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2006年2月28日 (火)

バンガロールの「播磨」

 バンガロールの高級日本料理店「播磨」は盛況であった。日本の吹田市に本社があるヒロインターナショナル社の辻本社長の投資であるが、もともと同社は料理店を経営しているのではなく、インドIT関連の商社であり、インドでトップ5に入るIT企業サティアム社の日本総代理店でもある。

Dsc06572_1   播磨のモデルとして、ベトナムハノイの「紀伊」がある。以前に辻本さんと「紀伊」店長・オーナーの小林さんにお目にかかり、日本料理店の経営についてお話を伺ったこともある。「紀伊」に比べて店内の照明は暗く、ふんだんに木材を使用した店作りは高級感がある。写真の前は店頭のインド人従業員ハリシンさん。「忍者」というニックネームである。

 料理の味も上々で、JETROの久保木さんも贔屓にされているとのことである。バンガロールでは、ほかにもう1店日本料理店があると聞いているが、現在のところこの「播磨」がナンバーワンの店である。ここには在留邦人が300名ほどいるが、それだけでは顧客数が不足する。店内を見てみると、インド人や西洋人も何人か来店しており、日本人以外の人々にも人気のある店である。インフォシス社の日本勤務経験のあるインド人女性も、播磨には何度か行ったことがあると言っていた。日本料理は健康料理として世界的に人気である。

 播磨の住所:HARIMA 4th Floor, DEVATHA PLAZA, 131 Residency Road, Bangalore, 560 025, India. TEL: 080-51325757, 57688222

 なぜ、IT関連商社のヒロインターナショナル社が日本料理店を経営するのか?普通なら何の関連もない仕事に手を出すことは、本業に関連した分野に進出して経営資源を節約できるという「範囲の経済性」の理屈に合わない。辻本さんに創業の意図を面と向かってお聞きしたことはないが、現地の日本人の不便を何とか改善しようという辻本さんの意志=男気が創業の契機ではないか。

 まともな日本料理店がないにもかかわらず、懐かしい日本の味を求めて日本人は、しかたなしにその店に足を運ぶ。この状況を何とかしたい。美味しい日本食を食べてほしいという辻本さんの思いである。このような気持ちになるのは、やはり辻本さんはインドを好きなのである。多くの日本人にインドを好きになってほしい。そのためには、美味しい日本料理店を開店しよう。これが開店の理念であると私は想像している。もちろんこれはビジネスであるから当然、利益が目的である。

しかしビジネスは、お金がすべてではない。創業者の志(こころざし)・理念が必要なのである。

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2006年2月27日 (月)

インドIT企業を訪問

 昨日は、日曜日にもかかわらず、JETRO投資アドバイザー久保木さんのお話を伺った。そのほかにインド人のVINAYさん(ENCORE SOFTWARE社)とJAYANTさん(NITT TECHNOLOGY社)もお話くださった。このインドIT調査を企画・調整していただいた辻本社長(ヒロ・インターナショナル社)のおかげである。

 今日は、MIND TREE社、INFOSYS社、NITT TECHNOLOGY社、それにIIS(インド科学研究院)を訪問した。この中でINFOSYS社は、ニューヨークのナスダック市場に上場するほどの大企業である。インドIT企業の実力を垣間見た。

 昨日の夕食は、辻本さんがオーナーの高級日本料理店「播磨」、今日の夕食はインド人ハリさんの自宅でパーティーであった。これらの様子も帰国後に紹介する。これらの効率的で意義のある調査を誘っていただいた辻本さんに対して、また「播磨」の美味しい日本食に感謝である。

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2006年2月26日 (日)

バンガロールは涼しい

 インドと言っても、どこのインド?

 当然この質問は日本でも当てはまる。ほとんどの外国人は東京のような大都市を日本と思っている。たとえば大雪の被害で100人以上が死んでいる状況は想像もできないだろう。また「六本木ヒルズ」周辺の出来事と一般の国民生活は別世界である。日本と言っても、どこの日本の話をしているのか?こういう問題の設定や発想によって、より事態が明確になる。

 インドも同様であることを実感した。バンガロールは標高800㍍の高原の都市。人口は620万人。日系企業と日本人が首都デリーについて2番目に多い。トヨタ自動車も進出している。

 ホテルでワイヤレスのインターネットが1日600ルピーで利用できる。この状態が必ずしもよくないので、ブログは手短にしておく。詳細は順次紹介していく。

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2006年2月25日 (土)

シンガポールの空港から

 先週のベトナムに続いて、今日からインドに出発です。今、シンガポールのチャンギ空港で書き込んでいます。関西空港はもちろん、ベトナムですら場所によってワイヤレスでインターネットができるのですから、シンガポールの入り口である空港でワイヤレスが用意されていないはずがないと想像していました。予想は当たりです。

 ただし時間制の料金支払いが必要です。クレジットカードで支払うのですが、30分6S$(シンガポールドル)、1時間9S$、2時間18S$に分かれています。また「NTTコミュニケーション」が日本で展開している「ホット=スポット」に加入していれば、そのパスワードが使用できるようです。このようなワイヤレス=ネットワークが日本全国に普及してくれれば助かりますが、余り広報されていないところを見ると、まだまだ現状は部分的な利用なのでしょう。日本で部分的なものが、シンガポールで使える。NTTコミュニケーション社の先行投資ということでしょうか。

 このクレジットカード支払いですが、すでに日本でも問題になっているように、セキュリティは大丈夫なのか心配です。ワイヤレスで情報が飛ぶのですから、それをキャッチする人がいてもおかしくない。心配だけれども、利用せざるをえないのが現実です。このサービスのHPには、もちろんセキュリティは大丈夫と書いてありましたけれど。

 これまでトランジットで利用した空港は、香港が多かったです。日本から香港経由でハノイに行くコースです。それに比べてシンガポールは、欧米系の外国人顧客が多いように感じました。未だ歩き回っていないのですが、トランジットの時間を楽しく快適に過ごせる工夫があれば助かります。

 あわただしく外国旅行をしていうように思えるのですが、私は、予定表の空白時間を利用して海外出張しているだけです。もっとゆっくりした視察調査ができればと切望しています。

 こういう海外現地調査ほど、その人の「見る眼」が問われることはないでしょう。ベトナムに行って、初めての人はバイクの多さに驚くのですが、もう私には当たり前の風景になりました。「何を驚いているのだろう」と思ってしまします。これは、ある意味で危険なことなのかもしれません。本来、外国人なら驚くべきことを驚かないというのは、初心を忘れてしまっている。インドは2回目ですが、新鮮な驚きと感動をもらえることに期待しています。

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2006年2月24日 (金)

ハノイ貿易大学の神戸サミット

 ベトナム・ハノイの貿易大学の副学長ツアンさんを団長とするJICA研修団5名が、流通科学大学を訪問した。私のセミナーでの講義の合間に田村副学長・高田商学部長・木村情報学部長を表敬訪問し、その後に昼食をご一緒した。

 講義終了後に三宮の居酒屋で夕食に招待したが、そこに学長のチョン先生と日本語学科主任のハー先生が登場したのには驚いた。ベトナム貿易大学の学長・副学長・元学長が三宮に結集したのである。学長は大学交流の相談などが目的で、日本の大学を訪問中であった。このメンバーとはハノイで夕食をいただいたので、その返礼の意味がある。でも両国の物価の相違が辛いところである。

 講義は、ダナン大学で客員教授を務められた関先生や本学・流通科学研究所の内橋先生、それに神戸在住ベトナム人留学生の参加もあり、総勢22名となった。日本のエースコックのベトナム現地法人がベトナムで新発売する「ふりかけ」の商品開発について、3つのグループに分かれてディスカッションした。この内容は豊富であり、おそらく実際の商品開発にも十分に役立つものであると思われた。消費者や社会の分析が鋭い。さすがに大学の先生たちである。ベトナムの大学でも委託調査・研究は多数あるから、慣れていると言えるかもしれない。

 前学長モー先生から「よい講義だった。ビジネス人が聞けば最高だ」というお褒めの言葉を頂戴した。ベトナムでは学長として「雲の上の人」で、いつも気むずかしいモー先生から親しくお声を頂戴して、恐縮であった。大学教員向けの講義ではなく、あくまでもベトナムのビジネス人向けの教育をするベトナム人の先生に対する講義である。私自身も成果があったと手応えを感じた。

 25日からインドに行ってきます。まずバンガロールです。目的は、インドビジネス環境とITの視察。インドの専門商社である(株)ヒロインターナショナルの辻本社長のご案内で、現地で日本人の方々数名と合流します。全部、辻本社長にお任せですので、気分は楽です。

 ともかく今日は、疲れました。荒川静香さんの金メダル、よかったですね。

 

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2006年2月23日 (木)

ベトナム株式投資とホリエモン=ビジネス

 今回21日のハノイでは、弁護士事務所(LUAT GIA PHAM)とハノイ証券取引センター(HASTC)を訪問した。新しく発表された統一企業法や、ベトナム証券取引の実態や現状を調査するためである。

Dsc06521 弁護士事務所では、ビジネスコンサルティング部門主任のガーさん(26歳)が相談に乗ってくれた。ハノイ法科大学を卒業し、今年に修士号を取得するそうである。統一企業法が発表されているが、現在は各方面からの意見聴取の段階で、その後に修正されて6月末から7月に制定・施行される。法律では会社設立、外国企業、株式会社形態(有限責任会社、株式会社、合名会社、個人企業)や、企業の分割・合併などが規定されている。このほか1時間ほど話して、不明点は後にレポートを提出してくれることになって、料金50ドルが請求された。日本の弁護士料金は1時間に2万円ほどであるから、ベトナムにしては高い相談料と言えるかもしれない。

Dsc06531  HASTCでは、センター所長のズンさんに対応していただいた。ここでは証券市場や証券会社および証券投資顧問・運用・管理会社の設立について話を伺った。株式投資の問題点として、ベトナム国内での上場株式売買については、ベトナム証券会社に口座を開設している限り、ベトナム人・外国人、個人・法人の区別はなく、同様に取引できる。ただし外国人に対する制限や劣位性としては、外国人所有が50%未満に制限されていることである。さらにOTC(店頭)市場の売買情報が不明瞭なために外国人に不利であり、そのOTC市場の売買益は証券会社の口座を通して外国送金できない。

 ここで最大の問題は、OTC市場の未公開株売買益の外国送金である。ベトナム人は、日本人または日本企業にドル建てで送金できないが、会社間の送金は可能である。したがって友人のベトナム人にベトナム株式を買ってもらうことはできても、その売買利益を日本に送金できない。日本とベトナムの会社間の送金形態が必要である。それでは、どうすればよいか。また、どのようにしてコスト削減するか。このコストには、ベトナム法人の管理・人件費や設立資金、さらに税金も含まれる。最も低コストのビジネスモデルは何か。

 既存の法律の枠内で利益最大とコスト削減を追究する。これはビジネスでは普遍的なことである。これを実際にやってみれば、あたかもゲーム感覚である。これをやりたい。しかし法律規制がある。それでは、これはできるか。それについては法律で規制されてない。では、それにしよう。ベトナムと日本の税金はどうなっているか。日本が低いが、ケイマン諸島やバージン諸島は、さらに税制が有利だ。ではそこに会社設立しよう。それではどうするか。損益の分岐となる株式取引量はいくらか。まるでゲームである。

 おそらくホリエモンも、同じようなゲーム感覚でビジネスを考えていたに違いない。このままでは赤字決算になる。では黒字にするにはどうすればよいか。あらゆる手段を考える。ただし法律の枠内だ。当然、法律に違反しているという自覚がない。なぜ俺が悪いんだ。法律の枠内で黒字になった。これがホリエモンの論理であろう。しかし全体として、本来の企業実態である赤字を黒字化するのだから、粉飾決算という法律違反である。

 これをアナロジーで言えば、「合法的な殺人」である。個々の手段は合法的であるが、その目的と結果は殺人であるから犯罪である。個々の詳細な法律に注目しすぎると、大枠での法律違反が見えなくなる。大枠での法律違反をするために、個々の法律を遵守すれば、大枠の違法行為までも合法的と思えてくる。

 以上、ホリエモン事件の本質的な部分が見えてきたように思う。なお、ここで気がつくのは、ライブドアの顧問弁護士は何をしていたのかという疑問である。個々の法律での合法的な手段を助言する前に、どうして「それは粉飾決算だから、そもそもダメ」と言えなかったのだろうか。ビジネスをする者は、前述のように法律の枠内で利益追求とコスト削減を考えるのが習性・宿命である。これに対して、顧問弁護士や公認会計士や税理士は、法律の大局から見た助言をするのが本来の役割であろう。ベトナムで調査していて、このような感想をもった。

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2006年2月22日 (水)

W遅延の悲劇

 ベトナムの往路が、到着機が遅延のために出発機がなくなり、台北経由ホーチミン市着となり、まさか復路は遅延がないと思っていたら、ハノイ~ホーチミンで40分遅延、ホーチミン~関空が50分の遅延であった。

 ハノイのノイバイ空港は有視界飛行だから、濃霧や大雨で閉鎖されることがある。これまでにホーチミン市で足止めが2日間ということもあったし、ビエンチャンからハノイに到着できずに、途中Uターンしてビエンチャンに引き返したこともある。しかし、これらは天候問題だからあきらめもつく。しかし今回のベトナム航空の遅延が、機械的・システム的な理由であるとすれば、これは要注意である。ベトナム航空は新型機を導入するほどに利益を上げているが、より着実に社内体制を強化することが必要であるように思われる。

 帰国時のハノイ・ノイバイ空港に行くまでのタクシーでトラブルがあった。トラブルと言っても、以前のような忘れ物ではない。ホテルから空港までの道順がいつもより遠回りで、料金が2倍以上であった。このことは衛星放送の「海外危険情報」で、ハノイの「不良タクシー」として紹介していた。情報によれば、メーター表示以上の料金を請求する不良タクシー運転手もいるらしい。

 私の場合、タクシー運転手自身が怖い人ではなかったし、市内の交通渋滞を回避するために郊外の広い舗装道路を使ったと考えられないわけではない。今年11月に開催予定のAPECのために建設中の国際会議場を左手に眺めた道も通った。市内地図で行程を確認したいと思う。しかし腑に落ちない不愉快な気分になる。l

 通常、運転手が遠回りするときは、自動車をすぐに止めさせて、そこで料金を払って降りてしまうという強攻策を今まで採用したことがある。「どうなってる?金払わんぞ」と声を荒げて、タクシーから降りるのである。しかし今回は、そういった気力と体力と時間がなかった。こういう場合の防止策は、最初から流しのタクシーに乗らないことである。l空港専用のタクシーを使用する。予めホテルに送迎代として料金を払い、運転手には直接お金を払わない。さらに以前に紹介したME LINHタクシーなど、地元のベトナム人の評判がよいタクシーを利用する。こういった方法があると考えられる。今から思えば、ホテルのなじみの従業員は、ME LINHタクシーを電話で呼んでくれたのだが、私が急いでいたために、流しのタクシーに乗り込んだ。空港に着いたら、出発時刻が遅延である。「やれやれ」である。

 ぜひ、ハノイのタクシーに注意してください。以上、タクシーと飛行機での不愉快で、帰国後の疲労が大きくなった。

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2006年2月21日 (火)

ハノイから

 今、ハノイの無線LAN完備のインターネットカフェで書き込んでいます。もう飛行機の出発の時間が迫っているので、これで終わります。

 自分で言うのもなんですが、日本に比べてベトナムでは猛烈に働いています。だからベトナムが好きなのかなと思います。こちらの方が充実した仕事の満足感があります。

 帰国後に、またベトナム情報をお知らせします。これからホーチミン経由の関空まで、長い旅の始まりです。

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2006年2月20日 (月)

子持ちガニがない

 ホーチミン市で有名な「94レストラン」に行った。カニ料理専門店である。私はチョロン(中国人街)の海鮮料理店は学生を連れたりして何度か行ったが、この店は初めて。確かにスープも春雨麺にも豊富で新鮮なカニ肉が入っていて値段も安い。しかし肝心の「子持ちカニ」は予約制というのである。チョロンの店では、こんなことはない。
 「上海ガニ」は美味で有名ということだが、私は食べたことがない。でもこの「ベトナムガニ」(渡りガニ)は、日本でも恋しくなるくらいに美味しい。もし「94レストラン」に行く人は、予約をして「子持ちガニ」を食べましょう。
 今日は、一日多忙である。夜にはハノイに着いているはずである。明日のハノイは、もっと多忙である。果たしてブログを書く時間があるかどうか不明。でもこのブログ、公開日時を指定できるので、後からでも書ける。毎日欠かさずに書いているといっても、実際は必ずしもそうではない場合がある。
 今、ホリエモンの「振込み」メールが政治問題になっている。その発信日時が特定できているそうだが、その日時は操作不可能なのだろうか。公開日時を指定できるなら、送信日時も指定できるのではないか。いろいろな犯罪のアリバイ工作に使われることはないのだろうか。
 とりあえず、今日のブログは終わり。明日21日にハノイで時間が作れるかどうか。明日をご期待ください。

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ベトナムの「ふりかけ」発売

 ベトナム貿易大学の副学長を団長とする先生6名が、JICA(国際協力機構)の支援で昨日から来日し、約1ヶ月に渡って日本の企業・大学などを訪問する。この中には前学長モー先生が含まれており、6名の中で黒一点(男性1人の意味)の副学長も気を遣って大変だろうなと想像している。この実施機関は、関西経済連合会の支援で設立された財団法人・太平洋人材交流センターである。

 2月22日午後に私が最初のオリエンテーションの講義をする予定である。その後の24日には、勤務先の流通科学大学で大学の講義や教育方法を体験するという趣旨で、セミナーが開催される。残念ながら大学は春休みになっているために、この日は、神戸在住のベトナム人留学生や私のゼミ学生を中心に集まってもらって、次のような参加型・交流型のセミナーを予定している。

 流通科学大学は「実学」を建学の理念としている。知識を知識として学ぶのではなくて、それを応用して知恵として使えるようにするというような内容である。これについて私見は、すでに2月10日付けのブログで紹介した。他方、来日する貿易大学の先生は、同大学の敷地に日本のODA資金で建設された「日本センター」の「ビジネスコース」でベトナム人ビジネスパーソン向けの講義を担当することになっており、それを目的とした日本研修である。したがって「実学」教育方法の提供が研修には期待されている。

 このような事情を考慮して24日は、ベトナム国内で実際に発生しているビジネス課題を教材にした極めて実践的・具体的なテーマのセミナーにしようと考えた。それが「ベトナムにおける「ふりかけ」の商品開発」である。日本のエースコック社は、かつては「ワンタンメン」、最近では「春雨ヌードル」の大ヒット商品がある。同社は1990年代初頭にベトナムに進出し、国営企業ヴィフォン社と合弁で即席麺の製造販売を開始した。その後に国内市場最大シェアを獲得するまでになり、現在は100%外資企業になっている。

 即席麺で成功を収めたビナエースコック社は、次の新たな商品開発の必要に迫られていた。新たな目標を設定しなければ、社内の従業員の士気に影響するからである。また成功すれば、新たな収益源となる。その新商品が、ご飯にふりかけて食べる「ふりかけ」である。

 われわれの世代では、マルミヤが提供するTV番組「8(エイト)マン」で「玉子ふりかけ」が何度も宣伝されていたことが記憶されている。では、日本と同じ「お米の文化」をもっているベトナムで、果たして「ふりかけ」販売は成功するのであろうか。また成功のためのキーコンセプトは何か。さらに品質と価格も重要である。宣伝方法やキャッチコピーは何が適当か。このようなマーケティングの「4P」問題を考えることがセミナーの内容である。

 こういった問題をグループで議論した後に、ホーチミン市のビナエースコック社長の浪江さんから本日20日、実際に使用するプロモーションビデオや商品見本を頂戴したので、研修生には自分たちのグループの提案と実際の決定事項との類似点と相違点について再び考えてもらう。もちろんグループディスカッションの意見は、ビナエースコック社の浪江社長にフィードバックされる。

 以上、産学協同・国際協力・「実学」教育が複合化されたセミナーが意図されている。一般の方々の出席・参観も自由にしたいと思っている。セミナーの成功のために、ぜひ多数の方々のご協力を賜りたくお願い申し上げます。

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2006年2月19日 (日)

曇り空のホーチミン市:盲人サッカー

 昨日の台北は雨だったが、今日のホーチミン市はどんよりとした曇り空である。あまり気分がよくない。昨日のベトナム航空延着の後遺症である。午後3時にホテルチェックイン後、午後6時の夕食までの3時間の予定がすべてキャンセルとなったのだから、今日と明日の予定が未確定のままである。

 そうはいうものの、航空機の中で新しい知人ができた。神戸の六甲アイランドでベトナム料理店を経営されているトンさんである。トンさんは、南北統一前に日本留学しており、その留学中に南北統一。南ベトナム政府がなくなったのだから、帰る国もなくなったという事情がある。そこで現在は日本国籍を取得されている。

 トンさんは、レストラン以外にも積極的に事業展開されているが、さらにボランティアでベトナムの「盲人サッカー」の支援をされている。先日も、日本とベトナムの対抗試合がホーチミンで開催されたそうである。盲人サッカーでは、ボールに鈴を付けて、ゴールの方向をコーチが指示するというような試合形式なので、通常のサッカーと違って観客は静粛にしなければならないそうである。現在、アジアでは日本とベトナムと韓国に盲人サッカーチームがあり、2008年の北京オリンピックに伴って開催される「パラリンピック」には、中国チームも参加する予定とのことである。

 ベトナムも上位入賞が狙えるのでは?と質問したら、やはり練習不足なので難しいという返答である。練習場の確保や、そこへの送迎自動車など、いろいろ手間と資金が必要になるが、ベトナムに十分な余裕はないとのことであった。

 ベトナム国籍を離れたベトナム人が、ベトナムのために社会貢献する。自分の利益しか考えない人々が日本人にも多いが、トンさんのお話を聞いて、先進国日本の反省すべき点が多々あることを痛感させられた。

 思わぬ台湾旅行をして3時間の時間ロスが痛かったが、思わぬ人にお目にかかれて幸せな気分になれた。トンさんには、今後とも日本でもお目にかかりたいと思う。

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2006年2月18日 (土)

少し大変な話

 ベトナム航空の早朝の到着便が遅れて、それに伴って出発便も変更となりました。台北経由でホーチミン市に行くことになり、到着予定が午後2時から午後6時に変更です。

 JETRO元投資アドバイザーの中村さんとホーチミンでお目にかかる予定が変更になります。どうやって連絡すればよいか。せっかく夕食をご一緒しようと楽しみにしていたのにーーー。こういう時に、かつてはパニックになったのですが、最近は悠然とすることにしています。個人的に心配したり、怒ったりしたも、しかたがないことは、しかたがない。

 22日早朝の帰国後に、(財)太平洋人材交流センターでベトナムJICA研修生の講義があります。センター担当の谷川さんは、帰国の航空機が遅れたら、どう対応するか心配されているようですが、出発時に遅延した私が、帰国時も遅延することは確率的に極めて小さいと思います。これで、まず絶対に帰国便は遅延しないと思います。

 以上、何事もものは考えようです。「ネアカのびのびへこたれず」。ダイエー創業者の中内功の言葉です。これは簡単な内容ですが、あらゆる局面で大いに有効な考え方です。新しい宗教として普及してもよいのではないかと半分は本気で考えています。そうすれば、世の中の人々の不安やストレスはかなり軽減されるのではないでしょうか。

 今、このブログは関西空港で書いています。ワイヤレスですから、大変に便利です。さて台北に出発します。そこで3時間待って、それからホーチミン市です。やれやれ長い旅です。

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NHK「新聞を読んで」原稿

 NHKラジオ第1放送・土曜日・早朝に放送された「新聞を読んで」の原稿を掲載します。

「20060217.doc」をダウンロード

 これまで7回に渡って連載したブログの集大成です。この1週間の出来事を振り返っていただければ幸いです。

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2006年2月17日 (金)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(7)

 今日の午後6時30分からNHK大阪放送局で、ラジオ第1放送「新聞を読んで」の収録です。明日、早朝5時40分頃からの放送予定です。

 ちょうど1週間、この番組の準備のためにブログを使ってきましたが、ようやく総まとめです。

 結局、新聞5紙を読んできましたが、何を読むかと言うよりも何を読まないかということです。情報の取捨選択が重要です。神戸空港開港のことも言いたかったのですが、時間がありませんし、言うとすれば、批判的なことも言わなくてはならないので省略しました。

 明日から短期間のベトナム出張です。土曜日と日曜日は、JETRO元投資アドバイザーの中村さん、三洋ベトナム初代社長の竹岡さん、それに国立民族学博物館の樫永先生などにお目にかかれればと思います。またブログの読者であるAXIS社長の服部さんにお世話になります。

 来週になって、プレス部品の生産状況を調査する仕事もあります。こういった「すそ野産業」の調査は、昨年夏の鋳造部品に続いて2回目です。ハノイではベトナム証券市場の動向を主に調査します。ベトナム経済発展にとって、前者は「底上げ」、後者は「先導」の役割をすると思われます。

 明日からはベトナム現地からの報告です。とりあえず今日は、これで終わりです。

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2006年2月16日 (木)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(6)

 2月16日朝刊の第1面を見ると、各紙の記事に特徴があった。毎日新聞が「イラク陸自来月撤退」、産経新聞は「大阪市不明瞭支援5億円」、朝日新聞が「中央省庁天下り2万2千人」、読売新聞が「大阪大、別論文にも捏造データ」、日本経済新聞が「大手銀、純利益最高2兆8千億円」となっている。

 この中で毎日と産経は、いわゆる「スクープ」のように思われる。この中で個人的に注目されるのは読売の大阪大学医学部でのデータ捏造事件である。

 この偽データを用いた論文を発表したという理由で、教授2名が停職処分となったのだが、それを読売では第1面の顔写真入りである。たとえば朝日新聞でも、この事件は報道しているが、その扱いはそれほど大きくない。

 ソウル大学や東京大学でのデータ捏造事件があり、このような問題には共通性がある。大学における研究と教育のあり方や、さらに教授の間での競争関係、学問・学術の発展政策など、さまざまな大学をとりまく構造的な問題にまで分析を進めることが、再発防止の前提になる。

 私見では、学問の世界に過度の競争原理を導入することが、大学間および教授間の競争意識を過度に高め、「少々のことなら無理をしてもいい」という気持ちにさせるのではないか。もちろん欧米で競争原理は当然であるが、それには長い歴史がある。それを日本や韓国のようなアジア的な風土の国に急速に導入しても、そこからは摩擦や不適合が生じる。

 大学のみならず、これは企業にも共通した問題である。このような大学教授の不祥事は、たとえば以上のようなより深い問題にまで突っ込んで検討する必要がある。これに対して、読売新聞のような報道姿勢は、ともかく社会的に強い制裁を加えるということである。悪いことをしたら、社会的に抹殺される。だから悪いことをしてはダメという趣旨である。

 この問題は、大学教授として資格や資質についての問題であって、いわゆる大きな犯罪ではない。「セクハラ」や「アカハラ」は人権問題として被害者が存在する。しかし教授2名の被害者は、いわば学問に対する信頼といった抽象的なものである。それにもかかわらず、もしくはそれだからこそ「顔写真」の報道である。これは「見せしめ」である。週刊誌などでは、よく顔写真報道が問題とされるが、大手の有力新聞が、そこまでやるかという印象をもった。

 もっとも2教授の指導を受けていた学生が、最大の被害者であるかもしれない。この事件の詳細は、さらに事実が明らかにされなければならない。

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2006年2月15日 (水)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(5)

 大学の講義で、学生の関心を高める教材を用意するということは重要である。これは大学のみならず、一般のビジネスパーソンを対象とするセミナーでも共通している。教材もしくは資料の善し悪しは、その講義の満足度や理解度を左右すると考えられる。 

 もっとも、いわゆる講義における「話術」だけで受講生の関心を引きつけることができれば、それが最善かもしれない。講師が優秀なのである。たとえば政治家の街頭演説など、特に資料を配付するわけでもないが、演説のうまい人がいれば、思わず立ち止まって話に聞き入るというようなことがある。

 通常は、こういう話術は才能が必要である。そこで凡人は教材や資料に依存して講義することになる。

 このような意味で、最近の大学生にとって関心の高い話題はライブドア・ホリエモン逮捕である。このホリエモンが起訴されたという報道が2月14日にあった。この報道の中で、教材・資料として最も詳細で明解な記事は、読売新聞であった。

 「基礎からわかるライブドア事件」という見出しを付けて、質疑応答形式での解説をしている。この中には、ベンチャー企業、株式市場、企業形態、企業成長、M&A、起業家精神など経営学において必ず学ぶべき基礎用語が含まれている。

 これは使える。この記事は「切り抜き」(スクラップ)の対象である。来年度4月からの講義で、学生に紹介しようと思う。新聞には、ニュースの報道と同時にニュースを解説という役割もしくは使命がある。報道ではTV、解説ではインターネットが新聞を浸食しているように思われるが、依然として新聞独自の役割は失われていないと思う。

 以上で紹介したような「切り抜き」できる記事は、TVからもインターネットからも入手できないのである。

 

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2006年2月14日 (火)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(4)

 2月13日朝刊は新聞休刊のために配達されなかった。13日夕刊では、各紙ともカラー写真を用いたオリンピック特集である。こういう中で日本経済新聞は、もちろんオリンピック報道も重視しているのだが、定例の経済ニュースを掲載している。 こういう記事を読むと私は安心する。

 オリンピックと言えば、すべての新聞がそれに熱中する。こういった加熱した報道は、紙面に制約があるとすれば、より重要な報道が削減されることを意味する。オリンピックは確かに大きな出来事であるが、その本来の目的は、国際交流の促進であるとか、スポーツ振興ということである。もっと極端に言えば、オリンピックは視聴者の広い意味で娯楽でしかない。

 オリンピックを私は批判しているのではない。選手が提供してくれる表情・気迫・技巧・勇気は、人間のすばらしさを実感させてくれる。選ばれた才能と努力の成果を結集させた選手の技量や演技は、人々を感動させないわけはない。他方、私たち人間の日々の生活が常に語られる報道姿勢が貫かれることも必要であると私は思う。このような意味で、日本経済新聞の経済報道を読むと、ホッとする。オリンピックがあっても、経済報道という本来の「日経」の特徴にブレがないからである。

 明日は14日と15日の新聞をまとめて紹介する。

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2006年2月13日 (月)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(3)

 12日(日曜日)の第1面は、読売・朝日・毎日・産経・日経のいずれもにおいて、「第20回冬季オリンピック・トリノ大会」を前日に続いてカラー写真入りで掲載している。

 「毎日」は、オリンピック特集紙面のページ最上部に横書きで「Passion lives here」という見出しをつけている。これに対して通常のスポーツ記事は「スポーツ 人間ドラマ」としている。「毎日」の紙面デザインは、このような最上部の横書きの見出しに特徴があり、これは親しみやすい紙面作りのための「毎日」独自の工夫とみなすことができる。この点では「産経」も、オリンピック特集の紙面ではページ最上部に「torino 2006」と水色のカラー見出しを付けて、さらに選手のコメントを紹介している。

 なお「毎日」と「産経」が使用する「Passion lives here」と「torino 2006」という英語は、オリンピックをTVで見ていると、頻繁に使用されている文字である。これは「商標」として登録されていて「毎日」と「産経」が、その使用料を支払っているのではないかと私は想像しているのだが、未確認である。

 新聞は記事の内容で勝負するというのは当然であるが、このような紙面のデザインについても「毎日」が読者に対して配慮していることは評価されてよい。デザインという観点からは、「産経」がカラーの写真や活字を多用することを特徴としている。新聞各紙は、読者が読みやすいようにという目的で活字を次第に大きくしてきた歴史がある。活字のみならず、紙面のレイアウトやデザインについても日々に改善されることを期待したい。

 さて日曜日には、新聞5紙に共通して書評が含まれている。先に指摘した「毎日」の横書きの見出しによれば、「本と出会う―批評と紹介」となり、さらに「今週の本棚」という縦書きの見出しも付けられている。

 「読売」は、書評の紙面を「本よみうり堂」として、書店のような雰囲気を出すように努力している。「日経」は、紙面の最上部を横書きにした「毎日」と同様のレイアウトで「SUNDAY NIKKEI α 読書」という名称を使用している。「朝日」は「読書」という名称になっており、ほかの紙面と同様の最上部の横書きには、人々が集まっている様子のイラストが描かれている。このように見れば、日曜日ごとの書評の紙面に新聞各紙は工夫を凝らしている。

 この日の書評で「毎日」と「産経」が、ダイヤモンド社・黒木亮『巨大投資銀行』を取り上げている。同書は、ライブドアのホリエモン逮捕を契機にして、マネーゲームに関心が集まっている時、その日本の実態を描いている。同じ本を書評として取り上げるとき、本の内容は同じでも、それぞれの評者の関心によって表現は異なってくる。

 「産経」の評者である荻原(おぎわら)博子氏は、経済評論家としてテレビにもしばしば出演されており、一般の庶民感覚からの経済分析は優れている。それを反映して、感覚的に面白そうだと思わせる語り口で同書を紹介している。これに対して「毎日」の評者である山内昌之氏は、荻原氏よりも詳細に同書の内容を紹介し、その事実に基づいて読者の興味を高めるという手法を取っている。

 この両方の書評を読まされると、同書を読んだ気分になってしまう。ますます国際化する日本の金融証券市場は、これからどのように変貌を遂げるのであろうか。経済活動は基本的に人間の営みであるから、小説という形式で人間を描くことは、経済の理論的な議論にも増して、経済を考える絶好の材料を提供してくれる。この意味で黒木亮氏の『巨大投資銀行』を買って読もうと思う。

 「朝日」の書評は、「カジュアル読書」の紙面で「コミック教養講座」として漫画本の紹介をしている。マンガも日本の重要な文化であり、それを無視することは出来ない。事実、この「コミック教養講座」で昨年に紹介されたリイド社刊・とみ新蔵『柳生連也武芸帳』というマンガを私は薦められるままに読んでみたが、「大人でも」というより「大人だからこそ」面白いマンガであった。この「カジュアル読書」は「朝日」のユニークな書評として注目に値する。

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2006年2月12日 (日)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(2)

 11日(土)は冬季オリンピックの開会式が開催された。これに関する新聞5紙の報道は共通しているが、毎日新聞は、日本選手のメダル獲得数を担当記者が予想している。最高で8個、最低で1個という予想である。すでに他紙は予想を終えていると思われるので、その意味では報道が遅かったのかもしれない。

 しかし有力新聞が、このような大胆な予想をするのが適当かどうかは議論の余地がある。もっとも、競技に対する読者の関心と興味を高めるための予想であると考えれば、それほど目くじらを立てる必要はない。ただし担当記者の氏名を明らかにしてのメダル予想であるから、その予想と実績の相違について、担当記者は説明責任を負うのではないか。予想が外れた理由を再び記事にしてもらうと読者はさらに記事を楽しめる。

 朝日新聞では「マティス「金魚」大研究」という特集が掲載されている。これについてすでに筆者も2月5日のブログで紹介した。この「プーシキン美術館展」(大阪中之島・国立国際美術館)は朝日新聞社が主催しているために、「朝日」だけが大きく取り上げている。新聞社間で競争関係があるとはいえ、こういった文化もしくは芸術行事は、主催者に関係なく相互に報道をしてもよいと考えられる。なお、ここで紹介する記事は大阪版である。こういった大阪での美術展は、同じ新聞でも東京では報道されていない。

 産経新聞は、「建国の日に考える憲法と皇室典範」という小堀・東大名誉教授の論説を「正論」で掲載している。この記事がなければ、2月11日が「建国記念日」の祝日であることに、他紙の紙面からは気がつかないところであった。

 土曜日が休日の企業や学校が多いのだから、日曜日のみならず土曜日が祝日の場合も「振り替え休日」を増やしてみてはどうか。「国民の祝日」を実感するためにも、休日を単に増やすだけでなく、自己研修などの充電時間を増やすためにも、休日を増やすことに私は賛成である。

 読売新聞では、解説記事について紙面に工夫がされている。編集委員もしくは解説部員が、ライブドア事件や防衛施設庁改革など最近の問題に関する質問に答えるという形式で、紙面全部を使って解説している。しかも実名のみならず顔写真入りであるから、解説担当者に対する親しみや信頼感が増える効果がある。しかしながら解説者の立場に立てば、顔写真の掲載によって、たとえば思い切った批判的な記事が抑制されるのではないか。このことは、匿名すなわち名前を明らかにしない記事の場合、より本音を書きやすいということを想起すればよい。

 記事内容に責任をもつのは当然であるが、それをすべて新聞記者の個人責任とするのは新聞社としての会社の責任の免罪符に使われることもあるように思う。前に述べた毎日新聞のオリンピックメダル予想も、担当記者の個人的な予想であると同時に、毎日新聞社としての予想という意味ももっているのである。

 どの新聞にも共通して、記事の執筆者の氏名を最後に付記するように、この数年前に変化したように思うのだが、このことについての功罪を新聞社自身が検証することがあってもよいと思われる。

 11日の日本経済新聞では、「キャノン、ベトナム新工場」という大きな記事が目を引いた。これからの日本の外国直接投資先として「中国プラスワン」が注目されている。つまり中国に加えて、もうひとつの投資国はどこかという意味である。すでにインドが注目されているが、ベトナムもこのプラスワンの有力な候補国である。そうであるにもかかわらず、新聞紙上に登場するベトナムの記事は多くない。

 「日経」の場合は、10年近く前からハノイに駐在員が常駐しているが、それ以外の新聞社はタイのバンコック支局からの出張という形態でベトナムを取材していることが多い。これが、ベトナムに対する関心が高いにもかかわらず、その報道が少ない理由のひとつである。ベトナム企業経営の研究を私は専門にしており、この立場からすれば、ベトナム報道の活発化を期待したい。

 なお、このキャノンの記事に掲載されたインクジェット=プリンターのハノイ工場も、現在建設中の新しい工場も訪問または見学したことがある。これらの部品が、中国の広州から陸路で運送されるという将来の展望もあり、中国とベトナムの連携した経済発展がベトナム北部のハノイを中心に進行するという可能性に注目しなければならない。

 以上、2月11日(土)の新聞5紙から印象に残ったことを紹介した。明日は、2月12日(日)の紙面を紹介しよう。

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2006年2月11日 (土)

NHK「新聞を読んで」:メディア共創(1)

 2月18日(土)の早朝5時40分頃から放送されるNHKラジオ第1放送「新聞を読んで」に筆者が出演します。1年に2回のレギュラー出演が5年ほど続いています。この番組の収録は、前日17日(金)の夕方から、場所はNHK大阪放送局です。

 この番組は、読売・朝日・毎日・産経・日経の5紙を1週間読んで、13分間程度でコメントします。話す内容は自由です。もちろん本職のアナウンサーが文言のチェックをしてくれます。これまでに訂正された実例で言えば、「小泉首相」ではなく、ラジオ放送では「小泉総理大臣」が正しい表現です。

 この番組は早朝に放映されますが、かなりの反応がありました。NHK担当者によれば、全国に100万人の聴取者がおられるようです。病院に入院されている方から、感想のお手紙を頂いたり、原子力発電の事故を批判した時には、その関係者の方から筆者のコメントに対するお叱りをいただいたこともありました。また新聞の専門家のように誤解されて、「新聞の起源はいつですか」という質問を頂戴したこともあります。また小学校の恩師から「偶然に聞いた」という電話があったりしました。これらの方々のお手紙には、すべて返事をさせていただいています。いずれも勤務先の流通科学大学宛でした。

 このブログとラジオが融合すれば、ラジオ番組の聴取者からの意見をブログに書き込んでいだだけます。またブログの読者に筆者の「肉声」を聞いていただけます。ブログとラジオの双方向のコミュニケーションが出来るかもしれません。新しいコミュニケーション手段が共創される可能性があります。おそらくラジオよりもTVの方が、もっと影響や効果は大きいのだろうと思います。(なお筆者のTV出演は、島根県で開催された「ベトナムセミナー」についてインタビューされて、地元放送局の夕方のニュースで放映されたのが唯一の経験です。)

 おそらく「ライブドア」のホリエモン氏は、このようなインターネットと他のメディアとの「共創」の仕組みを模索していたのだと思います。しかし実態がない。これから試行錯誤の段階だったのでしょう。以上のような筆者のアイデアは、単なるアイデアにすぎません。そこからビジネス(=利益を生み出す)モデルにアイデアを発展させることが重要です。どのようなことでも「重要なこと」は簡単ではありません。

 明日から、このラジオ番組の原稿の素案をブログに書いてみようと思います。その日の大手新聞5紙を読んで、筆者の気がついたことを紹介します。これについて書き込みのコメントを頂いたら、それについてラジオ本番で紹介をさせていただきます。

 なお、1週間の新聞記事を紹介する既存のTV番組があります。「この1週間の出来事」というような内容です。放送時間の長い事件のランキングを報道する番組もあります。これらにTV視聴者の意見や反応が反映されると、番組が身近になり、視聴率の上昇に貢献するかもしれません。

 家電の大型店に行くと、リビングルームに液晶やプラズマのTVを置いて、そこにパソコンも併置して、同じ画面でCATV・DVD・衛星放送・インターネットを見るという提案がされています(大阪・梅田のヨドバシ)。画面を分割して、右側でTV,左側でインターネットというような使い方が実現しています。メディアの融合と共創の時代が到来していることが実感できます。

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2006年2月10日 (金)

ハイブリッド型の講義・研究・教育:マリメッコを通した「実学」

 流通科学大学における学内募集の「学生懸賞論文」で筆者のゼミ学生4名が第3席に入賞した。商学・情報学・サービス産業学という3学部の中で情報学部からは唯一の入選であった。学生の努力の成果として筆者のゼミナールの存在感を示すことができた。そのテーマは「日本におけるブランド商品の購買行動と新規導入戦略:「マリメッコ」を事例として」である。

 マリメッコ(MARIMEKKO)は、衣料品を始めとしてカバンや日用品の斬新な色彩とデザインが印象的な北欧フィンランドのブランドである。このマリメッコ論文の発表までには次の3つの経緯があった。

 1.昨年7月に約1ヶ月間、フィンランド人高校生のアンナカイサさん(17歳)が、拙宅にホームステイした。「国際ライオンズクラブ」主催の「青年交流事業」支援活動の一環である。上田ゼミに彼女を招待し、フィンランドという国家について英語で説明してもらった。映画「ラスト=サムライ」のロケ地である姫路市や大学所在地の神戸市に上田ゼミ4回生が案内してくれた。

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 フィンランドの教育水準が世界的に高いことが最近に注目されているが、彼女の話を聞いていると、試験は厳しそうだが、教育は余裕があるという印象であった。このホームステイ中に、フィンランドがサンタクロースの生まれ故郷であることや、ムーミンそしてマリメッコで有名なことを知ることができた。アンナカイサさんとは今でもメールでの交流が続いている。

 2.昨年9月末に大学の実学科目「21世紀の業界展望」において、大手アパレル製造販売会社・()ルックの取締役大阪支店長・里村秀美さんに講義していただいた。里村さんと私には金沢市に共通の知人がいて会話が弾んだ。同社が今年春からフィンランドのマリメッコを本格的に販売するという話をされた。この講義を受講した学生がマリメッコに関心をもつのは当然であった。

 3.ゼミ3回生の中に「ブランド品」について研究したいという学生がいた。それならマリメッコを事例としてとりあげようということになった。ルック大阪支店で資料を頂戴し、さらにゼミ学生2名は東京・六本木のマリメッコ展示会に出席し、担当の方から聞き取り調査した。この東京訪問では、新神戸・東京間の旅費の半額をゼミ予算の中から支出して研究を支援した。完成した論文は、お世話になった同社の方々にすでに御礼とともにお送りした。

 以上のように「ゼミ活動」・「講義」・「学生の共同研究」という3点がハイブリッド(複合的)に結びついて懸賞論文が完成した。流通科学大学における「実学」教育の一例である。

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2006年2月 9日 (木)

1千万円の運用方法

 某会社における就職希望者の「エントリーシート」記入欄に、次のような問題があった。筆者のブログの中で「お金の使い方」で人間性が理解できると書いたが、それに関連する問題である。

 「1000万円を手に入れたらどのように運用しますか?具体的な金額の割り振りとその運用方法、それぞれの目的を自由に表現して下さい。(34行程度)」。

 預金・不動産・株式という3分法が伝統的な資産分散・運用方法であるが、地価は必ず上昇するという「土地神話」が崩壊した今、不動産投資が適当かどうか。また1千万円というとそれほど大きな金額でもない。「運用」ということだから、資金を増やすことを考えなければならない。では、どのように解答すればよいか。

 運用方針は「安全性重視」と「ハイリスク=ハイリターン重視」に大別できる。それぞれについて自由に書けば、大きな間違いはない。しかしエントリーシートの目的が学生の個性を見ることであるとすれば、ありきたりの解答では印象が薄い。人気企業ともなれば、1万人以上の応募の中から採用は50名程度という状況である。

 そこで「自分自身に対して投資して自己の価値を高める」というような答えを書いてみる。これは就職のための解答ではなく、本来は大学生や社会人すべてに当てはまる資金運用方法の一つである。

 英会話の個人レッスンを受ける。経営大学院や法科大学院に入学する。世界一周旅行をする。世界一周でなくても日本一周でもよい。新しい体験や知識のためにお金を使い、そのことで新しいアイデアや知人ができる。それによって自分の価値が高まり、それが投資資金を上回れば、資金運用として成功である。

 ホリエモン事件などお金に関係する犯罪が連日のように報道されている。お金について自分の考えを整理しておくとよい。さらに、そのために友人と議論すればよい。今年の就職面接問題の傾向となるかもしれない。

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2006年2月 8日 (水)

大学生の就職のツボ;続編

 「仕事に徹する」という言葉がある。プロ意識をもって私情を挟まず、仕事に専念するということである。これは、企業で仕事をする場合、歓迎される姿勢である。

 仕事のプロと言えば、「ゴルゴ13」がそうである。ゴルゴ13は、筆者の中学生時代からの知人である。「それはだれ?」という人は、たとえば次を参照してほしい。 http://www3.tky.3web.ne.jp/~aja/

 しかし人間である限り、まったく私情がなくなるということはありえない。そうだとすれば、仕事では私情を殺した自分を演出するということである。つまり「演技」する。私事と仕事を区別する。仕事は、あくまでも演技の場である。それに対して報酬を給料としてもらう。

 プロの役者は、その役に成り切るために台本以外の勉強をする。たとえば名優と言われた故・滝沢修は、画家ゴッホを演じるために本格的にゴッホを研究している。名優は、台本を単純に暗記するという水準を超えている。だからこそ名優なのである。これについては、滝沢荘一『名優・滝沢修と激動昭和』新風舎文庫を参照。

 仕事でも「名優」になるために努力しなければならない。このように考えれば、就職活動(就活)においても「演技力」が問われるということである。希望企業に自分が適合していることをアピールするためには、適合しているように演技しなければならない。

 冷静で知的な人材を求めているなら、そのように自分を演出しなければならない。元気で明るい人材を求めているなら、そのようにふるまわなければならない。その両者を兼備した人材となると、かなり複雑な演技力が必要になる。

 そのために鏡の前で笑顔の作り方を勉強し、明瞭な話し方ができるように自問自答を繰り返す。その様子を見た家族は、どこか変になったのかと心配するかもしれないが、それは演技の練習なのである。さらに望ましいのは、家族や友人を相手にして自分の演技力をチェックしてもらうことである。

 このような演技そのものの練習は今からでも可能であるが、演技の「深み」は、これまでの経験や努力が反映するので早急に用意できない。企業の採用担当者は、この演技の「深み」を見ている。しかし「深み」をもった演技ができる学生は少ないから、表面的な演技だけで採用される可能性はある。しかし社会人の中途採用となると、それは無理である。

 演技を軽視してはならない。努力して演技していると、いつのまにか、その役になりきってしまう。それが過度になると、仕事と私事の区別がなくなり、すべて仕事となる。こうなると人間性や個性の喪失である。

 以上の要約:仕事と私事を区別する。仕事は演技の場である。就活のために演技力を練習する。名優になるために努力する。

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2006年2月 7日 (火)

「実学」とは何か

 流通科学大学では「実学」が建学の精神である。

 実学とは何か。これは定義し難い。以前は「仮説を立てて実証する」ことが実学と大学で公式に定義されてきたが、最近は、「知識を知恵に変えるチカラを身につける教育」と言われている(『読売新聞』2005年12月3日全面広告)。いつの間に変わったのか明らかでないが、もともと実学の定義は明確でないのだから、いろいろな解釈があってよい。

 筆者は学生に「学んだことを実行する」ことが実学だと話している。豊富な知識があっても、それが実行されなければ、それは「宝の持ち腐れ」だという意味である。人間は、長い歴史の中で日々の生活の維持と向上のために学習してきた。もっと簡単に言えば、生活と結びついた勉強をしてきた。このような学習活動がなければ、人間は存続できなかったに違いない。これが実学ではないか。このような意味を学生に講義で筆者は伝えている。

 たとえば「料理の本」が多数あって、それを一生懸命に暗記したとしても、その料理を作らなければ、意味がない。さらに料理の食材が実際に入手できなければ、その料理は作れない。新しい「料理の本」を出版しても、その料理をだれも作ってくれなかったら、それは料理の本とは言わないだろう。それは「自己満足の本」というべきではないか。人々の現実の生活や入手できる食材を念頭においた料理を教え学ぶ。これが「実学」としての料理の教育であると筆者は思う。もちろん料理それ自体を研究するという分野があってもよいが、それは実学とは言わないであろう。それは、あくまでも理論研究である。

 具体的な講義では、たとえば「CSを知ってますか」と学生に問う。少し勉強したり、バイト先で教えられたりして、それが「顧客満足」と答える学生が何人かいる。実学的なアプローチでは、その顧客満足が本当に理解できるまで日常的に教育する。すなわち顧客満足のための基本的な考え方と方法は「顧客の立場にたって考え行動する」ことである。より一般的には、相手の立場に立って考え行動することである。「それでは皆さん、相手のことを考えて、行動できていますか」と質問する。「講義中に遅刻したり、私語したり、そういう人は顧客満足を理解できていないのではないか」。「言葉を知ってるだけでは、本当に顧客満足を理解したことにならない」。こういう話をして、筆者の考える実学を説明している。

 このように実学を考えると、かなり思想的・哲学的な内容に立ち入ることになる。実践=行動至上主義というような考え方に近づくのかもしれない。本気になって実学を追究すると、かなり奥深いことになりそうである。この実学を建学の精神としているのだから、やはり常に「実学とは何か」と学生とともに問い続けなければならないと筆者は考えている。

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2006年2月 6日 (月)

ファンランの塩:マーケティング戦略

 自宅の書斎を整理していたら、2月2日に紹介したファンラン塩田の新聞記事が「発掘」された(2005年7月11日「ベトナム新風 天然塩:味の決め手は海の恵み」『日本経済新聞』大阪版・夕刊)。以下、この記事を紹介し、さらに私見を付言する。次のように日経の記事は述べている。

 「なめてごらん」。出来たての塩をひとつまみ。初めは苦い。すぐに海の香りと甘さに変わり、口いっぱいに広がる。中部ファンラン周辺で作られる天然塩が最近、日本の高級料理店などでも重宝され始めた。

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 「この塩がなければ望む味は出ない」とホーチミンでベトナム麺(めん)の店を経営するホアンさん。毎晩、地下水と天然塩で仕込むつゆに絶対の自信を持つ。ベトナム料理のおいしさの秘密は自然をたっぷり含んだ塩にありそうだ。

 ダム・ブア・ソルトの社長秘書グエン・チ・マイ・エンさんは「同じ海岸で取れる塩でも味は全く異なる。うちよりおいしい塩を作るところは多い。今も試行錯誤の連続」と話す。妥協を許さないベトナム人気質は健在だ。

 以上の記事に出てくる「高級料理店」を筆者は直接知らないが、伝聞では、東京で1本千円といった焼き鳥を出すような店が「ベトナム天然塩」の使用を宣伝しているそうである。

 このブログを書いていて、天然塩の「甘い味」が無性に恋しくなった。そこで近くのスーパーで「自然海塩・海の精」を思い切って買った。ここで「思い切って」と言うのは、その価格が税込みで千円を超えるからである。内容量500グラム。伊豆大島産・黒潮から生まれた純国産塩。食の温故創新を提唱する日本食用塩研究会(NPO法人)が発売している。この商品説明によれば、その味は「さまざまな塩類をバランスよく含んでいるため、ただ塩辛いだけでなく、ほのかな甘味や苦味があり、料理や食品加工に使うと、まろやかな美味を醸し出します」と指摘されている。http://www.uminosei.com/top.html

 この塩、確かに甘い。筆者からすれば、懐かしいベトナムの味がする。伊豆大島で生産して市販価格千円に対して、ベトナムで普通の塩が市販で1㎏数十円でなかったかと思う。ベトナムのブランド商品であるファンランの塩と言っても、その価格は大差ない。そうであるとすれば、日本とベトナムの「甘い塩」の価格差は、数十倍と考えられる。

 ファンランの塩は、日本で知名度は低いが、同様に上記の「海の精」も一般には知られていない。この意味で、顧客の認知度について両者に相違はない。したがってファンランの塩も日本でブランド商品化できる可能性は高い。「海の精」よりも安い価格にして、その味と成分が同等水準と顧客に認知されれば、日本市場に本格的に参入できる余地はあるように思われる。

 以上のファンランの塩、2月2日に指摘した株式上場を絡めたビジネスモデルによって、さらに成功する可能性があると思う。興味のある読者の方々からのコメントやご意見をお待ちいたします。 

 

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2006年2月 5日 (日)

マティスの金魚

 大阪市の国立国際美術館で4月2日まで開催中の「プーシキン美術館展」に家族で行ってきた。内容は「モネ・ルノワール・ゴーギャン・マティス・ピカソ---フランス印象派・近代絵画コレクション」である。参照:国立国際美術館 http://www.nmao.go.jp/

 主要な展示物は、縫製業で富豪になったロシア人2人の蒐集した美術品である。マティスやモネ、無名だったピカソといった画家の作品を買い取り、それらは当初個人で鑑賞されていたようだが、ロシア革命後は国有化され、現在はプーシキン博物館とエルミタージュ美術館で公開されている。昨年に岡山県倉敷市の大原美術館に行ったが、やはり大原孫三郎とそのご子息が私財で購入した作品が展示されている。このようにお金持ちの篤志家・愛好家が若い芸術家を支えてきたことは内外に共通している。

 ホリエモン事件の時に「お金の使い方」の問題を指摘した。どのようにお金を使うかで、そのお金の性質と同時に人間性も明らかになるのではないか。余分なお金で豪遊したり、贅沢したりするというのはだれでも考える。そうでない使い方は何か。お金のない今のうちに考えるのが楽しいのかもしれない。

 今回の展示会における目玉となる作品のひとつは、マティスの「金魚」であった。斬新な色彩は目を見張るのであるが、素人目には幼稚園児か小学生の絵ではないかと思ってしまう。この解釈は、時代背景を考える必要があるのではないか。今でも、その色遣いに驚いてしまうのだから、この作品が発表された1912年は、より以上に驚嘆の評価があったに違いない。ちょうど1917年がロシア革命であるから、この作品当時のヨーロッパは政治的に激動の時代である。このような中で鮮烈な色彩は、まさに革命の赤旗を連想させる印象を与える作品であったのかもしれない。

 作品それ自体は普遍的であるが、そこには歴史が埋め込まれている。「金魚」を見て、このようなことを改めて考えた。

 この「プーシキン美術館展」のほかに、国立国際美術館の常設展示がある。その中で興味深かったのは作品というよりも作家についてである。1997年と2002年の作品が並列に展示されていたが、両方とも同じ作品のように思われた。この5年間に作家は何をしていたのだろうか。この間の生活はどうなっていたのか。

 作品を通して作家を考える。このような楽しみを感じさせてくれるのも美術館の楽しみである。同様に筆者も経験があるが、論文のテーマや内容が研究者の研究歴の中で変化することがある。その理由を説明する人もいるし、そうでない人もいる。その変化は、どのような理由であるか。また、数年間に渡って論文発表しない研究者がいる。その間、この人は何をしていたのか。

 芸術家も研究者も、その作品や論文から人間や人間性を考えさせる点で共通している。しかし最近、このように論文を読み込むことが、多忙のために少なくなったように思う。ここでも改めて、日常の反省をすることができた。

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2006年2月 4日 (土)

ベトナム株式投資の魅力

 日越経済交流センター『日越経済交流ニュース』における筆者の連載記事「元気な国のゲンキな話」を紹介します。最新の2月号は「ベトナム株式投資の魅力と留意点(上)」というテーマです。

「02-2006.rtf」をダウンロード

 このほかのベトナム情報収集、およびこのニュースの定期購読は、上記センターに問い合わせてください。電話:050-5517-5386・FAX:066-353-3433

 最近の筆者は、ベトナム株式について注目していますが、それはWTO加盟を目前にしたベトナム経済にとって、最も効果的な企業改革・金融改革の手段と考えているからです。社会主義指向の市場経済において、ベトナム証券市場の発展過程は明白です。日本のような野放図の「マネーゲーム」発生を抑制するための「注意深い」規制・統制です。しかし市場育成のために一般投資家の市場参入が必要ですから、「マネーゲーム」の禁止は不可能です。この微妙な調整政策を「注意深い」規制・統制と筆者は呼んでいます。

 ベトナム政府および国家証券委員会は、以上の問題についてどのように考えているのでしょうか。次回の訪越における筆者の調査課題です。

 

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大学生の就職のツボ

 先日、某メーカー採用担当者の方と話をさせていただいた。「流通科学大学(=流科大)の学生をよろしく」という就職率アップのための営業活動の一環である。

 この「よろしく」という意味は、「どっちにしようかなと迷う場合に配慮してください」ということである。「何が何でも何とか採用してください」というのでは、その後が長続きしない。私は、このような立場で「営業」している。すべてが満足するような「WIN-WIN関係」の就職が最善である。無理のある就職は、企業も大学も学生も不幸になると思う。

 流科大の開学当初(1988年)には「豪傑」のような教授が就任されていた。お酒の臭いをプンプンさせて講義して、その後に転倒して救急車で入院されたというような武勇伝(エピソード)がある。しかし、その経歴や業績は抜群のものであった。まさに「古き良き時代の大学教授」であった。これに対して最近の大学教授はサラリーマン化しているし、その勤務状況が評定されて給与に反映するようにまでになっている。この意味で、かつての「豪傑」や「名物」と呼ばれる教授が今日では生活し難くなっている。

 上記の「豪傑」教授は、大学と学生のためを思って就職の依頼に無理をした。この教授は、多数の経営者・経営幹部の友人・同輩・先輩なのだから、流科大の卒業生の採用を積極的に働きかけた。その成果は当然あったのだが、その翌年には、企業採用担当者から「先生、もう今年は勘弁してください」という反応があったそうである。

 筆者は、この教授を尊敬・敬愛すると同時に、とても真似ができないと思った。私見では、社会・経済において無理は厳禁である。自然の流れに任せることが必要である。まさに市場がそうである。いろいろな過程を経た後に、それなりに収まるところに収まる。これが市場原理である。自然の流れに任せることが最も安定的な均衡した結果となる。この間、積極的・主体的な働きかけが市場や環境に対してあって当然であるが、そこに無理があれば、市場全体からの反撃を受けることになるであろう。その結果、やむを得ない修正や変更が行われる。

 以上、要するに就職活動を個人的に頑張るのはよいが、無理をしてはいけないという教訓である。自分の実力と本音を素直に出せればよい。過大評価と過小評価の両方を避けることに心がけることが重要であろう。さて、上記メーカー企業にとって望まし大学新卒学生は次のようである。

 (1)日本のメーカーは共通して海外生産が一般的である。したがって 語学力がすべてでないが、必要である。特に女子の採用は、一般に語学ができる人が多い。
 (2)即戦力とは言わないが、2年目から成果を上げるような人材がほしい。
 (3)国内の転勤のみならず、外国赴任を嫌がっては困る。
 (4)コスト削減とスピード重視の企業経営が当然なので、1人当たりの仕事は多い。さらに「チーム連携」も必要である。こういう仕事の環境なので、ストレスに強い人、メンタル面で強い人が望ましい。
 (5)文系の採用では、国内・海外営業、購買、海外企画、それにスタッフ(総務・人事・経理)など仕事になる。それでも海外の仕事が増えてい る。人口減少による日本国内の販売減少を海外販売で補完するのは、どのメーカーにも共通してい る。
 (6)総じて、望ましい人材は精神的に強靭な骨太タイプ。こういう人は、どの会社でもほしがるので他社との取り合いになる。

 以上、 これから当然になる海外ビジネスを考えれば、 精神的にタフな人が求められていることがわかった。このような人材の育成が、大学に求められているとすれば、果たして具体的に何を教育すればよいか。そうは言っても、その第1歩は筆者のゼミでの指導が問題である。この4月から創意工夫したゼミ活動の戦略を学生と相談しながら決めたいと思っている。

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2006年2月 3日 (金)

実るほど頭を垂れる稲穂かな

 筆者の論文やブログに関する最も信用できる評価者は誰かと言えば、それは妻である。彼女は、ベトナムやラオスなどについて筆者が書く文体を「偉そうだ」と言う。大学教員は、偉そうだから値打ちがあり、それと同時にうっとうしく感じられるのかもしれない。このことを自覚することもあるが、常に「偉そう」という評価については素直に反省しなければならない。なぜなら何と言ってもベトナムについては、大先輩の学者やビジネス関係者や友好団体の方々が多数おられるからである。

 さらに筆者は、ベトナムやラオスを話題にして論文を執筆し、それを自らの研究業績としているのだから、それらの国々の人々に対して不遜であってはならない。感謝、感謝の気持ちである。ともかく「偉そうにする」と指摘されたら、自覚がないにしても直ちに謙虚に反省することである。

 妻の父すなわち岳父は、大手総合商社の取締役に就任した20年前に、「実るほど頭の垂れる稲穂かな」という表題の文章を社内報に執筆した。このことは今でも記憶に新しい。さらにその時に筆者自身も自戒しなければならないと思った。

 そうは言っても、けっして筆者が「実った」とは思っていない。人間、死の直前まで成長ではないか。しかし成長しながら衰退する。このような矛盾の存在が人間および生物ではないか。それが自然の摂理ではないか。そうであっても常に謙虚に自ら反省する。それと同時に、前向きに元気に当面の仕事に取り組む。

 大学院生の時の友人は現在、九州の有名大学の教授である。彼は「大学教員は、お坊さんのようである」と述べていた。この意味は、両者ともに生産活動に直接貢献していないが、それなりに尊敬(敬遠?)されているということである。そういう立場の人間は、謙虚であるからこそ尊敬されるのであって、仮に偉そうにしたら逆に批判や反感を招く。

 「実るほど頭の垂れる稲穂かな」。こういうセリフを言えるように、これから何かで「実る」ことを積極的に考えてみたいと思う。謙虚さを忘れずに。

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2006年2月 2日 (木)

ベトナム株式投資の教訓(1)

 ベトナムに詳しい人なら、ファンランという地名を聞いたことがあるかもしれない。ファンランはニントゥアン省(首都:ニンチュウ市)にあり、カムラン空港から有名リゾートのニャチャンの反対方向、ホーチミン市方面に自動車で1時間少しである。ここは、定番の旅行案内書『地球の歩き方』にも記載されている。

Dsc03121  筆者は昨年にファンランを訪問した。塩田で有名な所であり、その塩の味はミネラルが豊富のために甘い。この味は、筆者の人生50年の中で驚きであった。東京の高級料理店が、わざわざ買い付けに来ているし、大手商社も注目しているそうである。写真を参照。

 このファンランの製塩会社「ニントゥアン製塩社」が株式会社化され、その株式の一部が本年1月に新規公開された(http://viet-kabu.com/news/ipo/060105071512.html)。その入札競売方式による新規株式公開(IPO)がホーチミン証券取引所で行なわれた。その結果、額面1万ドンで、最低入札価格が1万50ドンに対して、最高入札価格も1万50ドンでしかなかった。簡単に言って株式公開は失敗であった。

 筆者は、この株式を買ってもよいと思ったが、その機会がなかった。入札失敗の理由は、ベトナム製塩技術が未熟であることと、生産が天候に左右されるので不安定ということが一般に指摘されている。そのために人気が出なかったのである。なるほど、その通りであるが、これは本当の理由ではない。この事例からのベトナム株式投資の教訓は次の2点である。

 1.外国人が「良い会社」と思っても、ベトナム人が「良い会社」と思わない株式購入は慎重にする。ベトナムのことはベトナム人に聞く。

 ファンランの塩は、外国人が思っているほどにベトナム人は商品価値があると考えていないのかもしれない。この事例の製塩会社は投資対象会社ではなく、外国人が育成していく会社とみなすべきである。株式を取得し、新しい生産技術を導入・指導し、競争力を強化し、さらに商品化や外国の販路確保まで協力する。その後に上場し、創業者利得をベトナム人と共に享受する。この会社は、このようなタイプの会社ではないかと思われる。筆者に資金的な余裕があれば、このようにしたいほどにファンランの塩は魅力である。ともかく重要なことは、ベトナム株式の評価についてはベトナム人に聞くことである。

 2.あまり外国人が知らない「マニアック」なベトナム株式には手を出さない。

 「ベトナム通」を自称する人にとって「ファンランの塩」は有名だし、その味を筆者のように体験すると評価が高まる。しかし先に転換社債を販売した「ベトコンバンク」や、株式を入札競売した「ベトナム石油・採掘油井会社」に比較して、一般の外国人の知名度は非常に低い。外国人にも納得できる有力なまたは知名度のある国営企業の株式を購入するべきである。このような株式投資の考え方は日本でも同様である。自分だけが思い込んでいる優良株式は、絶対に値上がりしない。株価上昇には、多数の投資家も同じように考えることが不可欠である。経済学者ケインズが述べたように「株式投資は美人コンテスト」である。

 以上、ベトナム株式投資について教訓である。今後順次、気がついた時点で紹介する。

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2006年2月 1日 (水)

JICA:ラオス支援の評価調査報告書

 先週、独立行政法人国際協力機構(JICA)・人間開発部から『ラオス人民民主共和国国立大学経済経営学部支援プロジェクト終了時評価調査報告書』(2005年7月)が送られてきた。このプロジェクトに筆者は、2001年に4ヶ月間、JICA短期専門家として従事した。それ以来、その後も何回か短期で仕事をしている。また国内支援委員会の委員をしていた。このような事情で報告書が送付されてきたと思われる。

 ラオス政府は1986年以降、市場経済に移行するための経済改革を進めているが、そのためには人材育成が不可欠である。そこでADB(アジア開発銀行)の支援を受けてラオス国立大学が1995年に設立され、その際に経済経営学部も新設された。しかし2001年9月でADB支援が終了するために、それ以降の技術協力を日本に求めてきた。その要請に応えて、このプロジェクトは2000年9月1日から5年間の期間で開始された。当初4年間は、本プロジェクトとラオス日本人材開発センターが一つのプロジェクトとして運営されていたが、2004年4月のJICA本部の組織改編にともなって、二つのプロジェクトに分離された。

 プロジェクト概要は次のとおりである。案件名:ラオス国立大学経済経営学部支援プロジェクト、分野:高等教育、援助形態:技術協力プロジェクト、所轄部署:人間開発部、協力金額(評価時点):8億4千万円(2004年3月末まではラオス日本人材開発センタープロジェクトと同一案件)。

 協力内容は次の4点である。(1)上位目標:FEM(経済経営学部)の卒業生がラオスの市場経済化に貢献する。(2)プロジェクト目標:FEM卒業生が優れた学究的・専門的知識と技能を有する。(3)アウトプット:①教員の質が向上する。②カリキュラムと教材が開発され、改善される。③必要な機材と施設が存在する。④FEM運営管理システムが強化される。(4)投入(評価時点):日本側(長期専門家派遣10名、短期専門家派遣47名、日本での長期研修受入15名、日本での短期研修受入15名、第三国での長期研修8名、第三国での短期研修14名、機材供与(ローカルコスト負担含む)0.52億円。相手国側(カウンターパート配置68名、ローカルコスト負担、光熱費・通信費など負担、土地・施設提供、建物の土地提供、事務用家具類)。

 次に評価結果の概要として、次の項目が記載されている。(1)実績の確認、(2)評価結果の要約:①妥当性、②有効性、③効率性、④インパクト、⑤自立発展性、(3)効果発現に貢献した要因、(4)問題点及び問題点を惹起した要因、(5)結論、(6)提言、(7)教訓。

 以上のプロジェクトは、日本のODA(政府開発援助)資金が使用されている。国民の税金の使途について、政府および関係機関は「説明責任」と「透明性」に留意しなければならない。その意味で、上記のような評価結果の概要に見られるような詳細なチェック項目が求められる。この中では当然に反省点や問題点の指摘もある。しかし、その責任を厳しく追及することは合理的でない。

 なぜなら、こういった人材育成支援は橋梁や道路建設とは異なって、支援相手が感情をもった人間である。ラオスの慣習・慣行やラオス人の気質を抜きにして支援の効果を高めることは不可能である。無理に高めることは逆効果でしかない。この観点でいえば、長期専門家として1年以上の現地滞在された先輩の方々の粘り強い努力と忍耐が、高く評価されるべきなのである。これに関連して報告書は、次のように指摘している。「本件は、技術協力プロジェクトとして社会科学分野の高等教育にJICAが支援するケースとしては、ほぼ最初のケースであるということから、プロジェクトの費用便益の観点から正確に分析することは、現時点では困難である」(p.21)。

 また筆者が、このプロジェクトで仕事した2001年9月~12月については、次のように記載されている。「経営分野(学問としての経営分野)の専門家は、プロジェクト開始後2年経ってから派遣されている。その間、短期専門家が経営学分野の活動において大きな役割を果たしたが、全体としては、最初の2年間の投入は十分でなかったと思われる。ーーー(省略)ーーー短期専門家の派遣タイミングについては、概ね適切であったとされている。ただし専門家の多くが大学教員であり、本業スケジュールとの兼ね合いから派遣可能な期間が限られており、一部、派遣期間が十分でなかった例もあると指摘されている」(p.21)。

 上記の「短期専門家」に筆者が含まれている。個人的には、もっと長期間の仕事をしたかったが、それは本務校の事情が許さなかった。もし現地のカウンターパートが筆者のことを「十分でなかった例」と言ってくれているのなら、それは喜びであり、光栄である。派遣期間が終了時、ビエンチャンのワッタイ国際空港での満足感と寂寥感は、今でも記憶に残っている。そのこともあり、その後もラオスに何度も訪問している。さらに大学生を同行した「清掃ボランティア活動」は、今年の夏に4回目となる。

 この調査報告書の中の数行の記述であるが、筆者の足跡がラオスに残せたことは誇りである。また何よりも、ラオスの人々との交流が今日まで持続していることが嬉しい。これが、ベトナムに劣らずラオス大好きの理由である。

  

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