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2006年2月 1日 (水)

JICA:ラオス支援の評価調査報告書

 先週、独立行政法人国際協力機構(JICA)・人間開発部から『ラオス人民民主共和国国立大学経済経営学部支援プロジェクト終了時評価調査報告書』(2005年7月)が送られてきた。このプロジェクトに筆者は、2001年に4ヶ月間、JICA短期専門家として従事した。それ以来、その後も何回か短期で仕事をしている。また国内支援委員会の委員をしていた。このような事情で報告書が送付されてきたと思われる。

 ラオス政府は1986年以降、市場経済に移行するための経済改革を進めているが、そのためには人材育成が不可欠である。そこでADB(アジア開発銀行)の支援を受けてラオス国立大学が1995年に設立され、その際に経済経営学部も新設された。しかし2001年9月でADB支援が終了するために、それ以降の技術協力を日本に求めてきた。その要請に応えて、このプロジェクトは2000年9月1日から5年間の期間で開始された。当初4年間は、本プロジェクトとラオス日本人材開発センターが一つのプロジェクトとして運営されていたが、2004年4月のJICA本部の組織改編にともなって、二つのプロジェクトに分離された。

 プロジェクト概要は次のとおりである。案件名:ラオス国立大学経済経営学部支援プロジェクト、分野:高等教育、援助形態:技術協力プロジェクト、所轄部署:人間開発部、協力金額(評価時点):8億4千万円(2004年3月末まではラオス日本人材開発センタープロジェクトと同一案件)。

 協力内容は次の4点である。(1)上位目標:FEM(経済経営学部)の卒業生がラオスの市場経済化に貢献する。(2)プロジェクト目標:FEM卒業生が優れた学究的・専門的知識と技能を有する。(3)アウトプット:①教員の質が向上する。②カリキュラムと教材が開発され、改善される。③必要な機材と施設が存在する。④FEM運営管理システムが強化される。(4)投入(評価時点):日本側(長期専門家派遣10名、短期専門家派遣47名、日本での長期研修受入15名、日本での短期研修受入15名、第三国での長期研修8名、第三国での短期研修14名、機材供与(ローカルコスト負担含む)0.52億円。相手国側(カウンターパート配置68名、ローカルコスト負担、光熱費・通信費など負担、土地・施設提供、建物の土地提供、事務用家具類)。

 次に評価結果の概要として、次の項目が記載されている。(1)実績の確認、(2)評価結果の要約:①妥当性、②有効性、③効率性、④インパクト、⑤自立発展性、(3)効果発現に貢献した要因、(4)問題点及び問題点を惹起した要因、(5)結論、(6)提言、(7)教訓。

 以上のプロジェクトは、日本のODA(政府開発援助)資金が使用されている。国民の税金の使途について、政府および関係機関は「説明責任」と「透明性」に留意しなければならない。その意味で、上記のような評価結果の概要に見られるような詳細なチェック項目が求められる。この中では当然に反省点や問題点の指摘もある。しかし、その責任を厳しく追及することは合理的でない。

 なぜなら、こういった人材育成支援は橋梁や道路建設とは異なって、支援相手が感情をもった人間である。ラオスの慣習・慣行やラオス人の気質を抜きにして支援の効果を高めることは不可能である。無理に高めることは逆効果でしかない。この観点でいえば、長期専門家として1年以上の現地滞在された先輩の方々の粘り強い努力と忍耐が、高く評価されるべきなのである。これに関連して報告書は、次のように指摘している。「本件は、技術協力プロジェクトとして社会科学分野の高等教育にJICAが支援するケースとしては、ほぼ最初のケースであるということから、プロジェクトの費用便益の観点から正確に分析することは、現時点では困難である」(p.21)。

 また筆者が、このプロジェクトで仕事した2001年9月~12月については、次のように記載されている。「経営分野(学問としての経営分野)の専門家は、プロジェクト開始後2年経ってから派遣されている。その間、短期専門家が経営学分野の活動において大きな役割を果たしたが、全体としては、最初の2年間の投入は十分でなかったと思われる。ーーー(省略)ーーー短期専門家の派遣タイミングについては、概ね適切であったとされている。ただし専門家の多くが大学教員であり、本業スケジュールとの兼ね合いから派遣可能な期間が限られており、一部、派遣期間が十分でなかった例もあると指摘されている」(p.21)。

 上記の「短期専門家」に筆者が含まれている。個人的には、もっと長期間の仕事をしたかったが、それは本務校の事情が許さなかった。もし現地のカウンターパートが筆者のことを「十分でなかった例」と言ってくれているのなら、それは喜びであり、光栄である。派遣期間が終了時、ビエンチャンのワッタイ国際空港での満足感と寂寥感は、今でも記憶に残っている。そのこともあり、その後もラオスに何度も訪問している。さらに大学生を同行した「清掃ボランティア活動」は、今年の夏に4回目となる。

 この調査報告書の中の数行の記述であるが、筆者の足跡がラオスに残せたことは誇りである。また何よりも、ラオスの人々との交流が今日まで持続していることが嬉しい。これが、ベトナムに劣らずラオス大好きの理由である。

  

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