« 流通科学大学・大阪オフィス | トップページ | 外国人を信用するということ »

2006年1月21日 (土)

富士通・川嶋さんの講義

 昨日・20日(金)の午後6時30分~9時30分まで、大阪市立大学大学院都市創造研究科で川嶋修三さんが「富士通のベトナムでの経営展開(事例)」というテーマで講義された。川嶋さんは、富士通ゼネラル顧問・元富士通ベトナム社長・ドンナイ省投資諮問員という肩書きであり、現在も、タイとベトナムの訪問を繰り返されている。

 私は1998年の初対面以来、おつきあいをいただいていて、ベトナムでは「川嶋チルドレン」の一人と自称している。ともかく川嶋さんは、パナソニックベトナムAV(松下電器のベトナム子会社)の藤井孝男・前社長と並んで、ベトナム進出日系企業の「父」という存在である。

 川嶋さんのベトナムに対する貢献は多々あるが、その中でも特筆されるのは、川嶋さんを中心にした日本商工会がベトナム政府に要求して、労働者の賃金を米ドル表示からベトナムドン建てに1999年に変更させたことである。この経済的な効果は絶大であった。隣国カンボジアは最低賃金45ドルと米ドル表示であり、それは実質的にベトナムよりも賃金が高い。また中国の人民元の切り上げ予想が言われているが、ベトナムでは、傾向的なドン安であり、これは外国企業にとっては出資金額が少なくなることを意味する。

 現在ベトナムで活躍する日系企業は多いが、そこで当然と思われている制度は、川嶋さんを初めとするベトナム進出に先陣を切られた人々の勇気と努力の成果なのである。政府に抗議を表明するのだから、ひよっとすると政府から圧力がかかったり、嫌がらせをされるのではないかという懸念が当時あった。それでも政府に言うべきことを言う。この経営者もしくは人間としての勇気ある決断が高く評価される。上記のように米ドルからベトナムドンへの賃金表記の変更(労働法変更)は、今日のベトナム投資の魅力となり、ベトナム政府にも好影響を与えている。

 年末年始のカンボジア訪問では、国内では自国通貨リエルよりも米ドルが一般に流通している。これは独立した国家として異常な状況である。また政府の金融・通貨政策が有効に機能しないであろう。このように考えると、ベトナム政府の政策変更は当然であるし、川嶋さんの主張は正当性があった。

 今回の川嶋さんの講義における新しい指摘は、以上の主張をめぐって、ベトナム国内のマスコミの賛否が2分されたということである。川嶋さんの主張を支持する新聞と批判する新聞があったそうである。この事実は、ベトナムに「言論の自由」が存在していることを証明している。ベトナムは一党独裁というけれども、その政権は合議に基づいており、個人に権力は集中していない。この合議の慣行はマスコミの中にも浸透している。川嶋さんの講義を聞いて、このことを再認識した。

 第2に印象に残ったことは、2000~2002年のIT不況下、富士通ベトナムの業績が悪化した時のベトナム人の対応である。工場が立地するドンナイ省委員会委員長(日本の県知事に相当)が、「引くべき時は勇気をもって引くことが戦争でも必要だった」といったベトナム戦争当時の経験に基づいて、川島さんを励ましたというエピソードが講義で紹介された。戦争とビジネスの舞台は異なるが、戦略には共通した点が多々ある。おそらく省委員会委員長は、川嶋さんに「戦友」のような共感を覚えたのであろう。

 川嶋さんの経験は、ベトナム経済発展にとって歴史的な足跡である。その証言は何らかの形で後世に残されるべきものと私は川嶋さんに申し上げている。それについて私にできることは何でもさせていただきたいと思っている。

|

« 流通科学大学・大阪オフィス | トップページ | 外国人を信用するということ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/7888/428382

この記事へのトラックバック一覧です: 富士通・川嶋さんの講義:

« 流通科学大学・大阪オフィス | トップページ | 外国人を信用するということ »