« 上田ゼミ版『面接の達人』レポート | トップページ | ベトナム人留学生が学術交流集会を主催 »

2006年4月13日 (木)

アルバイト学生が「社会人学生」に変身?

 3月末に1回生(新2回生)が研究室を訪ねてきた。この時期の相談となると、退学したいとか留学したいとかの話である。予想通り退学の相談であった。

 2年前にも退学の相談があった。競艇の選手養成学校に合格したので、そちらの方で勉強したいという進路変更が理由であった。競艇選手の収入は悪くないし、競艇選手試験も難しいそうである。大学で再び勉強したいと思う時は、再入学の制度もあるし、社会人入学の制度もある。この学生の場合は「レースで勝ったら連絡してよ」と言って承認の印鑑を快く押した。彼自身の人生の選択である。

 しかし冒頭の学生の場合、少し事情が違った。今している仕事が面白いし、忙しくなってきた。だから退学したいと言うのである。学生4名が中心となった仕事であるが、さらに社会人の出資者がいるらしい。勉強よりも仕事が面白い。だから仕事をしたい。これなら理屈は通る。

 そこで私の質問。「その仕事の毎月の収入はいくら?」、「社会保険などどうなってるの?」。この学生は解答不能になった。「学生の中の1人が大学を卒業するので、その学生が会社を設立する予定です」という答えが返ってきた。確かに今年の5月から「新会社法」が施行され、会社設立は容易である。ただし当然、会社設立したからと言って、収入が保証されるわけではない。「その会社で社会人として生活ができるのか? その見込みはあるのか?」と質問したら、再び解答不能の状態である。

 さらに追い打ちをかけて、「ところで4Pって知ってる?」。「知りません」。「こんなん、マーケティングの基本やで」。「そんなことも知らんで、仕事できるん?」。「- - -???」。「とりあえず今日は、退学届け出さないで帰ります」。「そやな。もう一度、よう考えてみ」。こんな会話をした。(注:実際には、すべての会話が関西弁で行われているが、この部分についてだけ参考のためにオリジナル言語である。なお、マーケティングにおける4Pについては、たとえば www.mitsue.co.jp/case/concept/01.html を参照)。

 この会話の中で、次のような先輩学生の実例も紹介した。もともと行動力もあり、礼儀正しい学生であり、普通に就職すれば、かなり難関の大手企業にも就職できたはずだ。優秀な学生であるからこそ、大学の勉強よりも実際の仕事に関心が高かったのかもしれない。大学3回生くらいから「××主任」といった名刺をもって営業活動のために大阪市内を動き回っていた。卒業後は、そのままその会社で働ける予定だった。しかし4回生になって、この会社に本採用というような時に会社の業績が悪化し、残念ながら君の採用はできなくなったと言い渡される。

 上記の事情は、会社経営者に悪意がなかったと思いたいが、邪推すれば、うまく大学生を利用するだけ利用する雇用形態を意味している。この学生は、最初はアルバイト学生であったが、しばらくして「社会人学生」に変身したとみなされる。ただし大学生であることには変わりないから、社会的な身分は不安定である。

 大学生をアルバイトとして採用する場合、その学生を「社会人学生」の気分で働かせるようにする。それが意欲を向上させる。私が経営者ならそうする。そのために社会人並の責任ある仕事も任せる。優秀な学生なら、それに的確に対処できる。「将来、大学を卒業したら当社で働いてくれ。それまでは少し給与は安いけど我慢してくれ」。こうなれば、学生は社会人気分である。普通の大学生よりも早く社会で活躍している気分になる。俺の仕事は、学生のアルバイトではないという優越感(実は錯覚)をもつようになる。その結果、仕事中心の生活となり、その合間に大学に来るようになる。アルバイト学生が立派に「社会人学生」に変身した。

 冒頭の相談に来た学生は、大学から仕事に関心が移ったから退学しますという。しかしその必要はない。仕事が面白ければ、仕事をすればよい。ただし「社会人学生」として勉強を続ければよい。今の仕事を続ければよいのだから、就職活動の心配もない。ただ問題は、その仕事が本当に将来性があるのか、将来に後悔しないのかということである。この見極めは、なかなか大学生にはできない。この学生は、仕事に対する認識が不足していた。クラブ活動の延長で仕事を考えていた。それでは仕事も成功しないだろう。だから大学で勉強する意味がある。

 大学生でありながら、大学生活の中で次第に「社会人学生」に変身する。アルバイトが契機になる場合もあるし、友人と一緒に事業を始める場合もある。後者は「学生ベンチャー企業」である。最近の学生はアルバイトばかりやって勉強しないと批判するのは簡単だが、それだけでは現状は変化しない。アルバイトを強制的に禁止するというのも現代の風潮に合致しない。

 そうであるなら、アルバイト学生を逆にプラス評価して、立派な「社会人学生」に変身させる教育をするのである。職業意識の高いアルバイト学生を養成するのである。大学生の間に「社会人学生」に変身すれば、その学生は即戦力になりうる。就職活動では、それをアピールできる。

 以上のような教育をする大学があってもいいし、少なくともそういう大学教授がいてもよいと思う。これを実現するためには、学生のアルバイト先を大学側が訪問するなどして、両者が協力しなければならない。これは、流行している「学生インターンシップ」の日常化である。アルバイト先企業=インターンシップ引き受け企業。この位置づけで大学として指導する。就職率も必ず上昇するだろう。この私のアイデアについて、ご批判・ご意見を歓迎する。

|

« 上田ゼミ版『面接の達人』レポート | トップページ | ベトナム人留学生が学術交流集会を主催 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/7888/1382517

この記事へのトラックバック一覧です: アルバイト学生が「社会人学生」に変身?:

« 上田ゼミ版『面接の達人』レポート | トップページ | ベトナム人留学生が学術交流集会を主催 »