるようになります。ただし照度が低く鮮明な写真ではありません。

 シュリンプトン氏は、2006年5月がベトナムの歴史上で画期的な時期であると最初に指摘した。(1)来週に国会が召集され、新しい大統領や内閣が選出される。これは、これまでに比べて経済社会改革を最も推進する政権の誕生を意味する。(2)現在ベトナム貿易相が、WTO加盟の最後に残った交渉相手国である米国を訪問している。おそらくベトナムのWTO加盟は間違いないと考えられる。(3)新しい国会の最初の仕事は、証券取引法の制定であり、それによって資本市場の整備が大きく前進する。

 その後の質疑応答では、会場から次の質問3点が提起され、シュリンプトン氏が回答した。

 (1)中国ではWTO加盟後に上海株式市場の株価は下落した。ベトナムに対するWTO加盟の影響は? 解答:WTO加盟に対する期待は大きかったが、その後の中国が期待はずれになったのが株価下落の原因である。加入後に法律を制定・実施する約束だけで中国は加盟を承認されたが、実際に加盟した後は、そういった法律の制定・施行が遅延した。これに対してベトナムの場合、このような中国の先例があるのでWTOは加盟条件を厳格にして、加盟前に法律を整備することを条件とした。たとえば統一企業法や統一投資法、知的所有権法などがすでに制定されている。WTO加盟によって今まで通りに市場開放が進展すると予想される。

 (2)ベトナムの政治体制は安定しているか?カントリーリスクはないか? 解答:ベトナムの市場経済化は20年間の歴史をもっている。これまでの内閣は着実に改革は進めており、さらに改革推進を進めると期待される新内閣に政権は円滑に移行するであろう。また民族や宗教の対立がないので国内紛争の要因はない。世界で不足すると予想されるエネルギーや食料品のベトナムは輸出国である。これに対して中国は輸入国となっている。共産党の改革も進み、汚職防止を強化し、共産党員の企業経営者を容認した。このようにベトナムは成熟した政治体制をもっているとみなされる。以上、カントリーリスクは小さい。

 (3)ベトナムは他の国々とどこが違うのか? 解答:ベトナムは東南アジアと言うよりも、北東アジアの最南端の国と考えるべきである。つまりベトナムは日本・台湾・韓国につながる儒教国とみなされる。歴史的に中国の影響が強く、ほかの東南アジアの国々とは国民性が相違している。それは労働力の質が優れていることにも関係している。

 第2次公募の『目論見書』によれば、第1次公募資金の投資先の内訳が公表されている。私は、30数億円の資金を上場株式・上場予定株式に投資できないと予想して、そのように指摘したが、全額の投資が完了している。上場株式に20.7億円、国内非上場株式に6.3億円、国内上場債券(国債)に10.5億円となっている。合計37.5億円である。

 私見では、VDFは優良株を買うというよりも、買いやすい株を買っているように思われる。ビナミルクには7.0億円を投資し、VDF純資産の19.11%を占めている。ビナミルクの株価が上昇しないはずはないが、そこでは上場前の未公開株式を購入した株主が最大の利益を獲得しているはずである。

 このようなVDFの特徴は、次の基本投資戦略に表明されている。(1)ベトナム上場企業については、利回りが高いが、低い株価に過小評価されている銘柄。投資家の需要・人気が高い銘柄。(2)上場予定企業については、低い株価に過小評価されている銘柄。潜在的な市場力があり、高い利回りが期待される銘柄。つまり優良企業に投資という表現ではなく、「低い株価に過小評価」が投資選定のキーワードである。

 この投資戦略は正解である。ベトナムの「優良企業」と言っても、必ずしも情報開示や監査制度が信頼できない場合が多いから、本当に優良なのか確認できない。「低い株価」の株式に投資を集中させて、そのこと自体で株価を上昇させる。それに第2次公募資金を追加投資すれば、さらに株価は上昇する。そうしておいて「長期持続」しておけば、株式市場に新規資金が流入する毎に、それに対応して株価が上昇する。

 ベトナム株式市場の成長は、資金量から見てVDFが先導するとみなされる。一般株主にとって、こういった機関投資家の売買動向は、日本市場でも同様であるが、目を離すことができない。

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2006年5月12日 (金)

ベトナム情報(2):経済成長率

 2005年12月にマレーシアのクアラルンプールで第1回「東アジアサミット」が開催された。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国10カ国プラス日本・韓国・中国さらにオーストラリア・ニュージーランド・インドを加えた16カ国の首脳が、「東アジア共同体」形成に向けて合意した。添付ファイル第1表は、これらの国々とBRICsの経済成長率(実質)を示している。

 第1表と第2表:「blog12.doc」をダウンロード

 戦後の経済成長国として、これまで日本を始め韓国・台湾が注目されてきたが、今後の経済成長国としてBRICsが注目されている。確かにC(中国)の経済成長は7.5~9.0%となっており、第1表の中では最も堅調な高成長率を示している。しかしR(ロシア)やI(インド)の成長率にはバラツキがあり、B(ブラジル)は2003年にマイナス成長となっている。

 以上のようにBRICsの経済成長は、中国を除けば、やや「かけ声倒れ」という印象もなくはない。これに対してベトナムは、6%後半から7%の成長を示し、明らかに中国に次ぐ経済成長国と言って間違いない。

 戦後の日本・韓国・台湾の高度経済成長の要因について、1980年代後半に米国の社会学者が注目・研究したことがある。そこでは、これらの国々の共通点として儒教社会であることや、企業集団または財閥の存在が指摘された。社会主義思想の影響で中国は儒教の影響が希薄になっているようにも聞いているが、筆者の印象では、まさにベトナムは儒教社会である。儒教が経済成長に与える影響が大きいとするなら、ベトナムは日本・韓国・台湾に次ぐ経済成長を達成するという予想ができる。

 添付ファイル第2表は、ベトナムの経済(GDP)成長率を所有形態別・産業別に示している。2004年について見れば、鉱工業・建設が経済成長の推進役を果たしている。特に電力・水道などインフラ整備が12.0%の成長となっている。2005年には水不足のために水力発電が制限され、ハノイで一定時間の停電があった。安定的な電力供給は経済成長の基盤である。この意味では、電力・水道の重点的な成長は政府の妥当な政策である。

 これに対して、農業(2.9%)と林業(0.8%)が低成長である。ベトナムはコメとコーヒーの世界第2位の輸出国であるが、これらは世界市場の価格変動の影響を受ける。輸出が増加したとしても、世界市況が低調であれば、経済成長の上昇には貢献しない。これが、低成長の理由であると思われる。また、WTO加盟を果たせば、農産物の輸出入の自由化が迫られる。私見では、WTO加盟はコメなどの農産物の輸出増加に貢献すると予想される。そうであれば、農業の成長率は向上する。

 ベトナムの地域的な所得格差は、都市部と農村・山岳部で発生している。この是正のために、農業の成長促進は優先的な課題と位置づけられるべきである。これは、政治的安定にとって不可欠である。

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2006年5月11日 (木)

ベトナム情報(1):連載のスタートにあたって

 今回からベトナム情報を連載する。中断する場合もあるが、これでもかというほど連続してベトナムについてメッセージを発信してみようと思う。これは、部分的ではあるが、いわば研究室の公開である。大学の研究室は通常は個室である。そのドアや壁をガラス張りにして、中で何をしているのかを見えるようにすることを想定している。もちろん実際、そんなことをしたら落ち着かないし、私の場合、大学よりも自宅で仕事することも多い。ブログという公開メディアがあるからこその実験である。

 こういった実験の動機は、本音を言えば、日々の成果の発表を自分に強制することである。なかなか本を読んだり、資料を見たりしても、それについて書かない場合が多い。それほどに私が怠惰ということなのだが、それを矯正するために、「毎日ブログを書く」という強迫感を利用するという趣旨である。

 今日は初回に、今後の内容を紹介しておく。これができれば、ベトナム投資に関する簡単なガイドが1冊完成するようにしておきたいと思う。

1.ベトナムの経済の現状:活況を示すベトナムを数字と事例で示す。①経済成長率、②直接投資、③貿易統計、④その他の統計指標

2.なぜベトナムか:ベトナムの発展要因を示す。①政治的安定、②貧富の格差、③教育水準、④汚職の問題、⑤対日感情

3.国内市場の魅力:ベトナム国内の高度経済成長を描写する。①生活水準の向上、②いくつかの統計指標、③G7マートの戦略(注:紹介済み)、④株式投資

4.ベトナム投資の情報源:ベトナムでの成功は情報武装から始まる。①ベトナム情報源の使い方、②先輩の話の聞き方、③ベトナムのことはベトナム人に聞く、④情報の活用方法

5.ベトナムの近隣国:ベトナムをめぐる国々の魅力を語る。①中国、②ラオス、③カンボジア、④タイ。

 以上、○の項目は合計22。毎日書いて約3週間。6月初旬の完結を目標に、さあ頑張ってみよう。

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2006年5月10日 (水)

大売り出しだよ!上田ゼミ:研究演習の学生募集始まる

 大学2年生の後期から始まる研究演習(ゼミ)の学生募集のために、教員のプレゼンテーションが始まった。昨年までの私のゼミは、先輩に後輩の募集を任せていたのだが、今年から私自身が募集・選考することになった。これには次の事情がある。

 1.これまで情報学部の学生だけの募集であったが、今年から情報学部と商学部の共通ゼミとして両学部の学生を募集することにした。その理由は、これまで企業経営の全般について研究指導してきたが、今年からベトナム・ラオス・カンボジアに焦点を合わせた研究指導Dsc07464 に方向転換するからである。それに伴って教材も英語を使用するので、これまでの情報学部の学生応募数が激減すると予想される。そこで商学部の学生にも募集の範囲を拡大することにしたのである。なお、私は流通科学大学の開学当初は商学部に所属していたので、特に学部にこだわっているわけではなく、さらに現在も商学部の学生向けの講義を複数担当している。

 :ゼミ説明会の様子です。クリックすると鮮明に大きく見えるようになります。説明しているのは私ではありません。私の発表は次の次でした。

 2.学生の前で教員がプレゼンテーションすることが教授会で決定された。どちらかと言えば、学生が好きにゼミを選択すればよいので、こちらから学生に接近する必要はないと思っていた。元学長の伊賀隆(神戸大学・流通科学大学)名誉教授はゼミ学生の選考を抽選でされていた。「弘法、学生を選ばず」である。とても私には真似できないが、とりあえず先輩学生に選考を任せていたのである。しかし学生サービスの一環として、先生の「顔見世」の制度が今年から導入された。もちろんこれまでにも、ゼミを希望する学生の質問に個別に研究室で対応していたから、あえて顔見世に反対しなかったのだが、どれほどの効果があるのかは検証の必要がある。

 この教員による顔見世のゼミ説明は10分間である。そこで高邁な学問を語っても、学生の(注:先生も)消化不良になる。そこでプレゼンの要旨は、楽しく役に立つゼミですよというメッセージを学生に伝えることにした。私は、写真を中心にして韓国・ベトナム・ラオスの海外ゼミ旅行や企業研修やボランティア活動について話した。

 以上、果たして何人の学生が集まるか。また、その後の選考を経過したゼミ学生には、このブログの姉妹編である「ゼミ生の部屋」に登場してもらおうと思う。予定の問題は「志望の動機は何でしたか」である。

 なお本音を言うと、ベトナム人留学生が初めて、昨年は大学院修士課程に、今年は商学部1年生に入学してきた。私が特に勧誘したわけではない。このようなことを考えると、流通・マーケティングを研究したいというベトナム人学生が今後は自然に増加するように思われる。それに対応するには、商学部からのゼミ生も応募できるようにしたいと考えた。ベトナム人・中国人・韓国人・ラオス人などアジアの留学生がゼミに4~5名いて、それに日本人学生を交えてアジアや自分の将来をお互いに語り合う。そこから新しいビジネスが生まれたり、息の長い交流が始まる。これが私の「夢」のひとつである。

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2006年5月 9日 (火)

堺市で「ベトナム投資セミナー」開催

 5月10日(水)午後2時30分から、堺市の堺商工会議所・2階大会議室(電話:072-258-5581)で「ベトナム・ハイフォン市投資促進セミナー」が開催される。

 主催者は、堺国際ビジネス推進協議会ハイフォン市人民委員会である。私が副理事長を務める日越経済交流センターも協力団体に加わっていることから、ここで開催を紹介する。「VNseminar.DOC」をダウンロード

 堺市といえば、本年4月1日から全国15番目の政令指定都市になり、大きな権限を市役所がもつことになった。大阪府から財源や権限も委譲され、より住民に密着した堺市独自の施策が可能となる。このような意味で、最初の外国投資セミナーの対象国がベトナムになったことは偶然ではないと思われる。

 17世紀の朱印船貿易の時代に堺とベトナムは交易で結ばれていた。ベトナム中部のホイアンはダナンから自動車で1時間ほどに位置しているが、当時そこに多数の日本人が住居していた。その中に堺の人々がいたことは間違いない。数年前であるが、堺市に居住されているご家族が、祖先の墓石を探しにベトナム訪問されたということを聞いた。残念ながら、そのご家族のお名前を失念してしまった。これは、当時の市会議員・加藤均さん(堺国際交流協会理事長)のご紹介であった。そのほかに現在はベトナム大使館の参事官のズオンさん(当時は大阪総領事館副総領事)と一緒に堺市助役を表敬訪問した。なお、堺市とベトナムの歴史的な関係は「堺歴史文化交流会議」によって紹介されている。

 写真は、ホイアンの郊外にある日本人の墓石である。江戸時代に鎖国となり、日本に帰国できなくなっDsc04108 た日本人が眠っている。そのように考えていたのだが、それは先入観であった。その墓石の石板には次のような解説がベトナム語と日本語で記されていた。それをそのまま引用する。

 ;写真をクリックすれば、より鮮明に拡大した画像が表示されます。

 「1647年、日本の貿易商人谷弥次郎兵衛(たにやじろべえ)ここに眠る。言い伝えによれば、彼は江戸幕府の外国貿易禁止令に従って日本に帰国する事になったが、彼はホイアンの恋人に会いたくてホイアンに戻ろうとして倒れた。この彼の墓は母国の方向、北東10度を向いている。この遺跡は17世紀にホイアンが商業港として繁栄していた当時、日本の貿易商人と当地の市民との関係が大変友好的であった事の証である。」

 この谷弥次郎兵衛が堺の出身であるかは不明である。しかし当時のホイアンにおける堺の人々が、彼と同じような友好的な環境にあったことは間違いない。この谷弥次郎兵衛は、日本よりもベトナムの恋人を優先する。日本を捨てて恋人の元に寄り添って暮らすことを選択する。これは、当時の日本の生活が辛い状況であったことにも起因しているように思う。ストレスの高い仕事や煩わしい人間関係を脱出して、ベトナムで恋人と自由に暮らすという「夢」は現代人にも通用する気持ちである。谷弥次郎兵衛の墓石は日本を向いているのだが、それは「望郷の念」を後世の人々が推測しただけであって、本当に彼は日本に帰りたかったのであろうか。

 堺市には羽衣国際大学があり、前述の加藤均さんの仲介でダナン大学と姉妹提携している。ベトナムとの交流に現在も熱心な大学である。このように堺市とベトナムは深く幅広い関係を作り上げてきた。そして今回は、野村ハイフォン工業団地を中核にした港湾工業都市ハイフォンの投資セミナーが開催される。

 このセミナーを契機にして、これまでの堺とベトナムの友好交流関係に加えて、経済協力関係のますます発展が期待される。

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2006年5月 8日 (月)

上田義朗セミナー:祝!ブログ連続150日を達成

 昨年の12月20日から始めて、今日で150回目のブログとなる。これほど毎日続けた個人的な日課は今までに経験がなかった。

 たとえば150日間、英語やベトナム語の単語や文章を1つか2つ覚えたら、もっと上手に英語やベトナム語を話したり、読めたりできるだろう。150日間、ジョギングや「ジョーバ」(松下電工の室内用の乗馬マシーン)を続ければ、もっとスマートな体型になっていた。150日間、血圧を計測し続ければ、健康管理の貴重なデータになっていたはずである。150日間、恋人にメールを送り続ければ、絶対に好きになってもらえるか、またはストーカーとして警察から注意されていただろう(注:これは「たとえば」の話である)。

 なぜ150日間継続することができたのか。いろいろ理由はあるが、やはり基本はゼミ学生に読んでもらいたいという気持ちである。自分の先生が何を考えているのか。講義以外では何をしているのか。学生は知りたくないかもしれないが、こちら側としては知っておいてほしい。しかし昨今の学生は昔よりも忙しくて、ゆっくり話す時間がない。それなら、せめてブログを読んでほしい。

 このブログの連続記録が今後何日続くか不明だが、当面は書くことがなくなるまで続けるつもりである。しかしながら何でも書けばよいというわけにはいかない。こちらは氏名と立場を明示しているのだから、それ相応のことを書かなければと思っている。この意味では、本当に書きたいことを書けないということもある。匿名なら、もっと自由に無責任に発言できると思う場合も多い。そうは言うものの、今でも無責任な部分が多々ある。

 ともかく黄金週間の連休も終わり、しばらくは仕事である。おそらく5月末か6月に短期のベトナム出張をしなければならないであろう。夏休み期間中の調査研究の準備が目的である。さあ今日から、気合いを入れて「ネアカのびのびへこたれず」である。

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2006年5月 7日 (日)

映画「名探偵コナン:探偵たちの鎮魂歌」を見る

 映画「名探偵コナン」は10年間の歴史をもっている。ほとんどの映画版を私は見ているが、今回は10作目。コナンや服部平次など少年探偵のほかに怪盗キッドなど総出演。話の展開が複雑になっていて、ややストレスがたまる。また犯罪の動機も説得的でない。そして最後は危機一髪のカウントダウンでクライマックスを迎える。これは、すでに見たマンネリ的な光景である。さすがに10作目となると脚本も難しい。

 ただし、全体のストーリーの中にいくつかの「秘密」が忍ばせてある。うっかりしていると、気がつかない場面やセリフがある。それをネタにして、映画後も会話が弾む。さすがに、この工夫がうまくできていて大人の鑑賞に耐えるようになっている。子どもの目は年々肥えてくるから「子どもだまし」は通用しない

 なお、名探偵コナンのコミック本のベトナム語版が出版されている。果たして版権はどうなっているのか。最近、販売されていないようなので、数年前のベトナム語版は違法だったのだろうか。または、あまり人気がなかったのか。私見では、現代的な日本社会を背景にしたコナンは、ベトナムの子どもたちには受け入れ難いような気がする。他方、「ドラえもん」がベトナムで人気のある理由は、のび太・ジャイアン・スネ夫などの一般生活の描写にベトナム人が親近感をもつからであると思われる。これは私の仮説である。

 コミック(マンガ)は、カラオケと並んで世界に通用する日本の現代文化のひとつである。グローバルな視野から日本のコミック文化の客観的な分析があってもよい。これは、かなり前に神戸大学経済経営研究所に在職されていた吉原英樹教授が述べられていたことである。最近になって、それを私も実感できるようになった。

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2006年5月 6日 (土)

元吉本新喜劇「谷しげる」さんのこと

 先日、自宅近くの公園で「子どもカーニバル」という催しがあり、元吉本新喜劇の「谷しげる」さんが、正真正銘の「猿回し」の芸で1日2回の公演をされた。「谷しげる」と言えば、吉本新喜劇の黄金時代を築いた人々の一人である。

 「ご機嫌さ~ん」・「あ忙し、あ忙し」などのギャグは有名だったし、木村進・間寛平・坂田利夫の丁稚役に対して谷さんは大番頭役であった。確か旦那さんは前田五郎、番頭は伴大吾であった。今でも私は時たま「あ忙し、あ忙し」が口に出ることもある。懐かしい「谷しげる」の生出演である。これは見に行かなくてはならない。

 たまたま同年配の同僚教授に「吉本の「谷しげる」知ってます?」と聞いても、「知らない」という返事であった。おそらく同教授は若い頃に勉強ばかりしていたか、彼の出身が関西ではないことが知らない理由であると思われた。他方、かなりマニアックな世界で私は青年時代を過ごしたのかもしれない。今年1月に他界した母の「百ヶ日」の法事を連休中にすませた。毎週土曜日のテレビで吉本新喜劇を母と一緒に見て大笑いをしたことを思い出す。

 約30分間の公演は大人でも楽しかった。谷さんは、周囲の子どもDsc07452の観客のために猿が暴れないことに細心の注意を払われていた。この猿は「小太郎」という名前で、かなり長い相方のようであった。また谷さんの話術はさすがである。屋外の観客の注意を引くためにゆっくりした大きな声で話され、うなずいてくれる笑顔の観客(私のこと)には目線をあわせて語りかける。舞台公演と違って観客の集中力が散漫になる野外公演の特別な苦労や難しさが、谷さんの様子から実感させられた。

 注:上記写真は、クリックしていただくと、大きく鮮明に見ることができます。谷さんと小太郎が写っていますが、小太郎は毅然としていて、谷さんは当惑した表情です。

 猿芸の前に谷さんは、吉本興業を退職後の経歴を簡単に話された。俳優の仕事のために上京し、若山富三郎の事務所に所属したが、若山氏が死去。山城新吾の紹介で奥さんの事務所に移ったが、その奥さんが山城新吾と離婚。このように東京では所属事務所を転々とし、余り仕事に恵まれなかったようなことを話された。

 先日、島田紳助の相方であった松本竜介氏が不遇の死をとげた。いわゆる芸人の末路の悲哀を感じさせる出来事であった。その前には同じ吉本新喜劇の岡八郎が他界している。しかし谷さんの小太郎を操る身のこなしは軽やかで、まだまだお元気の様子であった。

 私の青春時代の「谷しげる」はもはや存在しないが、新しい「谷しげる」には一層の活躍をしていただきたいと思う。これからの高齢化社会において、「団塊の世代」の人々は元気な谷さんを見て、大いに励まされるに違いない。谷さんのご健康とご発展をお祈りしたい。

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2006年5月 5日 (金)

それほどベトナムの汚職は深刻か?

 先日に終了した第10回ベトナム共産党大会において、汚職の克服・防止が強調された。これ以上の汚職の蔓延は、国民の共産党不審を招き、政権が不安定化すると懸念されたからである。しかし、ほかの国々に比較して、それほどまでにベトナムの汚職は深刻なのであろうか。

 東アジア7カ国に関する2005年夏のICS(Investment Climate Survey:投資環境調査)によれば、「汚職はビジネスの制約になりますか?」という質問に対して、「いいえ」・「少々」・「深刻または多大」という選択肢3つで回答された結果は、次のように集計される。

 「いいえ」:①マレーシア(53.8%)、②ベトナム(52.3%)、③タイ(49.7%)、④フィリピン(40.6%)、⑤インドネシア(29.3%)、⑥中国(24.1%)、⑦カンボジア(4.7%)。

 「少々」:①中国(48.5%)、②カンボジア(39.4%)、③タイ(32.1%)、④マレーシア(31.7%)、⑤インドネシア(29.2%)、⑥フィリピン(24.3%)、⑦ベトナム(17.8%)

 「深刻または多大」:①カンボジア(55.9%)、②インドネシア(41.5%)、③フィリピン(35.2%)、④中国(27.3%)、⑤タイ(18.3%)、⑥マレーシア(14.5%)、⑦ベトナム(14.2%)

 以上の結果を見れば、マレーシアと並ぶほどにベトナムの汚職の程度は小さい。これに対してカンボジアの汚職は極めて深刻であることを示している。ただし、この調査結果には次の注釈がつく。 

 1.ベトナムでは汚職が当然とみなされているために、この調査に回答した経営者がビジネスの制約と考えていない可能性がある。つまり汚職はビジネスに「織り込み済み」である。ただし、これは他国の場合も同様である。「汚職がビジネスの制約になる」という経営者の認識の程度は、国によって様々である。

 2.実際、ベトナムにおける賄賂や贈り物の平均支払金額は、各1件当たり次のように推定されている。関税当局(360万ドン=約225ドル:1ドル=16,000ドン)、税務署(340万ドン)、公安当局(190万ドン)、市場管理当局(190万ドン)、環境当局(140万ドン)、事業登録認可当局(120万ドン)。そのほかの人民委員会、労働社会保険当局、火災・建設安全・建築検査当局には平均100万ドン未満である。

 3.しかしながら、多くの回答者は賄賂を贈っていないと明言しており、贈ったとしても平均の賄賂金額は180万ドンである。これらの賄賂の支払いは年に数回に渡るが、ベトナムにおいて企業が支払う賄賂金額は他国に比べて多額とは言えない。

 上記の数値と記述は、2005年12月6日~7日にハノイで開催された「ベトナム諮問グループ合同支援報告会議」(Joint Donor Report to the Vietnam Consultative Group Meeting)において発表された『ベトナム発展報告2006:ビジネス』(Vietnam Development Report 2006: Business)(pp.47~49)に依拠している。

 ベトナムの汚職・贈収賄は、以上のように日常的に行われているが、どちらかと言えば些少である。ただし「日常的」ということについて、一般国民の間で不満が高まっていることも事実であろう。汚職追放といった精神論的なスローガンではなく、公務員給与の引き上げなどの具体的な対策が抜本的な改善のためには強く望まれる。

 私見では、これから進出する日系企業は、以上のような汚職が普通と考えておくべきである。ただし、これは汚職というのではなく、お世話になったお礼の意味を込めたお中元・お歳暮と考えるべきである。金額もその程度の感覚である。財政逼迫のベトナム政府に代わって受益者が公務員に支払う「給与補填」と考えてもよい。

 このような「贈賄」を絶対しないという日本企業は、日本では当たり前に多数存在するが、そういった企業のベトナムでの活動は円滑に進行しているのであろうか。ベトナムでは「町内会の会費を払わない住民」ような存在にならないのだろうか。政府が汚職禁止を言っているのだから、そういった企業が非難されることはないが、人間関係は良好であるはずがないと想像される。

 ほかのアジア諸国に比較して、ベトナムの汚職は総じて軽微である。そのように考えれば、次は「郷に入っては郷に従え」ということになる。もちろん「お中元」・「お歳暮」の範囲を超える要求の場合、断固として拒否する毅然とした態度も必要となるだろう。ベトナム人当局側も図に乗ってはいけない。このような硬軟を併せもった柔軟な姿勢が一般に国際ビジネスでは求められるのではないか。 

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2006年5月 4日 (木)

ベトナム株式投資ファンドの動向:「正規軍」対「ゲリラ軍」

 ベトナム株式投資の入門書が発売された。新興国市場の急成長を楽しむ会編著『B(V)RICs投資スタートBOOK』インデックスコミュニケーションズ、2005年5月20日(1200円)。副題は、「予算1万円から始める!」、「誰でもわかる!できる!儲かる!」となっている。この(V)がベトナムである。日本からの距離を考えて、ブラジルのBの代わりにベトナムのVを入れて、アジアのヴリックス(VRICs)と命名してもよいかもしれない。

 ベトナムでは上場株式の売買は難しいので、投資信託を買いなさいというのが同書の内容である。しかし日本語で読めるベトナム関連のHPやブログも紹介され、将来の日本の証券会社を通しての売買開始に今から準備しておきなさいという内容になっている。

 その中で当面のベトナム投資は、投資信託を通して行うことになる。このブログで紹介しているように、すでに発売が終了した「ドラゴンファンド」と「民営化ファンド」の2本を同書は紹介している。この中で「ドラゴンファンド」が第2次募集の説明会を5月13日に大阪、14日に東京で開催予定である。筆者の情報では30億円、別の情報では50億円を日本全土で集めた第1次募集に加えての第2次募集である。

 すでに募集した30~50億円の全額がベトナム株式にすでに投資されたとは考えられない。今後の上場予定会社の株式取得に向けて資金を現金を含む流動性の高い資産で保有していると想像される。さらに4月27日にハノイで韓国の投資運用会社が、韓国の投資家を対象にして5,000万ドル集める投資信託ファンドを設定すると発表している。

 このような投資ファンドは、募集資金が多額になればなるほど、手数料収入も多くなる仕組みである。ともかく資金を集めれば収入が入る。しかしその資金の大部分は、将来の未公開株の投資のために現金で保有される。それでもベトナムの預金金利は10%近くあるから、日本に比べて高い利回りが期待できる。しかし株式投資に比べて現金を保有すれば、その「投資効率」は低下する。

 投資に必要な資金を必要なだけ募集するのではなく、予め資金を大量に集めれば、それだけで投資に対する利回りは低くなる。来公開株について入札価格の3倍~4倍の価格で店頭市場で売買されている状況を考えれば、現金で保有することで、たとえ金利10%だと言っても、利回りは悪化する。さらに高金利が継続する保証もない。このように考えれば、現金保有の時間を短くするファンド設定が、投資効率を向上させるために最適である。

 現状のベトナム株式市場で最も利益が期待できるのは「ゲリラ戦」である。そういったゲリラ戦を担当する「ゲリラ軍」という意味をもった投資ファンドの設定が望ましい。つまり1億円から2億円の資金を集めて、それを順次公開される未公開株式に約6ヶ月ほどかけて投資する。これを5年~10年間長期保有する。これを今後の数年間続けるのである。第1次ファンド、第2次ファンドを連続して発売する。このように比較的小規模な資金を小刻みに投入する。こうすれば、投資ファンドを現金で保有する時間が短くできるので、未公開株に投資する高利回りの魅力を最も享受することができる。

 このような意味で、「ドラゴンファンド」や「韓国ファンド」のような数10億円を集めた投資ファンドは「正規軍」とみなされる。正規軍は部隊の移動も困難である。つまりゲリラ軍なら、たとえ未公開株であっても店頭での売却は可能であるが、正規軍の大量株式の売却は買い手が見つからない懸念がある。ベトナムのような小規模な株式市場においては、以上で指摘した「ゲリラ軍」による「ゲリラ戦」が最も有効であると判断できる。

 ドラゴンファンドの運用会社が英国系、民営化ファンドの運用会社が米国系、それに韓国がファンド募集を始めている。こういった「正規軍」に対抗するベトナム人独立系運用会社による「ゲリラ」ファンドの出番が期待される。ベトナム経済発展のために、こういったファンドでは「ドン建てファンド」の設定も考えられる。このファンドはベトナム政府も歓迎する。ベトナムの利益をベトナムで使うからである。こういったファンド運用の経験と実績が、ベトナム人のためのベトナム人のファンド設定に発展する可能性がある。

 なお「ドン建て」では日本に持ち帰れないという質問がある。この場合、ベトナムでドンを使う投資家に限定したファンド募集でよい。もちろん現地進出の日系企業が購入してもよい。このように考えれば、1億円程度の資金は集まるはずである。また為替レートは、現在は傾向的な「ドン安」であるから、為替差損のリスクがある。しかし近い将来に「ドン高」になる可能性もある。こうなれば、為替差益を獲得できる。ちょうど最近の中国の「人民元切り上げ」を想起すればよい。  

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2006年5月 3日 (水)

ベトナムの鍋料理:ニュクマムの魅力

 「男の手料理」。そんな不遜な気持ちはまったくない。毎日、妻の手料理に心から感謝である。ただしベトナムで美味しい料理を食べると、それを日本でも食べたくなるのは自然の欲求である。私は、夏でも鍋料理が好きで、家族からは非難されているが、以下のベトナム鍋料理は好評であった。そこで簡単にレシピを紹介しておきたい。

 寄せ鍋・キムチ鍋・ちゃんこ鍋・ブイヤベース・すき焼き・ふぐ鍋などの「スープの素」がすでに市販されているが、ベトナム鍋は見たことも聞いたこともない人が多いと思う。それは当然。ベトナムの味は千差万別。「これがベトナム」という味を限定するのは難しい。そこで、自分の味を自由に作っていただきたい。それがベトナム流である。

 ベトナム鍋のレシピは、「カイン・チュア・カー」の項目を次のサイトで参照してほしい。甘酸っぱい味なので、辛い料理は苦手という人にも安心である。ベトナム料理は辛いという先入観は消えてしまうだろう。以下は「適当」という部分を強調している。くれぐれも正式のレシピを見てほしい。http://www.topworld.ne.jp/ainet21/ryori-soup.htm

1.適当な鍋に適当に水を入れる。沸騰したら以下の具材を入れて味付けする。

2.この具材と味付けには、次の準備が必要である。ニュクマム(ナンプラー)・パイナップル切り身・トマト切り身・塩・ニンニク薄切り・砂糖(代わりにパイナップル缶詰のシロップ)。これらのほかに、私のカンではミリンを使ってもよいと思う。この中でニュクマム(タイではナンプラーと呼ぶ)は不可欠である。また、パイナップルとトマトを入れるのがベトナム風であるから、これも不可欠である。パイナップルやトマトは缶詰よりもナマの方が食感がよい。

 ニュクマムは日本でも市販されているが、ベトナムに比べてかなり高価である。私はベトナムから買って帰るが、これが簡単でない。航空機に乗る場合、国内線では没収される。ハノイからホーチミン市に向かう昨年に経験した。これには驚いた。また国際線では手荷物にして厳重に梱包しなければならないようだ。普通にスーパーマーケットの袋に入れて手荷物でもっていたが、手荷物検査で発見された。空港担当者がガムテープで2本のビンをしっかりと巻いてくれた。怒られているという雰囲気ではなく、親切な対応であった。

 このような対応の原因は、数年前にベトナム人がニュクマムを国内線の機内でこぼしたことがあるからだそうである。ニュクマムを知っている人は想像できると思うが、機内に異臭が広がる。この対応は大変であろう。私がベトナム航空の責任者なら、営業妨害または損害賠償で裁判所に訴えたいくらいである。したがって上記の厳格な対応は納得できる。

 また三洋電機ベトナムの元社長・竹岡さんの話では、ニュクマムの「一番搾り」の販売店がホーチミン市内にあるそうである。私はホーチミン市のスーパーマーケットで買うのだが、そういった味とはひと味違うということである。こうなれば、食塩もファンラン塩田の天然干しにこだわりたい。この塩は、私も確認したが、ひと味もふた味も違う甘みのある塩である。私はニントアン省のファンランで味わったが、ハノイやホーチミン市で販売している店を知らない。探してみる価値はある。

3.まずニンニクのスライスを油で炒めて、その後に水を入れて沸騰させる。最初に魚を入れて、その後の具材は適当である。甘酸っぱい味を楽しむ趣旨の鍋料理なので、できるだけ具材は淡泊がよい。白身魚・エビ・貝や豚肉などが適当である。野菜は、もやし・おくら・キノコ類・春菊・セロリ・三つ葉など適当である。ベトナムの味を確かにしたければ、代表的な香菜であるコリアンダー(パクチー)を食べる直前に入れる。味付けは、ニュクマムと塩である。少しずつ入れながら、味を確認する。具材を食べ終わったら、春雨やビーフンを入れてもよい。その間、適時にアク取りをする。

4.さらに自分の好みに味になるように、各自の取り皿で調整する。レモン・ライム・スダチなどの酸味や、唐辛子・チリソース・タバスコなどの香辛料、さらにお酢やポン酢をいれてもよい。これも適当にすればよい。

5.私は経験がないが、最後のスープで雑炊を作るとか、焼きめしにする。これは日本風の変形料理である。ただし雑炊は少し甘すぎるかもしれない。焼きめしを試してみようと思う。キムチと一緒に食べると美味しいと思う。スープとして翌日に飲んでもいい。これもお好みである。

 暑いベトナムで熱い料理を食べて、汗をかいて暑気払いをする。かなり寒くなる冬のハノイでは、やはり鍋を食べて身体を暖める。鍋料理のある国はベトナムに限らず私は大好きである。以上、ぜひ鍋料理の新しいレパートリーに「ベトナム鍋」を加えていただきたい。未知の味が食欲を進めることになると思う。

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2006年5月 2日 (火)

上田ゼミ版『面接の達人』レポート(続)

 信用金庫に就職内定した4回生がゼミに顔を出してくれた。その学生は部活で硬式テニスをしていて、体育会の役員も経験していた。今後の卒業論文の執筆について相談もしたのだが、就職活動の体験談が主要な話であった。それを要約すれば、次のようになる。

1.自分の話題を少なくとも3つもつこと。自分だけの経験や活動について話題は3つ必要である。集団面接の時に最少3つはもっていないと、ほかの学生と話題が重なることがある。ほかの学生の話に引き込まれないで、自分のネタで勝負する。

2.ただ単に体育会系の部活だけでは採用してくれない。持続力があること。元気があること。プラス志向であること。このような部活プラス何かが必要。こういったことを伝えるコミュニケーション能力が大切である。

3.留学・ゼミ・部活・アルバイトなど普通の話では、面接担当者は「食いついてこない」(=興味をもってくれない)。話には多少の誇張は必要。その表現をうまくやる。本当はレギュラー選手ではないけども、レギュラー選手になったと言ったりする。当然、それについて質問されることを想定して、その答えも用意しておく。

4.自分の話題を中心に話せるようになれば、落ち着いて話せる。自分の用意した話題の舞台に面接担当者を引きづり込む。

5.面接担当者の「圧迫面接」は、すべて疑問文である。次から次に質問が続いて追究される。テニスをしていました。なぜテニスか? なぜ軟式から硬式に変わったか? テニスのきっかけは何か? 先輩に誘われなかったらテニスしないの? こういいた質問攻めに落ち着いて対応する。

6.ネタにできることが多いゼミは得する。上田ゼミでは何をしたか? どんなゼミですか? 韓国・ベトナム・ラオスなど海外活動に積極的です。今年から情報学部と商学部の両方からゼミ生を募集します。いろいろな可能性に挑戦するゼミです。「上田ゼミ」と言うだけでも、いろいろな話題=ネタが作れる。

7.薄っぺらな情報に基づいた発言はしない方が良い。最近の新聞やニュースで関心のあることを教えてください? この質問で頭が真っ白になった。しかし他の質問では答えたので、それで問題なく面接は通過した。当時、ホリエモン逮捕の事件があったので、それについて答えた学生がいた。そうすると、さらに突っ込まれて質問されていた。この場合に自分の意見ならよいが、新聞やテレビの意見を繰り返してもアピールしない。

8.書類審査や筆記試験は別として、面接では関関同立と十分に対抗できる。「そういった大学の人たちと対等以上にやっていけますか?」と質問されたことがあった。コミュニケーション能力や部活の役員をしたこと。そのことを通して自信がもてるようになった持続力や忍耐力。これらは負けないと思います。

9.集団討論で司会を担当するのはリスクが大きい。ハイリスク=ハイリターンである。うまくいけば必ず合格、しかし失敗すると決定的にダメ評価となる。一番美味しい役割はタイムキーパーや書記・記録係。話の途中で介入する権利をもっていて、さらに客観的に議論を整理してみせることができる。場合によっては、司会者より以上に議論を引っ張っていける美味しい役割である。

10.履歴書やエントリーシートは複数の人に読んでもらって再検討・修正する。読む人の主観によって履歴書の評価は影響を受ける。したがって多数の人からの助言をもらいながら、次第に改善・修正していく。

 以上、就職活動における面接での注意事項を4回生のナマの声に基づいて列挙した。話題を豊富にして、それを伝えるためのコミュニケーション能力を養成する。これが面接のポイントのようである。なお「圧迫面接」に対して上田ゼミ生は、日常のゼミ活動において鍛えられているはずである。もっと学生に質問して、もっと学生に話させるようにしたいと思う。また、グループ討論もやってみよう。真面目にゼミ活動に参加していれば、それが自然に就職活動の準備にもなっている。特別な就活の準備は不要である。

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2006年5月 1日 (月)

パソコンテレビ・GYAOを見る

 インターネットのブロードバンド環境を経由した無料テレビ放送GYAO初めて見た。これは面白い。無料にしては内容が充実している。映画の途中でCMが挿入されるのが気になるが、無料なのだから許容範囲内である。このGYAOを運営しているのが、ライブドアを買収すると言われている株式会社USENである。

 ブロードバンドとは、「高速な通信回線の普及によって実現される次世代のコンピュータネットワークと、その上で提供される大容量のデータを活用した新たなサービス」のことである。「光ファイバーCATV、xDSLなどの有線通信技術や、FWAIMT-2000といった無線通信技術を用いて実現される、概ね500kbps以上の通信回線がブロードバンド」と呼ばれる。注:『ブロードバンド辞典』http://bit-drive.e-words.ne.jp/を参照。

 私は映画やドキュメンタリー番組が好きだ。すでにCATVを通してWOWOW・オンディマンド映画や、衛星放送のスカイパーフェクトTVを視聴している。これらは有料であるが、あまり見たい映画がない。有料であるなら、近くのTSUTAYAでレンタルDVDを借りる。もちろん見たい映画をWOWOWやCATVで放映することもあり、それを理由に契約しているのだが、その時間帯は忙しいか、それを忘れていることが多い。そうだからと言って、録音するほど見たいとも思わない。

 私のような視聴者にとって、GYAOは便利である。見たい時に見たい映画を選択できる。しかも無料である。そこで以下、今後のGYAOの一層の発展を期待するという観点から、少し気になったことを提案・要望として述べてみたい。

 (1)やはり映画は大画面の大音響で見たい。パソコン対応のプラズマTV・液晶TV・プロジェクターにパソコンを接続するのだが、画面や音声の設定がうまくできない。私の場合、画像は大画面で鮮明だが音声はパソコンで視聴した。これは、GYAOのようなパソコンTVに対応した本格的なパソコンまたはTVの機種が十分に普及していないことを反映している。または、既存のパソコンやデジタルTVとの接続が円滑にできるパソコンTV用の機器が必要である。なお、こういったハード機器は、おそらく発売されているのだろうが、私が知らないだけかもしれない。

 (2)映画コンテンツを顧客別に絞り込む。これまで私はGYAOで「眠狂四郎シリーズ」と「大魔神シリーズ」を見た。これらは私が小学生の時の作品である。中村玉緒・藤村志保・高田三和など主演女優は、さすがに若々しく現代に通用するほどに美人だ。しかも上品である。特に藤村志保に目を見張った。故・市川雷蔵の眠狂四郎は、その後の田村正和のそれに勝るとも劣らず、やはり眠狂四郎の本家は市川雷蔵である。ここで疑問がある。果たして、こういった映画をだれが見るのであろうか。焦点となる視聴者は「団塊の世代」であると思われるが、映画途中で挿入されるCMは若者向けである。それでは、若者がレトロ感覚で市川雷蔵を見ることを想定しているのであろうか。この不統一性が理解できない。

 (3)パソコンTVの無限の成長可能性を実感できる。このGYAOを見て、たとえば映画コンテンツを多様化・豊富化させることができれば、レンタルビデオ(DVD)店や映画館の代用になりうると思った。そういった場合もちろん有料放送となるが、視聴者にとっては無料放送との選択肢の幅が広がることになる。さらに映画の放映途中のCMが気になる人には、有料でCMを消去することも技術的には可能であろう。さらに無線ブロードバンドの普及が実現すれば、電車の中でも映画を視聴できる。NHK衛星放送の独占であった海外日本語放送も、その国にブロードバンド環境さえあれば、世界中で日本語放送が楽しめる。さらには外国人向けの現地語での日本映画の放映もできる。たとえば「眠狂四郎シリーズ」の英語版・中国語版などが放映され、その放映の途中に現地企業のCMが挿入される。こういったことは実現可能であろう。

 ライブドアがニッポン放送株式、楽天がTBS株式を取得して業務提携を迫る。その目的は何か。この答えはGYAOを見て理解できた。これまでのTV放送がパソコンと融合し、そこから新しいメディアが生まれ、新しいサービスが提供される。より一般的に言えば、IT企業と放送会社の垣根がなくなる。このような時代の到来をGYAOは実感させてくれた。未だ見ていない人には、ぜひ一見されることを勧めたい。

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