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2006年5月29日 (月)

ベトナム情報(11):ベトナム人株式投資家の現状

 The Saigon Times,Weekly,May 20, 2006, p.27は、「成長する株式市場:必要とされる経験」という表題の記事を掲載している。以下では、これを簡単に紹介し、ベトナム人の株式投資家の特徴を指摘してみよう。

 先週、ベトナム株式市場の無秩序な状況が示された。その週の最初の三売買期間に市場は劇的に下落した。なぜなら投資家が株式全部を購入価格で売却したからである。3連続の売買期間における株式全部の売却は、VNインデックス(ベトナム株価指数)を52ポイント、すなわち約10分の1下落させた。その後に市場は、パニックに襲われた投資家にとっては喜ばしいことに、その週の最後の二売買期間に急激に反転して、VNインデックスで42ポイント上昇した。

 これらの無秩序な動きは、衝動買い・狼狽売りの投資家をベトナム株式市場が抱え入れ始めたことを少なくとも示している。売買数と投資額は上昇しており、過去3ヶ月間に株式取引所は、より多数の地元ベトナム人を売買に引き込んだ。このような市場での多数の売買者は、個人預金をもった未経験の個人投資家であり、不動産市場のような中途半端な投資対象に代わって、株式市場を試しているのである。

 株式投資の初心者の参入によって、多数の証券会社は多忙を極めることになった。昨年に比べてサイゴン証券会社では、売買登録した投資家数が3倍に達した。非競争価格で株式を取得している未経験の投資家は、非常識な高水準にまで株価を即座に押し上げた。これらの人々が、最大の被害を先週に受けた投資家であった。(以下、記事紹介は続く)

 私見では、全世界的な株式下落は、BRICsの国々(ブラジル・ロシア・インド・中国)で大きく、国際的なヘッジファンドが投機資金を引き揚げる動きが原因とも指摘されている(『日本経済新聞』2006年5月21日)。この世界的な株安の動向は、本来ベトナムと連動しないはずである。国際的なヘッジファンドがベトナムに投資したことは寡聞であるし、ベトナムの基盤的条件(ファンダメンタルズ)は不変である。

 それにもかかわらず、ベトナム株価指数が下落したことは、上述のようなベトナム人投資家の「狼狽売り」が原因と思われる。おそらく、これらのベトナム人投資家は富裕層であり、数回の外国旅行も経験している。そして国際的な英語情報にも常時触れている。CNN・インターネットまたは外国在住の親戚・友人から世界的な株価下落の情報を入手し、「それなら早く売らなくては損する」と「賢明に」判断して、所有株式を早急に売却したと想像される。

 他方、1997年にタイから始まった「アジア通貨危機」に伴う経済停滞の時期でも、ベトナムは経済成長を続けた。その理由は、ベトナム通貨・ドンの変動が国際通貨に連動していないために、アジア諸国における急激な通貨下落の影響を受けなかったからである。これと同様に、ベトナム株式市場は国際的な投資・投機ファンドを受け入れていない。それほどの市場規模に成長していないからである。

 このように考えれば、ベトナム株価指数が下落する必然性はなかったとみなされる。株式投資に関する中途半端な知識をもった投資家の売買行動が、株式市場の攪乱要因になったとみなされる。前述の株価下落の局面では、少なくとも株式投資の経験をもった日本人投資家なら、「軟ピン買い」(=株式購入の平均価格を下落させる目的で、株価下落の時点で当該株式を再び買い増しすること)の場面であろう。または、一時的な株価下落と判断して静観するであろう。そもそも多くの外国人のベトナム投資の目的は、長期保有による株価上昇であって、短期的な売買ではないとみなされる。

 ベトナムにおいて株式投資の知識とノウハウを一般に普及させるためには、かつての財閥解体後の日本がそうであったように、株式民主化の全国的なキャンペーンが実施されてもよいし、株式投資のための専門学校や私塾が設立されても不思議ではない。株式売買=相場をめぐる悲喜劇は、どの国も経験してきたことである。ベトナムにおける健全な株式市場の発展を期待したい。

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