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2006年4月 5日 (水)

ベトナム驚愕のドミナント戦略:G7マート

 先週3月30日(木)午後2時から、ホーチミン市のチュン=グエン=コーヒー社の本社を訪問した。残念ながら日本で知り合った副社長タオさんは体調が悪く、副社長秘書のカンさんにお話を伺った。その後にタオさんから「ごめんなさい」という電話があったから、文字通りに体調が悪かったのだと思う。以前のブログで紹介した気管支系の病気でないことを祈っている。率直に言って本当に、ベトナムの大気汚染は深刻な事態になっていると思う。ともかく早急の調査と対策が望まれる。

 さてコーヒーショッDsc07360プのチェーンストア展開で大成功した同社は、ホーチミン市の中心部に写真左のような本社ビルの建設を計画している。チュン=グエン=コーヒー店それ自体は、同業のハイランド=コーヒーに猛追されているのが現状であるが、業界の先駆者は常に革新を追求する。昨年には、チュングエンよりも高級ブランドのG7というコーヒーショップを出店し、それの次に同社は、小売店のチェーン展開を計画している。名前は、G7マート。副社長のタオさんによれば、本格的な物流センターを建設し、一気に全国展開を進めるということであった。

 秘書のカンさんによれば、中規模なスーパーマーケットを500店舗、コンビニエンスストアを5,000店舗を今年4月~5月に一気に展開する。フランチャイズ方式の店舗ですでに1年前から準備しているそうである。これまでの年間売り上げは、ホーチミン市だけで約400億ドン(=約2800万円)。コーヒー店500店舗の中で直営店は5店のみであり、そのほかはフランチャイズである。このことは、G7マートの場合も、フランチャイズの運営管理ノウハウは蓄積しているということを意味している。ただしコーヒー単品の小売とスーパーやコンビニでは、その仕入れや商品管理・販売ノウハウは別個に考えたほうがよい。

 それよりも驚くべきことは、ベトナム全土で一気に店舗展開するということである。この戦略は常識外である。通常は、少しずつ様子を見ながら徐々に店舗を増やす。まさにスーパーマーケットとコンビニにおいてベトナム全土に対する「ドミナント戦略」である。

 注: ドミナント戦略とは、小売業がチェーン展開をする場合に、地域を特定し、その特定地域内に集中した店舗展開を行うことで経営効率を高める一方で、地域内でのシェアを拡大し、他小売業の優位に立つことを狙う戦略である。http://www.jmrlsi.co.jp/menu/yougo/my04/my0411.html

 ベトナムのビジネスは模倣が多い。たとえば人気の海鮮料理店があれば、その隣に類似の名前を付けた海鮮料理店が開店する。建設ブームでレンガの価格が上がるとなれば、レンガをみんなが作り始めて、結局は供給過剰で値下がりする。こういった事例が多々あった。このことを考慮すれば、他社に模倣されないように、最初から大きな投資をして、一気にベトナム全土で優位性を発揮する。このようなドミナント戦略がベトナムで有効であるかもしれない。最初から他社の追随を許さない戦略である。当然、多数の店舗を持つことから、大量の仕入れによる仕入れコストの下落が期待できる。販売価格の優位性も追求できる。

 果たして、このG7マートの戦略は成功するのであろうか。次回の訪問時に、より詳しく戦略を聞いて、さらにその動向を紹介してみよう。私見では、ベトナム最大の店舗展開という既成事実があれば、たとえばWTO加盟に伴って近い将来に外資流通企業の進出規制が緩和された場合、セブンイレブンやローソンといった世界の大手企業との業務提携などが有利になる。このように考えれば、今回のような先行投資は大きなリスクが伴うが、必ずしも無謀ではない。

 なお、このチュン=グエン=コーヒー社の社長は、コーヒー産地のボンメトート出身で、医学部の学生だった。2000年「企業法」の成立は、民間企業の発展促進の政策をベトナム政府は推進する意思表示であったが、その優等生が同社である。ベトナム民間企業の成長のシンボル的な存在として、多数のTVやマスコミが紹介してきた。この意味で、同社の新たな挑戦は注目される。さらにその成否は、ベトナム流通業界の将来を占うことになるであろう。

 Tax 30日の夕方にお目にかかったJETROホーチミン市の中野所長によれば、現時点で流通外資に市場開放した場合、ベトナムの地元スーパーで生き残れるのはコープマートぐらいではないか。グエンフエ通りのTAX国営百貨店(写真左)は、コープマートに比べて約10%程度価格が高い。コープマートは地元の民間スーパーとして健闘している。さらに、すでにコンビニでは24時間営業の店舗が6店ホーチミン市にある。本格的なコンビニの展開も時間の問題という状況だそうである。この意味でG7マートの展開は時宜にかなっている。私見では、ベトナム人消費者は価格や品質に敏感であり、口コミで値段を教え合うことも多い。他方、流通システム全体としての低コスト化や合理化は今後の課題である。ベトナム人消費者に適応した小売業はどのような形態か。G7マートの展開は、その実証という意味もある。

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